第33話 ビリヤード開始、第2サーバーから来た4つの道具

〔追加報酬の条件を説明いたします。

条件 挑戦者が複数であった場合のみ、NPCサイド全ての方がこのゲームに命を賭けていただきます。ゲームに敗北した場合、完全消滅になります。

また、一名が命を賭けた場合、ゲームに勝利してもオートビット・レナリアはNPCとしてシステムに管理せず、挑戦者と共に行動します。人間には心を閉ざしていますが、NPCとの和解を希望する場合、以上の条件を推奨致します。〕


レトファリックは追加報酬の条件を聞き、納得した。

「スキルとレナリアが欲しいなら命を賭けないといけないという訳か。」


「FONUMEES SKILLを入手するには、命を賭けないといけないのかよ。」


「このウエスタンな女子が人間の味方なってくれるの。田芽助犠牲になれよ。」


「レナリアさんは可愛いし好きです。けれど、この人かなり怒ってます。人間に対する憎悪が強くて、彼女自身パーティに入る事を望んでないように見えます。人間と共同生活を強いるのはいいとは思えないです。」


「確かに目が笑ってない。一回レナリアさんから話を聞いてみようよ。」


レナリアはレトファリックらに対して無反応だったが、笑顔を保ち続けていた。


「私は履いて捨てられる彫刻品だから興味示しても意味ないよ。早く、ビリヤードがしたいなあ。ルールはもう理解できた?squiに準備完了の合図を送ったらゲームが開始されるよ。」

挑戦者の4人は明らかに心の壁を敷いているレナリアに気づき、彼女をパーティーメンバーに引き入れる事が、本当に正しい事か思考を巡らせ始めていた。


「どうしますか。彼女にトラウマを植え付けかねません。ゲームが終了してもsquiが管理するNPCの一体に戻るだけです。データまでは消さないと思います。」


「追加報酬のスキルも欲しいけど、彼女が味方になるのは嬉しい。人間に慣れていけば素で話せるようになると思う。戦闘できるのかは分からないけど。」


「彼女を守ろうとしない人が追加報酬を取る必要はないんじゃない。squiの意図を考えてみればこのゲームに命を賭けた人がもらうべきだと思うよ。私は今回は遠慮しとく。」


「…。」


皆の意思が、追加報酬を捨ててゲームを始める方向にまとまってきていたが、罪悪感のあるレトファリックがレナリアに話しかけた。


「もしかして、俺の顔を覚えていたりするか。」


「ごめんねー。プレイヤーの顔はあんまり覚えてない。記憶力が乏しい方のNPCなんだ。」


「そうか。良かった。」


峰未雨が心の安堵を出してしまい怯えてしまった。

実は峰未雨は少し嘘をついていた。彼女もエレミルの兵士だったため、NPCの捕虜を城まで連れていく事もあった。その中には村人や旅商人など、人間のNPCが多くいたため、内心焦っていた。


「ノックザード国王という名前を覚えているか。」


レナリアは笑顔だったが、レトファリック達4人の反応を聞いてすぼめた目から涙を落としていた。

レトファリックは涙を見せた彼女を見て深く謝罪した。


「前国王はNPCを殺す行為を平然と行っていた。数多くのNPCが犠牲になったのを俺は黙認していた。エレミル兵士として謝罪する。申し訳無かった。」


レナリアはレトファリックの言葉を聞いて涙を見せ真顔になっている事を他のパーティメンバが驚いていた。


レナリアは再び演技に入ったような表情を見せてほくそ笑んだ。


「それなら、まずは命を賭けてみてほしいなあ。人間さん。」


レトファリックは追加報酬の条件の事を思い出し、口が重くレナリアの希望に応じる事が出来なかった。


「それは…。」


峰未雨は自分が命を賭ける事を極力嫌う。様々な作品で見た命を賭ける行為を自分がすれば死ぬと思っていた。今目の前に自らの死を委ねる選択が現れ、彼には見えた。自らが処刑台に立ち、目の前の女性に殺される光景が浮かんだ。


「すまんレナリア。同情しておいて命を賭けないのでは私達は信用されないだろうな。人間は最低だ。本当に申し訳ない。」


他のパーティーメンバーの全員が空気を感じ沈黙していた。NPCが私達人間のプレイヤーに復讐する事に正当性を感じてしまい、自分達を悪人だと思ってしまった。


「ルールは理解できたか。俺は聞いていない部分が少しあるんだ。教えてくれると助かる。」


「私達も命を賭けなかったんだから過去に何があったのかは知らないけど気にしなくていいよ。ルールは私から説明するね。」


鯱千がルールを一通り確認してパーティーメンバー全員で作戦を共有した。


「squi。準備ができた。ゲームを始めて問題ない。」

〔承りました。これより、A BIRIYARD-LIKE GAME USING FONUMEES SKILL BALLを始めます。ゲームマスター権限より、監視システムを現会場で使用。不正のないようにDESSQのシステムが審判致します。〕


〔ゲームで使用される道具をゲームボードの横に配置致しました。ご確認下さい。また、ゲームが開始されてからの質問もお答えできる範囲であればレナリア様がお答え致します。〕


峰未雨は、ゲームボードの横に置かれている対戦道具を見た。


「これは本当にゲームに使用する道具なのか。戦闘兵器に見えるが。」


「うんそうだよー。口先だけの元兵士さん。ここに置かれている道具の内好きなものを毎回選んで玉を突ける。まず先行は君達からだから好きな道具を取って持ってといいよ。」


「これは円盤を回すと力が加わって弾き飛ばせると書いてあるな。回してみよう。」


レトファリックはレナリアの言葉に反応できず目を背けるように機械を操作していた。

カン。


「あっぶな。力が加わりすぎている。ボールが地面を滑る訳がない。台をはみ出るだろ。」


その場に置かれていた道具は4つ。

一つ目は、ビリヤードで使うキューと言われる一般的な棒。

二つ目は、後方の金属板で位置を固定して中心に地面に円盤がついたバネのついた金属板で、円盤を回す事でバネを縮ませボールに衝撃を与える道具だった。

三つ目は、モルホデフタの形をした機械で、メニュー画面にリモコンが現れ操作するというものだった。

四つ目は、大きな銃の引き金を引くと金属系変性モンスターの能力によって銃口の一部のみ強く光りキューとは異なる四角い金属棒が発射され、ボールに力を加え弾き飛ばす道具だった。


「ここにあるのは、第二サーバーで製造したものも含まれてるよー。だけど使われてる道具は一部だと聞いておりまーす。」


レトファリックはビリヤードのキューを持っていた。

「普段ビリヤードで使う道具はこのキューだけだけど、他に3つもあるならもう別のスポーツだね。」


「ああそうだな。いた。あまり道具を無闇に使うな。戦闘で使用できるレベルだ。」


「すいませんレトファリックさん。あのーこの鳥見てください。モルホデフタみたいです。ルビーはない金属ですけどこうやって操作画面から動かせますよ。」


「あはは。この銃近距離も遠距離も行けるしすぐ戻る。最高。これでビリヤードできるんだ。レナリアさん、持って帰っていい?」


「ここにある道具はどれも面白いですね。…鯱千さん。あのー、さっき一度試したらこの銃貸してくれるって言ってから結構時間が経って未だ道具頂いてません。」

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