第56話 レトファリックvs重複のカード、不運のカード

レトファリックは国王ゼレラとの約束を果たし授業対決で勝利するため、自身のステータスを確認していた。


「今、使えるスキルはカメレオンの7、モルホデフタの3。使える魔法は水魔法と回復魔法。これじゃ普段魔法学校に通っている生徒たちに教えられることなんてない。どうしよう。」


レトファリックは頭を抱えていた。


「とりあえず城下街に行ってみるか。」


レトファリックは城下街へと繰り出した。


城下街では魔道具や路上授業する若者たちで埋め尽くされていた。話声や店の声出しで街は賑わっていた。


「魔道具売ってるよ。エンシェントナル、ファイアボール、コールドボール売ってるよ。」


レトファリックは賑わう商店街の中で、魔道具の屋台に目をつけた。


「これ、本の形をしたエンシェントナルとはどういうものなんですか。それにこのフ

ァイアボールやコールドボール。」


屋台で魔道具を売る男はレトファリックの質問に答えた。


「おお。いい目してるねあんちゃん。これは魔力の限界値を引き延ばす能力がある。

ファイアボールとコールドボールは火魔法、氷魔法として使えるよ。」


レトファリックは魔道具についての話をここで聞くことにした。


「もっと話が聞きたいです。魔道具について教えてください。」


レトファリックにはカメレオンの7、擬態能力で魔道具に化けるという考えがあった。


「おおそうかもっと話が聞きたいか。なら特別に教えてやろう。レミゾカのつるでは植物系攻撃、相手の身動きを封じられる。エンシェントハットはとんがり帽子の魔道具で魔力がたまっているから帽子から魔力を吸い取って実際に使えたりするぞ。このランプの中には魔人がいて実際に使用すると魔人の能力をお借りできる。ブラックボールは闇魔法、ホワイトボールは光魔法、ウォーターロッドは水魔法を使える杖だ。ウォーターボールもあるぞ。」


その後も多くの魔道具についての説明を受けレトファリックは魔道具についての見識

を深めていった。


「ちなみにこのファイアボールはいくらなんですか。」


レトファリックは魔道具店店主に質問した。


「銀貨5枚だ。」


レトファリックは店主の答えに感心した。


「なるほど、確かに高いですけど。思っているよりは少し安いですね。これは授業対決の参考になりそうだ。」


レトファリックは魔道具に擬態できるか、その場で試してみた。


魔道具には化けられたが、ファイアボールなら自身がボールとなってそのまま魔法攻撃をするというものだった。


「これじゃ汎用性がない。魔道具の素晴らしさを伝えるにはもっと多くの魔道具に一度に化けられないと。そうか、もっといいスキルを手に入れないと。」


レトファリックはskiqquに質問をした。


「skiqqu、分身スキルとかってあったりする。あと多数に分裂できるスキルとか。」

skiqquはレトファリックの質問に応じた。


「どちらも実在しているよ。ダイヤの3だよ。分身スキルはコルタナ山脈に存在しているよ。」


「よし、スキルを探しに出発しよう。」


彼は魔道具店を後にしてスキル集めに向けて、リバーライド・シャトール王国を出発した。


コルタナ山脈は急斜面なため、登るだけでひと苦労だった。


「荷物を持ってこなくて正解だった。なんて急勾配なんだ。」


杖を片手に山脈を少しずつ登っていく。気づくと2時間経っていた。


「明日にはゼレラ国王と授業対決しなくちゃいけないのに。これじゃ間に合わない。本当に分身スキルがあるのかskiqqu。」


「モンスターの居場所についての質問は距離が大きく離れている場合のみ可能です。今は所在は分かりません。」


skiqquの応答にレトファリックは残念な気持ちになった。


「くそー。便利で役には立っているんだけどね。正式なNPCになった者にskiqquが与えられるのだろうか。」


そうして話しながら斜面を登っているとカードの表示が現れた。


[これは重複のカード]


「来たきた。カードのスキルが近くにいるぞ。探し出してやる。」


すると、レトファリックは自分が周りのモンスターに囲まれている事に気が付いた。


「どうやら分身のスキルのようだ。これは強いモンスターに囲まれたってことでいいね。あれ。クマバトに出てくるレッサーパンダじゃないか。」


レトファリックは相手のモンスターが人魚時代によくプレイしていたクマバトのレッサーパンダになっていることに気が付いた。


「分身できる能力を持ってることも同じ。ゲームマスターの緋戸出セルもクマバトやってたのかな。」


レトファリックは過去やゲームマスターに想いを馳せた。


「まあいい。能力をもらうよ。レッサーパンダ。」


レッサーパンダのモンスターとレトファリックの対戦が始まった。


「レッサーパンダのレベルは25か中々高いね。まずは本体がどれか、見つけないと

いけないね。まあ僕の視界にいるはずもないか。」


レトファリックが本体を探しているとレッサーパンダ10匹がレトファリックに迫ってきた。


レトファリックは危機に陥り咄嗟にスキルを使用した。


「カメレオンの7。毒エキススライム。」


レトファリックは毒エキスのスライムに化けた。


「僕が有毒になれば分身だとしても簡単には近づけないよね。」


レトファリックは本体探しに勤しんでいた。


「前方に4匹、後方に5匹、化けられる上限が9匹ならこの中に本体がいるはずだけど。違うよね、多分上限は10匹だ。」


するとレッサーパンダは怒ったのかさらに分身した。


「100匹以上でてきた。やばい逃げないと。」


突如彼の目の前に洞窟で転送された時と同じ黒い霧が現れた。黒い霧の中から幽霊が現れた。


「ゴーストテレポート。振動停止。」


レトファリックは身動きが取れなくなった。


[これは不運のカード]


「まさか、洞窟にいるとき俺を転送させたのはお前か、不運のカード。」


レトファリックが動けない間100匹以上のレッサーパンダは彼に攻撃し、彼の服、腹の肉を剥ぎ始めていた。


「し、死ぬ。不運のカードと重複のカード、二つのカード同時は厄介すぎる。」


レトファリックは死を悟った。


すると不運のカードの幽霊が黒い霧で眼前に転送してきた。


「また会ったね。レトファリック君。思わず悪戯しちゃった。」


そういうと、不運のカードの幽霊は黒い霧となり姿を消した。


そして、レッサーパンダから身動きが取れるようになった。


「カメレオンの7。レミゾカのつる。」


つるに擬態した彼は、木に巻き付き上空に飛んで逃げた。

レトファリックは上空から敵全体を視認し、レッサーパンダの位置を特定した。


「あの木の上で寝そべっているレッサーパンダが怪しい。」


レトファリックは地面に落ちるとカメレオンの能力を使用した。


「カメレオンの7。ドリルレーダー。」


ドリルレーダーで分身して絡まってきた100体のレッサーパンダのモンスターを掻き分けて傷をつけながら進む。


それでも分身したレッサーパンダが眼前に束になってレトファリックの動きを止めにかかった。


「カメレオンの7。ジジベムパワー。」


周りを放電で麻痺させ本体らしきレッサーパンダのいる前へと進んでいった。


「振動停止。」


不運のカードのモンスターがかなしばりの能力を発動したが、レトファリックには聞かなかった。


「カメレオンの7。地下遺跡の壁。」


レトファリックは地下遺跡で自分がドリルの力で開けた壁になった。それにより、相手からは体が視認されない作りになっていた。


「くそーやるじゃん。レトファリック君、無生物に化けられる君は僕にとっては天敵だね。」


レトファリックは壁を横にして分身した敵を掻き分けて進み、本体らしきレッサーパンダに迫った。



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