キャラ同士の絡み

ショウの思い

「ごご、ごめ、んなさい…!ごめんなさい!」

ニコという名前の人物は謝りながら私にナタを振り下ろしてくる。謝ってはいるし怯えているような振る舞いをしているがよく見ると顔は笑っている。

自分が傷つけられる立場でないことに安心感を覚えているのだろう。


そんな傷つける立場に回れたニコのことを少し羨ましいとは思うと同時に哀れに感じてしまう。

この場所の仕組み上、傷つける側に回る…つまりここの主人のペットになるには一度はこのような拷問のようなことをされなければならない。


ニコは本名を奪われ、傷つけられ、心が折れて従うことで今の場所で何とか生きることが出来ていると考えるとどうにも可哀想だ。


まあ、私も素直に従えばそちらの立場になれたのだが「はい、わかりました」とすんなり承諾するのは癪だったため今、こうなっているのだ。

関西弁で馴れ馴れしく話しかけてくるこの場所の主人と思われる女性は私に「ショウ」と名付けた。


彼女は名乗ってくれなかったので私は彼女のことを「お嬢ちゃん」と呼んでいる。明らかに自分より年上な気もするが敬いたくはないので仕方ない。


ニコや他のペットの様子を見る限り、名前を奪い拷問することで本当に主人に従順なペットが作れているように見える。

普通はそう簡単にはいかないだろうからお嬢ちゃんの技術力は素晴らしいものなのだろう。

尊敬はできないがお嬢ちゃんの研究に対する熱意も凄まじい。マトモなことをしていたら何人か救っていただろうと思われるのが惜しいところだ。


お嬢ちゃんはたまに私が囚われている部屋に入ってきては様子を実際に確認しに来る。

私のことをずっと「ショウ」と呼んでくるのは自我を崩壊でもさせようとしているのか?

ペットについての情報がほしいが警戒心が強いのかお嬢ちゃんは私が煽っても特に使えそうな情報を話してこない。


私がここで出来ることといえば本名を忘れないことだろう。



頭の中で繰り返す。

私の名前は「鈴木麻美(すずきあさみ)」だ。

絶対に忘れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Kidding Killing お茶漬けサラサラ @ochazukesarasara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ