第12話 思わぬ収穫
天然?な中野さんのせいで酷い目にあった今日。
またイレギュラーが起きる気配がする。
流石にそれは無いか。
だって俺普通(本人目線)だもんね。
そんな面倒事ばっかりに遭遇するなんてどんな確率だよ。
4月が特別おかしかっただけだ。
もう流石にあり得ない。
「お兄ちゃんおかえり。今日友達来るから外で遅くまで遊びに行くか自分の部屋にこもって出てこないかのどっちかにして」
「のあ、流石に酷いよ…お兄ちゃん泣いちゃうよ?」
「うわ〜、キッも。そういうのいいから。どっち、さっさっと答えて」
うっ……のあがっ……いつになく冷たいよ……
お兄ちゃん本当に泣くよ?
……お兄ちゃん泣いちゃうよ?
「うぅ、分かったよ…お兄ちゃん自分の部屋にこもるね?」
「それなら早くこもって。友達来ちゃうじゃん」
悲しい、乃愛は本当に成長したな~〜(泣)
チャイムが鳴った。
どうやらもう来てしまったらしい。
乃愛の友達というのがどんな輩か気になる。
女子なら許せるが、男子だと絶対に許せない。
あと、女子だったとしても性格的な面で本当に心配なのでできればどんな人か知っておきたい。
「ほら、さっさとこもって!クソ兄貴。」
今クソ兄貴って言った。クソ兄貴って……クソ……
俺嫌われた……苦しい。俺……死ぬのかな……
閑話休題。
可愛い天使の乃愛ちゃんに自室に無理やり押し込まれ、しばらく自室で泣いたあと、やはり妹の様子は気になるものだ。
「少しくらいなら、覗いてもいいよな…?」
これは必要なことだ。
決して可愛い妹の普段の様子を知りたいとか、そういう訳では無い。
断じて、だ。
階段を降りて、そっとリビングを覗く。
「それでさ〜~お兄ちゃん毎回毎回私の誕生日になるたびに高価なものばっかり買ってさ。もっと自分のことも気遣えばいいのに……」
「乃愛ちゃんって本当にお兄さんのこと好きなんですね」
「いや!?そ、そんなことないけど!?あんなバカ鈍感兄貴誰が好きなるの……」
はい。バカ兄貴です。
鈍感とか良くわかりませんが、今ので心に大きな傷がつきました。
あ〜お兄ちゃん本当に死んじゃうよ?精神的に。
あ、バカ兄貴だった…病みそう…
「ハイハイ。そういうことにしておきます。それにしても慌てすぎですよ?」
「別に慌ててないし。そ……それより、ほ……ほらき、昨日のドラマみっ見たよね?えっと…あのシーンすごくなかった?」
「誤魔化すの下手すぎですよwでも会ってみたいな〜そんな素敵なお兄さんなんですよね?」
「で、でも、今日はあのシスコンいないから!また今度ね。」
あれ?いますけど。
もしかして俺いない判定?悲し。
妹よ、流石にその扱いはお兄ちゃん号泣しちゃうよ?いいの?
あとシスコン?俺が?馬鹿な。そんなわけないだろう。
昔父さんが言ってたぞ。
兄として妹は心から甘やかしまくって、心配しまくるくらいが普通だって。
だから断じてシスコンではないはずだ。
今の俺こそが究極の普通である。
本当に乃愛はドジっ子だな。
まぁそういうとこも可愛いけれど。
「本当にいないんですか?怪しいですね……お兄さんの部屋行きましょうよ~〜」
マズい。取り合えず乃愛にバレる前に自分の部屋に戻るか。
あっ。
「何で出て来てるの!?クソ兄貴!ほら帰って帰って!」
「えっと……トイレに行こうと思いまして……」
マズい事になった。これ完全に嫌われるやつだ。
これ以上乃愛に嫌われたら俺本当に生きていけないよ…
「もしかしてあなたが噂のお兄さん?って前の…」
「前の?え?…そうだよ乃愛の兄の才人です。いつも妹がお世話になってます。君は?」
「え?本当に覚えてないんですか!?私ですよ!私!」
「え?あ〜どこかでいたような?」
え?会ったことあったけ?新手のオレオレ詐欺?
「クソ兄貴も瑞穂も二人して私を無視して…」
「え?何ですか〜もしかして嫉妬して?」
「ないから!全然してないから!」
そっか。少しは嫉妬して欲しかったな…お兄ちゃん残念。
「それでお兄さん。忘れているようなので言いますが、昨日荷物取り返してくださった方ですよね?まさか乃愛ちゃんのお兄さんだったなんて…なんか運命感じちゃいますね♪」
乃愛。こっちを睨まないでくれ。大丈夫だから。
流石に妹の友達に手を出したりはしないから。
だって俺って常識人でしょ?(本人目線)
「クソ兄貴っ」
え?ちょっと?話だけでも聞いてよ。
俺は悪くないの。だから聞いて?ね?
…泣きそう。
俺は足早にその場を立ち去ろうとする妹を必死で止めた。
「待って。お兄ちゃんはのあが大好きだから。のあ以上に可愛くないと眼中じゃないから。あとのあ以上なんてこの世に存在しないから。ね?」
「…そ。クソ兄貴だもんね。仕方ないか。そんなんじゃ一生彼女できないよw」
そんなことは…あるかもしれない。
だって本当に乃愛が可愛すぎるんだもの。
「お兄さん!私とも仲良くしてくださいね?」
「わ、分かった。」
「お兄さんお兄さん。もしかして乃愛ちゃんの誕生日プレゼントで迷ってたりします?それならヘアアイロンあげると多分喜びますよ。欲しがってたので。」
これは思はぬ収穫である。
それにしても乃愛のお友達はどうして俺が誕生日プレゼントで迷っていることを知っていたのだろうか。
それはどうでもいいか。
すごい偶然もあるものだなあ。
これって全然普通じゃなくね?
…いや普通だ。普通に違いない。
だって俺普通だもん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます