第10話 事件の一幕
稲城さんの一件でクラスの連中と一悶着あったものの、無事に誤解は解けて平穏な暮らしを取り戻した。
そんな俺は今日は珍しく俺は着飾って外に買い物をしに来ている。
それもそうだろう。
だって俺の可愛い最強の天使こと、乃愛の誕生日まであと五日しかないからだ。
よって俺は乃愛のための誕生日プレゼントを探す必要がある。
とは言え、俺は男子、可愛い乃愛ちゃんは女子である。
つまりどういうのをあげたらいいのかが絶望的に分からないのである。
事実、過去3年間にあげたプレゼントの全てに文句を言われている。
今年こそは乃愛を喜ばせるためにどうにかしなくてはならない。
しかし来たはいいものの、そんな乃愛が喜びそうなものを選べるような自信なんてあるわけがない。
正直言って、俺には無理だろう。
どうしようと悩んでいる時間がもったいないと思った俺はとりあえず、見てみれるだけの全ての店を回ることにした。
まずは無難に小物とかか?
でもそれは2年くらい前に欲しそうなものとか使いそうなものとか大体買ったからな……
一応見てみるか。
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特に良さそうと思えるようなものはなかった。
次だな。
えっと……次は化粧品かな?
俺はあんまり乃愛の使っている化粧品とか分からないけどもしかしたらいいのがあるかもしれない。
とにかく見てみるのみだ。
そうと決まればすぐに行こう。
ここでウジウジしていると本当に行きたくなくなりそうだ。
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う~ん……ヤバイ。
さっぱり分からない。
やっぱり乃愛の使っているやつ聞いてから買い物に来たほうがよかったのかもしれない。
今更後悔しても遅い。
それなら次だ次。
やっぱり甘いものが無難かな?
誕生日プレゼントとしては少し味気ない気もするが……
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とりあえず高めのチョコレートでも買っておくか。
ネットで調べたらありっぽいし。
それなりに良いのがあったらそれと一緒に渡せばいいか。
あ~あ、せっかくの誕生日プレゼントをこんな適当に選んでいいものなのだろうか。
う~~ん。やっぱり他のものも買ったほうが……
その時、急に周りが騒がしくなった。
えっと、そこ通りたいんですけど……
その時、すごい形相をした男性がこちらの方に走ってくるのが見えた。
後ろから誰かがその男性を追いかけている。
凄く困った顔をしていた。どうしたのだろうか。
「すみません。これどんな状況か知ってますか?」
突然意味のわからない状況に遭遇した俺は周りに聞かずにはいられなかった。
そこにいた人には迷惑だったかもしれない。
しかし緊急事態に情報を収集するのは大事というか、一般常識である。
それにこの場の緊急事態はネットにはのっていない。
それならばその場にいた人に聞くのが一番手っ取り早い。
「えっと、何かひったくりがあったみたいで……」
……ここの周辺って本当の本当に治安が悪いな。
前だって、痴漢に不法投棄だろ。
これじゃあ俺が巻き込まれ体質みたいじゃないか。
俺はあくまで普通なんだ。
某探偵マンガ・アニメの主人公みたいに事件に遭遇したりするはずがない。
一般に俺みたいな普通の権化がこんな事件に何回も巻き込まれる確率なんて、おそらく宝くじで一億円が当たる位の、いやもっと低いに違いない(本人目線)。
だって俺は普通だし。
「そこをどけっ!」
ひったくり犯はひったくりするくらい頭が悪いからやっぱり語彙力もないのだろうか。
今はそんなことを考えている暇もないか。
とりあえず非常ベルを鳴らしてっと。
後は俺も止めに行くか。
特にほかにやることもないし。
これって普通(本人目線)のことだろ?
「おまっ、離せ!!」
「うわっ……力強っ。これ……抑えるの……大分キツイな……せめて……荷物だけでも、っと」
男性のほうは逃がしてしまった。無念である。やはり俺は凡人なのだ。
でも凡人の身でもできる限りのことはやったつもりだ。
一応戦果はある。盗まれただろうカバンはこの手にある。
えっと、この後は警察に話をして、う~~ん遅くなるだろうな……
こうなってしまったらほかの店は見て回れそうもない。
やっぱりチョコレートにしよう。
まあチョコは明日買えばいいか。
とりあえず役に立てたようでよかった。
結局本当に日が暮れちゃったな……
この後、久しぶりに親に褒められた。
小説やマンガだとこういうのは怒られるのが普通じゃなかろうか。
もしかして親の感覚はバグっているのだろうか。
いやそれはないな。
少なくともさっき俺が普通に育ってくれてよかったと言ってくれていたし、いい親なのだろう。
最強に可愛いうちの妹、乃愛は笑っていたが、可愛かったので気にしないでおこう。
もう一度俺にその可愛い笑顔を見せてほしいものだ。
あ~~本当に天使!最カワ!乃愛ちゃんサイコー!
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