第18話 紙一重
昨日の一件のせいでどうにも気が晴れない。
こういうときは外でリフレッシュするのが一番かもしれない。
起きた時間が遅いからそこまで遠くはいけないけど、それなら適当にランニングくらいがいいかもしれない。
いつも通り前髪を縛って、ジャージに着替える。
「乃愛~なんか買ってきて欲しいものあるか?もしあるなら俺買ってくるからさ~」
「特にな~い」
「了解。それじゃあ行ってきます。」
相変わらず素っ気ないな~昨日のは偶然か。偶然だろうな…はぁ。
ダメだ、ダメだ。余計なことを考えるな。
えっと他のこと他のこと…ランニングどこ通ろっかな~
えっと今日のルートはいつもの公園じゃなくて、どうせなら行ったことない方向にしよっと。
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結構遠くまで来ちゃったな。
でもまだ時間はあるし…いっか。
あれ?あの人大変そうだな。
すっごい荷物、家具みたいな大きさだけど引っ越しか何かか?
どっちにしろ手伝うべきだろう。
だってそれが一般常識でしょ?
「あの~すみません。荷物持つの手伝いましょうか?もし余計なことだったらすみません。」
「すみません。助かります。」
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「それにしてもこんな量の荷物どうしたんですか?すみません気になっちゃいまして…」
「家族と家具を新調しに買い物に来てたんですけど、ちょっと妻を怒らせてしまいまして…」
それならこの状況も仕方がない気もするが…
間違いなくこの人の奥さんは厳しいだろうな。
お気の毒様である。
それにしてもやっぱりあれは家具だったのか。そりゃあでかいわけだ。
「あ~それは災難でしたね。今度からは奥さん怒らせないようにしませんとね。」
「ですね。次からは気を付けます。ハハハ。」
「確かあの曲がり角を曲がった先でしたよね?」
「はい。それであってます。本当にありがとうございました。今度何かお礼でも…」
「俺の好きでやってるんで気にしないでください。それじゃあ俺はここで。失礼させていただきます。」
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ふぅ。疲れた。女性って怖いな。
俺も気をつけないとな。
まあ気をつけるような仲にまでなっている女子なんていないけどさ。
強いて言うなら乃愛くらいかな。
でも乃愛は妹だし、それとはまた違うか。
もう流石に帰ったほうがいいか。
あ、スマホ忘れた。
どうしよう。俺方向音痴なのに…
結構この状況マズくね?
取り合えず電話を…あ、ないんだった。
とにかく近くの店にでも行って聞くか。
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どうやらかなり遠くまで来てしまっていたらしい。
ここから帰るのは骨が折れるな。
まぁ仕方ないか。
しばらく歩いた。
まだつかないのか。
15キロって意外と長いな…
ってか今何時だ?
俺今日料理当番何だけどな…
電子マネーで払えばいいと思ってたからお金も持ってきてないし。
お金さえあれば電車乗って帰れたのに…
今度から気をつけるか。
今そんなこと悔やんでもどうにもならないしな…
あ〜あ、そう言ってもやっぱり無理だな…
「え?嘘!?ハマって取れない…どうしよう…」
ん?今日はやけに多いな。
困っている人多すぎるだろ…
このままの調子だと俺の体だけじゃ足りなくなりそうだ。
カンカン_______
電車の警告音が鳴り響く。
ん?これもしかして結構マズい?
ていうかあそこにいるやつ誰だよ!警告音聞こえてるだろ!
あ〜全く!クソっ。
咄嗟に俺は駆け出した。
間一髪だった。
「キャッ!」
「うっわ痛え。膝擦りむいてんじゃん。近くの公園で取り合えず傷口を洗わないと…」
「えっ?あのときの…」
この子今何か言ったか?
それより早く足の消毒しないと…
いや〜、これどう説明するかな〜
これ一応事故だろ?自転車グシャグシャだし。
だから多分警察来るだろ?ま〜た面倒事だ。
ひったくり事件以来だよな、警察に行くの。
俺、別に加害者じゃないのに。
どうして俺ばっかり…
文句ばっかり言っても仕方ないか。
取り合えず消毒消毒っと。
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事故の現場に戻ってきた俺は当然のように、警察から事情聴取を受けた。
別に断っても良かったんだけど、あの子がそれだと可哀そうだからな。
まあ初対面だけど。
「情報提供ありがとうございました。こちらからは以上です。保護者の方に連絡を取れるものとかはありますか?」
「すいません。スマホ忘れて来てしまっているのでないです…妹の電話番号なら知ってますけど…」
あ〜面倒くさいな。
流石に今回は怒られないだろうけど…
いや踏切に突っ込んだんだ。
怒られる可能性もあるよな…
どっちにしろ最悪だ。
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「あ、あの〜隣いいですか?」
いやなんで隣!?
他に座れるところたくさんあるでしょ!
ってさっき助けた子か…
どこかで見たことあるような…
あっ。中野さんだ。
流石にあっちもわかってるよな。
これ噂になるよな…
いやならないか。俺普通のことしただけだしな。
「あっあの〜、以前痴漢から助けてくれた方ですよね?あのときはありがとうございました!今日も助けていただいて…もう感謝してもしきれません!」
あ〜そんな事もあったけ?
よく覚えてない。
「そんなことありました?よく分かりまけんけどまあいいです。取り合えずあなたが無事で安心しました。それと自転車グシャグシャにしてしまって…本当にすみません。もうちょっと気づくのが早ければ自転車も壊れずに済んだでしょうし…」
「そんな!助けてもらっただけで十分です!」
中野さんってこんなテンション高かったけ?
まあいいや。
「それならよかった。」
「あの!連絡先教えてもらえませんか?」
「ん…スマホ忘れて来ちゃったからね…ごめんね?」
「そ、そうですか…あの私、中野 望友って言います!同じ学校ですよね!あの〜時間があるときに来てくれたら嬉しいです!」
もしかして俺が隣の席の天川 才人だって気づいてない?
そっか。まあいいや。
「知ってますよ。隣の席ですもんね。」
「えっ?」
きょとんとした声が聞こえた。
「隣の席の天川ですよ?もしかしてわかりませんでし…」
「え~っ!!」
その瞬間、中野さんの驚愕に満ちた声が辺りに響いた。
そこまで驚くことはないのに…
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