第42話 これはデート?再び




 乃愛には本当に悪いとは思っているが、これは仕方がない。

 とりあえずライムだけでも送っておくか。

 これでよしっと。

 さ、行くか。


「えっと、食べたいものとかある?なかったら行きつけのカフェでパフェでも奢るよ。」


「特にないと思う。強いて言うならその才人君が言ってたパフェは食べたいかも。」


「じゃあ俺の行きつけに行くけど良い?」


「いいですよ。行きたいです!」


 それじゃあ行くか。

 幸いそこまで遠くないしな。


_______



 そこまで遠くない場所にそのカフェはある。

 よく乃愛と行っていたカフェでもある。

 でも、最近は来てなかったからリフォーム?リニューアルか?していてびっくりした。


 取り合えず注文が決まっている俺達はすぐ店員さんを呼んだ。


「ご注文はいかがしましょうか。」


「コーヒー、カフェオレのホット一つずつと、この苺パフェをお願いします。」


「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ〜」

 

 注文が終わってスッキリした。

 でもなんか話しづらい雰囲気になっている。

 というか何も話さないっていうのもあれだな。


 なんでもいいから話さないと。

 えっと話題は…とりあえず相手から聞くか。

 そのほうが良いって言ってたし。


「中野さんって趣味とかあるの?」


 一番無難な質問だと思う。

 本当に無難なのはいわゆるお天気トークだろうが、ある程度仲良くなって友達といっても申し分ないくらいの関係に対してお天気トークはいささか変だろう。


「趣味か~う~ん…」


「あれ?言いたくなかった?それならごめんな。」


「全然!そんなことないよ!でも趣味かあ…あんまり考えたことなかったかも。」


 これはマズイことを聞いたか?

 謝らないと。


「なんかごめん。」


「いいよ!いいよ全然。あ、趣味といえばね!ドラマ見るのが趣味かな。今期のドラマ知ってる?」


 結構近いな。

 趣味のことになると興奮するタイプか?


「sentimental?一番流行りなのはこれだよね。違った?」


 sentimentalー今流行りのヒューマンドラマである。

 人間のドロドロした社会の現状が赤裸々に表現されている。

 感情表現も事実を元に作られているため、妙に現実味を帯びている。

 ノンフィクションなのかと見間違えるぐらいらしい。

 あまりにリアルなので今SNS界隈を騒がせているドラマだ。

 生憎俺は見ていないけどな。


「それはドラマ全体の流行りでしょ!私が好きなのは恋愛ドラマだよ。わかる?」


「あ~確か乃愛が言ってたような…えっとスから始まるやつだ。なんだっけ?」


「スケッチブックはまだ白ばかり。通称スケ白だけど。」


 この略称からスケルトンと白骨を連想してしまった俺はおかしいのだろうか。

 だって某ゲームでもスケといえば、スケルトンだし、そうきたら骨だろ?

 …どうでもいいか。

 スケッチブックってことは…芸大が舞台だったりするのか?

 よくわからないな。

 話題について行けなさそうだ。

 本当に申し訳ないな。


「で?どういうドラマなのか教えてくれるか?本当に申し訳ないけど見てないんだ。」


「それは名前がわからない時点で知ってますよ。まあ簡単に言ったら、芸大を卒業したばかりの女性とある大学生のラブストーリーですね。」


 なんかキャッチコピーみたいな説明だな。

 まあ別に気にすることでもないか。


「なんか広告みたいだったな。」


「ごめんね。わかりにくかった?」


「いや大丈夫。で、そのドラマがどうしたの?」


「昨日最終回迎えたんですけど、その相手の言葉がまた最高で…」


「うん。分かった。その言葉をよく分からないから、教えてくれないか?」


「駄目です!ネタバレは嫌なので!動画放映サイトで見てください!」


「それじゃあ俺が今の君の話についていけないんだけど?」


「それもそうだけど、それでも!」


 どうやらこの子のドラマ愛はすごいらしい。

 そこまで好きになるなんて何かあったのかな。

 まああまり踏み込むのもよろしくないしいっか。


「お待たせいたしました。こちらコーヒーと、カフェオレのホット、苺パフェでございます。ごゆっくりどうぞ。」


「ありがとうございます。」


「あ、えっとありがとうございます?」


 何で疑問形なんだよ。


 それはともかくドラマの話をしている間に、飲み物とパフェが届いた。

 相変わらずここのパフェは爆速で届くらしい。

 しかも味はちゃんと美味しいし、見た目もかなりいいほうだ。

 どうやって作ってるのだろう。

 全く気になる限りである。


「わ〜!美味しそう!本当に食べて良いの?」


 まるで子どものように目を光らせながらこちらを見てくる。

 そこまで楽しみにしてたということに驚愕しつつ、微笑ましいなと思いながらコーヒーを飲む。

 うん苦い。

 いつも思うけどなんか頼んじゃうんだよなコーヒーって。

 なんかそれが普通な感じするし。


「才人君も食べる?」


 美味しいそうに口をもぐもぐさせていた中野さんがそう聞いてきた。

 はあ。それって間接なんとかってやつだろ。


「やめとく。それって間接なんとかだろ?やめといたほうがいい。」


「え!?あっうん…その、ごめん…」


「いいよ別に。さ、食べて食べて。俺が作ったわけじゃないけどさ。」


______________



 そうして少し気まずい雰囲気になりながらもカフェでのお礼が終わった。


「中野さん大丈夫?少し暗くなったけど一人で帰れるか?」


「うん。大丈夫。今日はありがとね。」


「全然、ただのお返しだから。じゃあねまた明日。」


「はい!また明日!」


 そう言って俺達は別れた。

 これはまた乃愛に帰りが遅くなった理由を問いただされるやつだ。

 クラスの女子と一緒にいたなんて言ったらどういわれるだろうか?今からでも胃が痛くなる。


 あれ?ってこれ考え方変えたらデートじゃんか。

 マジか。

 知らないうちにデートしてたのこれで2回目じゃん。

 中野さんは嫌じゃなかったかな?

 楽しんでくれてたらいいけど。

 まあ、明日にでも聞くか。



 ーその晩、俺は乃愛に1日中無視されるのだった。


 辛い、悲しい…

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