第38話 いらない副産物
俺は今日家族で買い物に来ている。
普通こういうときって大体はモールだろうが、俺たちは少し遠めの商店街に来ている。
何でと聞かれても分からない。
昔から買い物を家族でするとなったら商店街なのだ。
ただそうとしか言えない。
正直、今でも疑問に残っている。
まあ、そういう家族は少なからずいるし、決して少なくはない。
でも、普通もっと洋服とか見れるところに行くと思う。
それって俺だけの感覚だろうか。
そして今は母さんの服選びを絶賛待機中である。
少し古い洋服を取り扱ってる店なので乃愛は興味がないらしく、珍しく俺の隣で一緒にいてくれる。
「お兄ちゃん!あっちの店で洋服見てきていい?」
「いいぞー俺も付いてくけどいいか?」
「うん!大歓迎だよ!」
え?マジで今日の乃愛可愛い。
いつもが百パーセント中一億パーセントなら、今日の乃愛は一京パーセントくらい可愛い。
素直って最高だな!
「お兄ちゃんキモイ。ジロジロ見てくんな。」
やっぱり乃愛はこうだよな…
少しテンションが下がる。
「ごめんねお兄ちゃんきもかったよね。あまり見ないから許して!」
「ハイハイ、分かったから。おにいちゃんその代わりにちゃんと服選び手伝ってね。」
「ああ!もちろん!」
一生懸命似合いそうなものを探しつくそう。
幸い、俺は乃愛のパーソナルカラーを熟知してるし、顔とかに似合う洋服も頭に入れてある。
脳内で試着して似合うものを厳選して全てをのあのところに持っていくぞ~!
これって普通のことだよな!
__________________________
「え~っと…この量の洋服は……何?」
「お兄ちゃんが乃愛に似合う服を厳選して持ってきた!お兄ちゃん視点も捨てて客観的に判断したから間違いないはずだ!」
「お兄ちゃん…この量はさすがに多すぎ…常識の量くらいわかるでしょ…」
乃愛が引いてる。よく考えたらこんな量の服を持ってくることが異常だよな。
流石にこんな事されたら覚めるに違いない。
乃愛に申し訳ないことをしてしまった…
「ごめんな。乃愛のためだと思ったらつい…」
「うわっキモ。………お兄ちゃん恥ずかしいからやめてよ…」
「そうだよな。キモイよな…服、戻してくる。」
お兄ちゃんやらかしちゃった。
乃愛機嫌悪くなっただろうな…
俺、サイテーじゃん…
「着る!着るから!大丈夫!ありがと。お兄ちゃん。」
「気を遣ってくれるのか?乃愛…優しい…」
「そっ!この量はさすがに多いからもっと選んでから試着するね。」
その後、残り十着に厳選した乃愛は結局選びきれず、その分のお金は乃愛と俺が出し合った。
とはいえ、電子マネーのポイントしか使ってないからそこまで使った感はないけど。
この感覚はさすがにおかしいのだろうか。
俺は乃愛のためなら普通のことだと思うのだが。
「あ、お兄ちゃん!これ美味しいって評判のやつ!食べていい?」
乃愛が頼んできた。珍しい。
ここはお兄ちゃんを見せて挽回するチャンス!
乃愛の機嫌を回復するにはいい機会だ。
「いいぞ。いいに決まってる。むしろ大歓迎だ!」
あ、このプリンこんな高いのか…でも乃愛のためだし、いっか。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
今日は妙に乃愛がお兄ちゃんにデレてくれている。
なんて最高な日なんだろう!
それからしばらく待っていると乃愛が話しかけてきた。
「ちょっとお兄ちゃん。あっちに友達いたから話に行ってもいい?」
「いいぞ~母さんに怒られる前には戻って来いよ~」
少し悲しいが乃愛のためだ。
暇になったな。母さんもまだ服選んでるし。
そこのベンチにでも座ってよっかな。
「えっと、、、君、天川君だっけ?うちの柚歌が昨日君の家でお世話になったそうじゃないか。一体どういうことか説明してくれるかな。俺の妹を家に上げるなんて全く何を考えてるんだか。」
会長!?しかも喧嘩口調!?
え?なんで?ってさっき言ってたな。
確かに俺だって乃愛が会長の家に遊びに行ったら同じ態度になるだろう。
「…それは申し訳ないです。本当に申し訳ないです。でも俺が呼んだわけじゃないですから、呼んだのはペ…宇川ですから。そんなこと言われても困るんですけど…」
「そんなことは関係ない!重要なのは柚歌が君の家に行ったという紛れもない事実だよ。どうしてくれるんだい?俺の柚歌が穢されてしまったじゃないか。」
これは言い訳しても無駄そうだ。
同じタイプだからこそ何故か分かる。
言い訳も、謝罪も受け取る気はないだろう。
でもこのまま俺も食い下がるわけにはいかない。
大事な大事な乃愛との時間を潰されるのはごめんだ。
「まずあの場には俺以外にもたくさん男子や女子がいましたし、それに俺には妹の乃愛がいるんです。そんなことするはずないです!」
「言い訳は聞きたくないし、もちろん謝罪も受け取る気はないよ?俺がほしいのは君が柚歌を穢した罪をちゃんと知って、償ってもらうことさ。」
うん。やっぱりそうだ。
償う内容によって両親のもとに逃げるかどうか決めよう。
「その…償うとは?参考までに聞いても?」
「それは…もちろん君の妹と君が話すことの一週間禁止だよ。」
突然の死刑発言に俺の感情は爆発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます