第17話 修羅場




 非常にマズイ状況になった。

 これどうしたらいいの?

 まず、何で二人とも睨み合ってるの?

 さっきから本当に気まずいんですけど。

 早くやめてくれないかなー

 無理そうか。かくなる上は。


「ちょっと俺トイレ行ってくるわ」


 ここは一先ず退散だ。

 女子の問題は女子たちに解決してもらうのが一番だしな。

 決して逃げたいからではない。


_________________________



「稲城さんと言いましたね?もしかしてお兄ちゃんのこと好きなんですか?」


「…そうだよ。好きだよ。」


「そうですか。それなら諦めたほうがいいですよ。うちのおにいちゃん鈍感なので。」


「知ってるよ?でも諦めないから。」


「あ~もう。はっきりと言わせてもらいますが、お兄ちゃんと関わらないで下さい!」


 ヘッ、ヘッ、ヘッ、ヘックシュン!


 あれ?風邪だろうか?

 おかしいな別に体の不調はないはずだが。まあいっか。


 閑話休題。


「え?何で?そんなのあたしの自由でしょ?いくら妹ちゃんとは言え流石にその申し出は看過できないよ。」


「それはこちらも同じですよ?諦めてもらいますから。」


「何でそんなに必至なの?もしかして妹ちゃんってブラコン?というかブラコンだよね?あたしよりもそっちのほうが才人君に迷惑かけてると思うけど。」


「はいブラコンですよ?だから何ですか?それ今関係ありませんよね?話をそらさないでください。」


「そっちのほうが話しそらしてるでしょ?あたしの邪魔をしないで!」


「稲城さん。あなたのほうが邪魔ですよ?私とお兄ちゃんは昔からの仲良しなんです!それを邪魔するあなたのほうが…」


「それを言うなら、妹ちゃんだってお兄さんの才人君の恋愛を邪魔してるからね?わかってって言ってるの!?」


____10分後


「いい加減にして!お兄ちゃんは私のなの!」


「でもそれとこれとは別でしょ?」


「全然別じゃないもん!お兄ちゃんだってきっと私の方がいいと思うし!」


「こんなに面倒くさい妹だよね?あたしだったら嫌だな~」


「私だってこんな猫かぶり女嫌だよ!」


「それは妹ちゃんもだよね?」


 ふう。スッキリした。

 おっと失礼。


 それにしても何で言い合いしてんの?

 う~ん分からない。

 考えるだけ無駄か。

 でも入りたくないな~

 この空気感で普通に入れるやつの方が珍しいか。

 なんかよく分からないけど俺が聞いちゃいけない話な気がする。

 俺の勘って結構当たるからまず間違いないだろうな…

 でも流石に15分以上トイレは怪しいからな。

 行くしかないか。

 とりあえず、ここから声でもかけてみよう。


「お~いっ!取り込み中か~?もう俺そっち行って大丈夫そうか?」


 はあ、はあ。久しぶりの大声だ。疲れた。


「え!?お兄ちゃん!?…本当に何でもないから!大丈夫!大丈夫だよ!」


「さっ才人君!?え?いやこれはその…そう!世間話。世間話だから!いいよ来ちゃって来ちゃって~!全然…問題ないよ!?」


 なんで二人ともテンパってるんだ?

 これ絶対何かあっただろ。


「いや誤魔化すの下手すぎ。二人とも何があったか話してくれる?」


「それはできない…」


「ごめんね、さすがのあたしも言えないよ。」


 そうか。でもやっぱりこのまま険悪な雰囲気にするのはよくない。

 これは無理にでも話してもらうしか方法がないな。

 ここで打ち明けなくて二人が仲良くできるならいい。

 でも雰囲気的にそれは無理そうだし、致し方無い。


「はあ。俺だって無理に聞きたいわけじゃないんだ。

 むしろ面倒なことに首はなるべく突っ込みたくはない。それでもあそこまで大声で言い合ってたら流石に解決しないマズイだろ?俺が言わなくても解決できるならいいが、それは無理そうだろ?俺は乃愛のことも、稲城さんのことも心配して言ってるんだ。このまま二人に険悪なままでいてほしくはないんだ。これは二人のためなんだ。だからここで白状してもらうぞ。」


 何いきなり笑い始めてるんだ?

 稲城はそういうところあるのは知ってるが、乃愛は違うよね?

 え?なんか変なこと言った?


「…元はといえばお兄ちゃんが悪いんだよ?」


「…そうだね。才人君がぜーんぶ悪い。本当に才人君のせいだもんね?」


「うん。そうだよ?」


「「ね~!」」


 お前ら仲良しかよ。

 覚悟を決めて問いただした意味よ。

 俺めっちゃ恥ずかしい奴じゃん。

 

「そ、そうか二人が仲良さそうでよかったよ。俺から言うことはもうないな。」


「…お兄ちゃん?ただで済むと思った?残念。私すっごく言いたいこと溜まってるんだよね~ね??」


「あたしも妹ちゃんと同じだよっ!だからしようね?」


 あ、何故か悪寒が…

 よし、もう解決してそうだから逃げるか!


「あ~、俺もう帰るからぁ~じゃあまたな二人で飯でも食っとけよ~」


 逃げなければ。早く逃げなければ。

 あの二人顔は笑っているのに目が全然笑ってなかったぞ!

 こんなの母さんの説教と何も状況が変わらないじゃないか。


「そっかぁじゃあファミレスでも寄ってそこで話しよっか?あたし聞きたいこともたくさんあるんだ~ だから一緒にいてもらわなきゃ困るんだよね~」


「同意見だよ。お兄ちゃんには制裁が必要だね。」


「乃愛ぁ~、い稲城さ~ん謝りますからどうかご勘弁を…」


「「問答無用!」」


 このあと店員さんに怒られるくらいまで長い間、俺は二人から見覚えのないことを言われ続けるのだった。


 店員さん、人を憐れむような態度をとるぐらいなら早く追い出してくれればよかったのに…

 おかげで俺のメンタルはボロボロだ。

 …もう帰ったら寝よう。

 

__________________________


 次からはイケメン?な才人君が戻ってきます!お楽しみに!

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