第28話 レトファリック、田芽助らと合流
「峯未雨、助けに来てくれると信じてた。」
バフ。貧血になっている鯱千に峯未雨は思いっきり抱きしめた。
「あなたの話を聞かない私が悪かった。ごめん。鯱千。生きてて良かった。」
「いや、パーティーを見捨てようとしたのは私だから」
それから田芽助とも合流し峰未雨らは9階の道を進んでいた。
すると、squiから吉報が入った。
[こんにちは、squiです。たった今、プレイヤーレトファリックがモルホゼフタの3を獲得致しました。スキル欄をアップデートいたしますのでご確認ください。]
「レトファリックさんが生きてる。」
「生きてるみたいだね。」
「よかった。生きてる。一緒にまた、パーティーでいられる。」
レトファリックさんが生きておりカードのスキルも持っている事から上機嫌になって道を度々走って進んでいた。峯未雨、鯱千、田芽助らはYobaseが8階までいない事に疑問を抱いている最中だった。
9階の道は、初めから十字路の道が多かった。
「峯未雨。私も剣技上達したんだから前衛がいい。」
「勝手な動きは駄目だ。」
「はあ。羨ましい。」
峯未雨が鯱千を超近距離で守る形になっており、田芽助が先頭を歩いているのだが、レバニーラフトフが来る度、田芽助の前をスキルで追い抜いて峯未雨が蹂躙していった。
「峯未雨。経験値が田芽助に並んだよー。」
「おめでとー。後は私が剣技さえ教えれば完璧だ。」
経験値をほとんど鯱千が持っていっている。レバニーラフトフを2体引きずる峯未雨さんが怖い。なぜだ。8階の植物が生えていた広間を超えてから、2人の仲が良くなりすぎてる。邪魔だ。
それでも前方を歩き、モンスターの気配を察知しては仮リーダーの峯未雨に報告していた。その時だった。レバニーラフトフの鳴き声が一箇所に集中していた。
峯未雨が異変に気づき、前方へ進み臨戦態勢をとった。
「とりあえず様子を見に行こう。」
モンスターの声の出る方向に向かうと煙が立っていた。モンスターが落ちていっていた。最後のレバニーラフトフが落ちていき、燃やされ、狩られている。
「レバニーラフトフの脂はよく燃えるなあ。おーい。誰かいないかー。師匠の防壁さえあれば此処は安全だな。」
久しぶりな気がする声が煙の下から聞こえた。峯未雨は思わず煙の下まで飛び込んでいった。
「あ、この声、この煙の下にいる。い、いまーす。」
Yobaseの頭の中で希望が湧いてきていた。
「今、水かける。」
「Yobaseーー。あっち。服が燃える。」
「早いわ。あれ。峯未雨。峯未雨なのか。あ、あはは。なんだその見た目。」
鯱千と田芽助が、2つ下の階に望んでいたパーティーメンバーが生きている事に戸惑いながら心の底から安堵していた。
田芽助は涙を堪えられていなかった。
「田芽助、鯱千、居るかー。今ツルをそっちに渡すから受け取って降りてきてくれ。」
「レトファリックさん。ゔゔ僕の不注意のせいで地下遺跡に連れて行かれた事が申し訳なくて生きててくれてホッとしています。」
「あれは予測できない俺の問題だ。」
自分でも今の台詞を言えた事に感動していた。
「レトファー。無事でよかったぜー。田芽助と揃ってカードのスキルを手に入れるなんてお手柄じゃねーか。」
「レトファリックさん。リーダーの肩温かいです。お怪我が無くて良かった。」
Yobaseにとって今の光景は夢と錯覚する程だった。
「さっきまでの地下遺跡での地獄とギャップが激しすぎて追いつけん。」
(…。この状況で人間の仲間が本当に助けに来るとは。)
一旦落ち着きを取り戻し、Yobaseが自身のスキルについて話始めた。
「それでこの動かない赤鉱石の鳥がモルホデフタだ。意識はあって今も俺に話かけている。」『地上まで着いていくだけだとさっさと伝えろ。』
「これからパーティーとして同行してくれるらしい。」
『聞け、弟子、いやレトファリック。』
「レトファリックさんこの鳥生きてるんですね。凄い。」
「触ったらどうなるん。」
『人間は嫌いだ。近寄るな。』
鯱千の脳内で意識伝令が聞こえた。
「言葉が聞こえた。あれ、もしかして私より年下なの。」
『違う。お前が生まれる前からこの遺跡にいる。』
「お前ら、いきなりで悪いが話がある。」
レトファリックが再び皆をまとめて横に続く遺跡の白い道について話をし始めた。
「確かに変だな。めっちゃ面白そうじゃん。峯未雨的にはどう。」
「私も先に進んでみたい。」
「僕も今のこの4人なら行けると思います。」
「分かった。一旦確認させてくれ。」
(モルホデフタ。さっき言った通り、バグではないんだよな。ゲームマスターに怒られないよな。)
「…。」
「不安要素はあるがモンスターはいないらしい。慎重に行こう。」
遺跡の中でも一際目立つ白い道は暗くなっていった。ランプは発案者のリーダーが持って進んでいた。
「お前ら、情報通の私が考察すると多分この先にあるのは、ただのバグエリアか現実世界に戻る方法だと思うぞ。一番怪しいのはトランプカードのスキルだな。」
「鯱千、心が沸き立つのはいいが、圧倒的な敵モンスターがいる可能性もある。見ろ、白く綻びのない床と壁。遺跡かも分からなくなってきた。俺の勘が危険だと言っている。」
「バグで発生したエリアならこのまま現実に帰れるかもしれないですね。」
「もしそうなら最高ですね。このゲームのシステムに関係する重要な情報が眠っている可能性が高いと思います。」
「モンスターの気配どころか人間が来た形跡もない。これ一番乗りかもな。いたっ。」
「先に行くな。また束縛系モンスターに捕まるぞ鯱千。見ろ。あそこに段差がある。」
かなり前のめりで進んでいた鯱千が目的地に着いた事を悟った。
大きな空間には階段があり、それを登っていっていた。近くにモンスターの声も気配はなく警戒しながら登っていった。
階段の上には一人の人間と巨大な台座のようなものと棺が置かれていた。棺の周りには光る白い花が咲いていた。
Yobaseらは周囲の巨大な台座、棺を観察していた。
モンスターがいないのに花の手入れはしっかりとされていた。
ランプを近づける。巨大な壁には緑色の芝生があった。台座に見えたものはビリヤード台だった。
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