第11話 ありふれた朝




 先週の一件を思い出しため息を吐く。

 俺はどうしてこの学校に来てからこうもハプニングに見舞われるのかと。

 もしかしたら俺は普通ではないのかも……いや、それはないか。

 

 とにかく何かに巻き込まれることが実際に多くなっていることは間違いない。

 本当にこの街は治安が悪いな……


「昨日ひったくり事件があったらしいな。天川~~お前知ってるか?その功労者がこの学校にいるらしいんだよ」


 全く耳が痛い話である。こいつ本当に俺のことイジメたいのだろうか。

 本人にその気はないのは知っているが、それでもそう思えて仕方がない。


「そんな定番みたいな展開起こらないって。ただでさえ転校生が美少女とかいうとんでもなことが起きてるんだよ?そんなおかしなことあり得ないだろ。堂川お前夢見すぎだ。ラノベとアニメ見過ぎで頭おかしくなったんじゃないか?」


 実際に起こっているには起こっているのだが……

 別に俺が功労者ってわけでもないしな(本人目線)。


「どんな奴なんだろうな!俺気になる!もしかして俺だったりして……?」


「馬鹿なこと言ってないでもうちょっと意味ある話しようぜ?流石にお前の夢物語を二回も聞くのはちょっと……」


「いいじゃないか!別に夢見たってよ~お前ってホントに何から何までまじめだよな~~少しくらいのってくれたっていいじゃないか!」


「嫌だ。俺がもしのったらお前絶対に調子乗るじゃんか。嫌な予感しかしないことをわざわざすると思うか?いや絶対にしないね。少なくともそんな誰から見ても非合理的なことに付き合うのは勘弁だ。」


「そこまで言わなくてもいいじゃないか!俺だって、俺だってなあ、理想の青春を送りたいんだよ!!」


「それ一度聞いたから。何回も言わなくていいから。」


 本当にしつこいやつである。


「もしかしたら僕かもよ?」


「宇川。ややこしくなるから入ってくんなよ。お前まで話に入ってくると余計にカオスで収集がつかなくなるだろ?ほら、周りの奴らまで次々とふざけだしたぞ?どうしてくれるんですかー?ウガペディア先生?」


 本当にこいつが絡んでくると余計に話がこじれるからやめてほしい。

 特にこいつだけ絡んでくるならともかく、ほかのクラスメイトも一斉に絡んでくる。

 俺は別に耳が複数あるわけでもなければ聖徳太子でもない。

 そんなうるさい話をいちいち聞けるかって感じである。


 しかし一人一人話を終わらせなければこいつらは何故か話をやめない。

 宇川がふざけに入ったときはいつもこうなる。

 だから俺はいつも聞き役に徹していなくてはならない。

 本当に理不尽極まりない。

 これは絶対に普通じゃない。一種のイジメだ。


 ここで爆発して、論破でもしてやろうと思ってしまった。

 すぐに理性がそれは普通じゃなくて、異常だよという風に警鐘を鳴らしてくれたので、そうすることは結局なかったが、このまま宇川もといウガペディアの絡みが続いてはきっと耐えられなくなるだろう。


 いっそのことウガペディアよりも酷いあだ名を考えるか……

 となるとウガップとかか?

 ……ダメだダメだ。

 人の悪口を考えるのはよくない。

 それに普通の人(本人目線)ならばきっとそんな陰湿なことはしない。

 落ち着け俺。ふ~~落ち着いた……


 そうだ。

 こういうときは無視すればいいんだ。

 幸い俺の隣の席には転校初日でクラスの、いや学園の憧れになった女子がいる。

 あまりこういうのは良くないとは知っているが仕方ない。

 彼女が来たらこいつらを押し付けよう。

 

「そういえばお前中野さんと隣の席だろ?なんかあったりした?」


「稲城さんとはあったな。お前らも知ってるだろ?でも中野さんは言葉すら交わしてないな。そういうお前は?」


「昨日おはようって言ってもらったぜ!これ絶対に脈あるよな?な?」


「ない。うっさいから自分の席にもどれ、堂川。」


「それなら僕のほうが可能性あるかもね、なぜかって?落ちた消しゴム拾ってもらったんだから。」


 あ……こいつら頭大丈夫か?

 ふざけてるので合ってるんだよね?そうだよね?

 これがマジで言ってるんだったら相当頭のおかしい奴らだぞ?

 あ〜~疲れた。


 噂をすれば、だな。


「みなさんおはようございます。」


「うおー!天使降臨!」


 堂川。お前言ってること一番おかしいし、一番テンション高いからやめてくれ。


「今日も可愛い。まるで僕の飼ってるトイプードルのようだ。」


 ウガペディアさんや分からない例えはただの騒音だよ?分かってる?

 ……もし言っても届かないんだろうな。

 他の女子たちの顔見ろよ。

 ゴミを見るような目をしてるぞ。

 至極真っ当で普通なモブの俺(本人目線)を巻き込まないでくれ。


「天川君も、おはようございます。朝から大変だね。」


 本当に大変だよ。

 てか……こいつ今俺中野さんに話しかけられた?

 ってことは……やっぱりか

 クラス中の男子のギラついた目が俺に対して一斉に向いた。

 …クソっ。本当に面倒だ。

 この鬱陶しい男子どもが俺にまたうざ絡みしてくるに違いない。

 本当に中野さん。空気読んでほしかったな…

 故意ではないんだろうけどさ。

 その後の俺の苦労くらい……

 

 ……あ〜~うるさい 始まった。


 このあと、俺は朝のHRの直前まで男子たちの文句に突き合わされた。


 つい中野さんを睨んでしまったことは秘密だ。

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