第13話 これはデート?
乃愛の友人さんが乃愛の欲しいものを教えてくれたその二日後。
何故か俺はその友人さんをモールの前で待っていた。
こうなった理由は昨日に遡る…
__________________________
「もし良かったら私と一緒に選びに行きませんか?」
最初は何言ってるのか分からなかった。
突然乃愛のいないところに連れてこられたと思ったらこれだ。
普通の人なら意味が分からないだろう。
つまり俺も理解できなかった。
「ほら、プレゼントがヘアアイロンだけでも味気ないですしね?」
本当にそうだろうか?
普通に高いからそれだけで十分だと思う。
いや、愛しい妹のためのプレゼントとしてはまだ足りないのか…?
分からない。
しかしヘアアイロン以外に買うとなると一体なんだろうか。
取り合えず乃愛は女子だ。
好みは同じ女子に聞くのがマストだろう。
しかも乃愛が家に呼ぶほどの仲の良さときた。
これ以上に適任はいないのかもしれない。
「…えっと、それならよろしく頼めるか?」
「はい!もちろんです!プレゼント選びなら任せて下さい。絶対に喜ぶものを用意してみせましょう。」
どこからそんな自信が来るのだろうか。
だっていくら仲が良かったとしても、実際には他人だろ?
普通に考えたら少しは迷ったり、悩んだりするものだろう。
どうしてあんなにはっきりと即答できるのだろうか。
…きっと芯が強い子なんだな。
せめて俺も乃愛の前では見習わないとな。
「よろしくな。」
「うん!よろしくお願いします!えっと…取り合えずライム交換しましょっか。」
「そうだな。」
そうして連絡先を交換した俺とその友人さんはリビングに戻る。
返事としてはあまりにぶっきらぼうだったかもしれない。
つまり普通の返事ができなかったということだ。
恥ずかしい。
しかし当の彼女はあまり気にしてないようだ。
「二人して何していたの?もしかして…何か良からぬことを…お兄ちゃんサイテー。」
乃愛。俺は乃愛の思っているようなことは何もしてないんだ。信じてくれ。
「そんなことしてないから!聞いてくれ乃愛!」
「これは私は帰ったほうが良さそう?そうみたいですね。乃愛ちゃん今日はありがとう。また呼んでくださいね〜」
「クソ兄貴なんて知らない…」
「乃愛ぁ〜お願いだからお兄ちゃんの話を聞いてくれ〜」
乃愛に変な勘違いをさせて、怒らせてしまった。
とっても辛かった。
でもその後が一番大変だった。
だって乃愛がお兄ちゃんの話を全然聞こうとしてくれなかったし。
それにすぐお兄ちゃんから逃げようとしてくる。
本当に大変だった。
結局、乃愛が機嫌を直してくれたのは夜10時のことだった。
それでも乃愛の機嫌が戻ってくれてお兄ちゃんは本当に嬉しかった。
それにしても明後日か。
休みの日におしゃれして出かけるのか…
乃愛が変に勘違いしないといいが。
まあ乃愛のためのお出かけだし、誕生日に明かしちゃえば何とかなるだろ。
__________________________
そして今に至る。
それにしてもヤケに緊張するな。
複数で遊ぶときにその中に女子がいることはよくあったが、女子と二人きりで出かけるのはこれが初めてだ。
もしかしてこれはデートというやつではないだろうか?
そう思うと妙に落ち着かなくなってきた。
…いやそんなことを考えてはダメだ。
第一に普通じゃない。付き合ってない男女がデートなんてナンセンスだ。(本人視点)
俺のことを疑っている乃愛にさらに誤解をさせてしまうかもしれない。
これは断じてデートではない。
俺は自分の邪念を捨て去った。
それにしても他人と約束したというのに友人さんは遅い。
普通に考えたらどんなに遅くても、十五分前にはついていて然るべきだろう。
もし、用事や交通渋滞なんかで遅れるのだとしても待ち合わせの相手に事前に連絡しておくべきだろう。
「お待たせ~待ちました?」
やっと乃愛の友人がきた。
遅い。遅すぎる。なぜ時間ぴったりに来るのだろうか。しかも今日は休日だ。
朝から集まるってことは用事もないはずだ。
本当に常識というものをこの子は知っているのだろうか。
ちゃんと注意してあげようと思ったが、この子は俺の可愛い妹、乃愛の友達だったことを思い出し、すぐにその考えを改めた。
もし俺が注意したことが原因で、この子と乃愛の関係が悪くなってしまったら乃愛に合わせる顔がないと思ったからだ。
ここは定番の挨拶でもすればいいか。
「…全然待ってないよ。丁度今来たところだから。」
「そっかぁ、それならよかったです。さ、行きましょ!」
俺としては全然良くないのだが…
まあいいか。とにかく今は愛しの乃愛の誕生日プレゼントを選ぶのが先決だ。
「ああ。それじゃあ行こっか。今日は妹の誕生日プレゼントを選ぶのに手伝ってくれてありがとな。本当に助かる。」
「全然いいですよ。で~どこから見ますか?」
「とりあえず、ヘアアイロン見に行くのでいい?先にプレゼントを選んどきたいから。ダメか?」
「全然いいですよ!それならヘアアイロン見に行った後は先に化粧品とかお菓子とか回るのがいいかもですね。」
「確かにそれが良さそうだな。じゃあそうしよっか。」
そういえばこの子の名前なんだっけ?
ライムに『MIZUHO』ってあるから下の名前はみずほだろうけど、いきなり下の名前はおかしい。
とりあえず、後で聞いてみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます