ひみっちゃんの話
疑われる
「あのー、すいませーん。ケーサツの者なのですが、少しお話を伺ってもよろしいですかね。」
インターホンが鳴ったのでドアを開けて確認すると警察官が立っていてこのように言われた。
少し驚いたが特に用事もないので怪訝そうな顔をして私は頷いた。
「この辺りで事件がありましてー。その時あなたが何をしていたか教えていただけませんか?」
怪しむ私の様子に気づいているのかいないのかその人は胡散臭い笑顔で事件の概要を話し始めた。
どうやら、人通りの少ない夜の時間帯にこの辺りで殺人事件が起きたらしい。
その日、その時は私は珍しく残業が無かったので家で寝ていた。
「えーと、その時間帯は私は家で寝ていましたね。」
少し考える素振りをして私は答えた。
目の前に立っている警察官がニヤニヤとし始める。
「なるほど、では、アリバイを証明する人はいないんですね?」
お前が犯人でしょ?という目線で私を見てくる。
アリバイだなんてそんな容疑者に聞くようなこと平然と一般人に話す人がいるのか。
「あの、私のことを疑っているんですか?」
この気味の悪い雰囲気が自分の勘違いであることを願って私は尋ねた。
「はい、疑うのが我々ケーサツの仕事なので。」
「大体あなたね、一人暮らしで友人もいないそうじゃないですか。ストレスたまってたんでしょ?」
目の前にいる人は私に次々とそう話してくる。
頭が回らない。
事前に私のことを知っていたの?
ストレスがたまっていたからってそんなことするわけないじゃない!
否定をしても否定をしても目の前の警察官はニヤニヤして問い詰めてくる。
お前がやったんだろ?という視線が痛い。
否定をして何分、何十分、何時間経ったのだろうか。
「はあ、じゃあもういいです。後でまた来ますね。」
このままでは埒が明かないと思ったのか警察官は真顔になりそう言って帰っていった。
それからしばらく後、その事件の犯人が捕まったというニュースがテレビで流れていた。
やはり私じゃなかったんじゃないか。
そう思うが警察からは謝罪も何も来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます