第10話 トランプカードとビリヤード台

Yobase達は横になっている巨大なビリヤード台から情報を探していた。


ビリヤード台の大きさは人より二回り以上大きく横幅3m高さが6mぐらいの大きさで長方形の一枚のカードのような形だった。


「高いな。全貌が見えない。」


「峰未雨肩貸して。」


鯱千が峰未雨の肩を借りて、上部を確認していた。


しかし、田芽助が瞬時にヒントを見つけた。


「あ、あのよく見たらここに丸型の凹みが8つあります。色もついています。」


「本当だ。丁度ビリヤード玉の大きさくらいだ。」


「意味がなかったね。峰未雨。」


「早く降りて。」


鯱千が峰未雨から降りて田芽助の灯りで示している場所を見た。


「左側の色が、黒、青、赤、緑になっています。この4色はトランプカードの色を表していると思います。」


「凹みは8つ、間違いなさそうだな。トランプの色位置がスキル画面の長方形の部分と同じだ。」


峰未雨と鯱千が凹みを確認していた。


「おーこれか。結局トランプカードなのかよ。」


「トランプカードの4色と同じですね。黒色がスペードで合ってるとしたらスペードの10の回答があった場所が黒色になってますね。」


「青色がダイヤ。緑色がクラブ。位置は長方形のと合ってそうだ。右側と左側で色の順番が違うのは予想外。気になるのは、左側かな。」


Yobase達がランプで光らせた場所に縦2列。横4列の8マスの丸形の穴が開いていた。トランプのカードで出てくる4つのマークの色があった。黒色はスペード。青色はダイヤ。赤色はハート。緑色はクラブ。


左上から順にスペード、ダイヤ、ハート、クラブ。右上から順に、ダイヤ、スペード、クラブ、ダイヤを表す色があった。


Yobaseはメニュー画面を開き、丸形の凹みとメニューのスキル画面の長方形の部分と見比べた。カメレオンの7が現れた位置と台座のマークが一致していた。


スペードの10と回答されたNon Player Clown FONUMEES SKILL JOKER CODEの位置と同じな事も確認した。


「鯱千の言う通り、青色がダイヤ緑色がクラブと考えると、スキル画面の長方形のダイヤの3が現れた位置。クラブの7が数十分現れた位置と一致している。しかし丸型の凹みはビリヤード玉、この壁も巨大なビリヤード台になっている。」


田芽助が巨大なビリヤード台を眺めて発言した。


「なぜトランプカードではなくビリヤードなのかは分かりません。全てのカードを集めるだけならスキル画面だけでいいはずです。しかし、ゲームクリアに必要だからビリヤード台が置かれてるんだと思います。」


「田芽助と同意見だ。この巨大なビリヤード台ゲームクリアに必要な可能性が高いと思う。それと、4色からカードのマークが分かるなら数字さえ分かれば次の FONUMEES SKILL EX JOKER CODEも答えられる筈だ。」


「私もカードに該当するスキルが欲しくなってきた。」


「この情報は今回の事件の根幹に関わってる。マジでアドバンテージだ。私の時代来た。」


各々が目の前の大きな情報を前にして希望を抱いていた。


峰未雨が、カードに該当するスキルを持っているYobaseに話しかけた。


「この巨大なビリヤード台に意味があるなら、普通にカードスキルに反応すると思います。試して良さそうじゃないですか、Yobaseさん。」


「確かにあり得る。田芽助、試してみよう。」


「分かりました、試してみましょう。」


鯱千の意見に賛同して田芽助とYobaseがそれぞれスキルを発動させた。


「テママリナネットの3」


「モルホデフタの3」


スキルを発動させるとビリヤード台が様変わりしてデジタル画面となった。


[認証しています。テママリナネットの3=多憑依獣の転転移〔北極の海とテママリナネット〕モルホデフタの3=不動赤鉱鳥の意識指示〔地始まりとモルホデフタ〕テママリナネット、モルホデフタ確認致しました。ダイヤの3達成致しました。現在の状況を把握しています。少々お時間を頂きますがお待ち下さい。]


台座のマークの淵が光り出した。


[伝達完了致しました。危険ですので台座からは離れてお待ち下さい。]


「芝生からデジタル画面になった、一体どうなってる。」


「うわー。何この演出。綺麗じゃん。」


4人は3歩程後方に下がったが台座が上下に回転し始め事に驚きさらに後方に下がった。


「凄い回転し始めました。裏面になってるからですかね。」


「それならスキル画面と同じように一度真っ新になるかもな。」


回転していた台座が90度後方に回転し止まった。ビリヤード台として使える高さになった。


先程からモンスターの気配はない。4人がビリヤード台を囲むように画面を眺めていた。通常のビリヤード台の2倍程大きく上から見ても大きなスクリーンは作戦会議にも活かせそうな代物だった。


鯱千は気持ちが高揚していた。峰未雨は現実世界を思い出して穏やかな気持ちになっていた。


「巨大なビリヤード台だ。しかもデジタル画面が着いていて近未来的。」


「ビリヤード台というより液晶テレビみたい。今までゲームの世界に入ってたから、デジタル画面を見ると落ち着くな。」


表面が液晶に見える画面のビリヤード台に、青白い光で一枚のトランプカードと文字が書かれていく。


[仮NPCの皆さん、おめでとうございます。スペードの10正答を確認致しました。システムに沿って回答への導出を説明いたします。]


「おお。これは2日目の早朝に回答があったスペードの10だ。未だになぜスペードの10なのかが分からないが。」


「僕にも分かりません。先ほどの丸型の凹みの色の順番を見てもさっぱりなので導出を教えてくれるのは嬉しいですね。」


〔メニューにあるスキル画面の長方形のエリアを再現致しました。〕


デジタル画面の右側に沿うようにメニューからスキル画面へと移り、長方形の縁が光出した。長方形の下部のスペースに文字が現れた。


〔スペードの10、正答への導出〕


文字が消え、左上から順に青白く縁が光出しトランプカードが現れた。そしてまた文字が出現した。


〔まず結論から先に話します。まず、この長方形を一枚のトランプカードのように考えます。するとカードの中にカードがある形でこの長方形がトランプの数字の9になるように9枚のカードが並んでいます。〕


トランプの隙間には文字が書かれた。左側の一番上からスペードの1、そこから下にダイヤの3、ハートの5、クラブの7。右上からダイヤの9、スペードの10、クラブのJACK、ハートのQUEEN、中心にダイヤのKING。


〔スペードの10回答までにこの長方形の画面に現れた変化は2つです。1つ目はトランプのクラブの7が出現した事です。2つ目はクラブの7が一時的に達成された直後、中心部分に小さなダイヤのマークが出現した事です。当時の状況を再現します。〕


右上から一つ下の位置にFONUMEES SKILL JOKER CODEが書かれた。


トランプは画面の左下のクラブの7のみが残り、その他のカードはスクリーンに表示されなくなった。そして中心部分にカードに比べて小さいダイヤのマークが表示された。


〔クラブの7が左側の下部にあるという情報から、FONUMEES SKILL JOKER CODEを求めます。そのために、まずトランプの枚数から考えます。〕


〔FONUMEES SKILL JOKER CODEの位置は右上から一つ下。そしてクラブの7の位置、面積から上に3枚分、右側には4枚分。少なくとも8枚のトランプカードが入る空白がある事を確認します。〕


〔次に長方形をトランプの数字の8と見た際の順番を考えます。トランプカードでは、数字の1から3までは縦に増え、そこから形が変わり2つ目の列が出来るので順番は左側から右側へと数えます。


また、上下の順番は、トランプカードの数字の7が上部から始まっているため、上から数えます。

そのため、カードの順番は右側の列の上部から1番目、2番目、3番目、クラブの7が4番目、右側に移り、5番目から8番目となります。〕


〔ここで、中心の小さなダイヤのマークが入手していない一枚のカードを表していると気づくと、順番が9番目と数えられると分かります。〕


長方形の中心を含めない、クラブの7以外の7つの箇所にカードの縁が現れた。中心部分のみ下部に9番目と書かれた。


〔これらによってFONUMEES SKILL JOKER CODEの位置が右上部から一つ下、6番目のカードだと分かります。〕


右上から一つ下の位置にFONUMEES SKILL JOKER CODEが点滅し強く光出した。


〔スペードの10、正答への導出。ここから本題となります。最重要な事項としてまず、中心のダイヤを含めると、長方形が一枚の数字の9のトランプカードだと判断できます。ここで、トランプの数字が10まである事から、裏面があると気づく事が可能です。表面がトランプの数字の9であれば、裏面が数字の10と導出できます。〕



〔次にFONUMEES SKILL JOKER CODEに当てはまるトランプのマークを求めます。また、FONUMEES SKILL JOKER CODEが長方形のカードを裏面にする事に関与していると気づけます。順を追って説明いたします。〕


〔トランプのマークについて、4番目がクラブ、9番目がダイヤだと確定しています。

ここでマークの順番を七並べの順番通り、スペード、ダイヤ、ハート、クラブ

と仮定すると、4番目のクラブが一致して、9番目のダイヤがスペードとなり不適だと判断できます。これは裏面を考慮すれば導き出せます。長方形のカードの上部分と下部分でトランプマークがクロスした形がトランプカードの数字の10の中心の二つの模様を表している事に気づくと、左側のトランプのマークが七並べだと仮定すると、右側はスペードとダイヤ、ハートとクラブが位置が逆だと気づく事が可能です。〕


〔これらの考察から、トランプのマークは左上の一番目から、スペード、ダイヤ、ハート、クラブ、右側の5番目から、ダイヤ、スペード、クラブ、ハートだと求められます。以上より、FONUMEES SKILL JOKER CODEはスペードであると導出できます。そして、スペードの導出には裏面を考慮する必要があるので、長方形を裏面にする方法だと気づけます。〕


〔次にFONUMEES SKILL JOKER CODEの数字を求めます。トランプの数字は4番目の7が確定しています。4番目で数字が7であれば奇数と考えられます。しかしその場合、8番目と9番目がそれぞれ15、17とトランプの数字の上限である13のKINGを超えるため、不適と考えます。


次にクラブの7を基準として、左側の上部の一番目から九番目まで、4、5、6、7、8、9、10、11、12と仮定します。この場合、FONUMEES SKILL JOKER CODEはスペードの9となり、数字は超過しません。この説は成り立つため、これをクラブの7基準説とします。しかしこの回答は不適となります。後に理由を説明します。〕


〔別の可能性を考えます。今度は一度奇数の法則と仮定してFONUMEES SKILL JOKER CODEを求めていきます。奇数の法則のみで考えるとクラブの7の位置より、左側の上の数字が1番目から、1、3、5、7とここまで確定します。この考え方でFONUMEES SKILL JOKER CODEを求めるとスペードの9もしくはスペードの10になります。しかし、これでは奇数の法則の意味がありません。

5番目から9番目の数字を考える際に奇数の法則を重視するとトランプカードでは数字は1~10、それ以降は絵札となるので考慮しないと仮定します。

11以降を考慮しない場合、5番目の数字は9、6番目のFONUMEES SKILL JOKER CODEがJOKERであるため10で問題ないと気づく事ができます。以上より、この考え方であればFONUMEES SKILL JOKER CODEはスペードの10である可能性が高いと判断できます。これを奇数の法則説とします。〕


〔クラブの7基準説、奇数の法則説より、FONUMEEES SKILL JOKER CODEはスペードの9もしくは、スペードの10となります。トランプカードの意味からFONUMEES SKILL JOKER CODEを求めます。クラブの7、レオリープ・カメレオンのスキルを仮NPC名〔レトファリック〕が入手した際、意味は〔幸運とレオリープ・カメレオン〕と表示されました。クラブの7で意味に幸運が含まれている事に着目すると、トランプカードと意味が結びついていると気づく事が出来ます。〕


〔先ほどと同じようにトランプの数字の超過を防ぐ事を考えると、5番目が8もしくは9、9番目が12もしくは13。5番目、9番目ともにダイヤであるため、5番目はダイヤの8、もしくはダイヤの9。9番目はダイヤの12、もしくはダイヤの13。〕


〔まず、5番目の候補はダイヤの8、ダイヤの9。候補の内、ダイヤの9が野球に喩えられると気づく事ができます。ダイヤ型のマウンドで自チーム9人で行う球技であるからです。次に、9番目の候補はダイヤの12、QUEEN、ダイヤの13、KING。この9番目のみカードを入手していないにもかかわらず、小さなダイヤのマークが出現した。ダイヤのマークはクラブの7をKamesisiが入手した時スキル画面に更新されました。〕


〔クラブの7が一時的に達成されゲームが動き始めた時、メニュー画面からNPCの見た目の現状、ゲームクリアの概要についての説明とともに、スキル画面に私、squiがダイヤのマークを更新いたしました。9番目のカードはダイヤのKING、squiを表しています。〕


〔以上の事に着目し、様々な観点から考えると、FONUMEES SKILL JOKER CODEはスペードの10であると導出できます。〕


Yobaseと鯱千がまず反応した。


「は」「嘘」


「100万人以上の人間の知識と最新技術を結集して生まれたsquiがダイヤのKING?は、はは。へーお前敵なのかよ。」


「驚いた。squiが敵だと認識出来ないとこの問題が正答だと確信できないのか。」


峰未雨が戸惑っていたがすぐに反応した。


「DESSQシステムのAIが敵なんて無理じゃ。これじゃメニュー画面開けない。」


しかし、田芽助だけが冷静にsquiに質問した。


「それでは、今ここであなたとゲームか何かで対戦しなくてはいけないという事ですか。」


squiが質問に応答する事は無かったが田芽助の推測は当たっていた。


〔…それでは、これからこのゲームボードでFONUMEES SKILLをBALLにしてビリヤードを用いたゲームをしましょう。〕


デジタル画面の台に大きくゲームの概要が表示された。


〔A BIRIYARD-LIKE GAME USING FONUMEES SKILL BALL〕


「完全に失敗した。squiとゲームが始まってしまった。負けたら消滅とかあるかもしれない。こ、これは英語。誰か説明してくれ。」


Yobaseの声掛けに峰未雨が応えた。


「えーとビリヤードのゲームな事は分かるけど。」


「これは、さっきの説明のまんまだよ。トランプカードになってるFONUMEES SKILL BALLを使ったビリヤードみたいなゲームと書いてあるね。」


〔対戦形式1対4。 挑戦者Yobase、峰未雨、鯱千、六衛田芽助。ゲームのルール、白色のボールを8つ配置。それぞれにスキル画面のトランプカードになっている表面のFONUMEES SKILLをBALLにして表しています。〕


〔表面の内、判明しているカードのみマークを表示します。クラブの7該当モンスター、レオリープ・カメレオン。ダイヤの3該当モンスター、テママリナネット、モルホデフタ。〕


黒色、青色、赤色、緑色のそれぞれのトランプのマークが描かれたボールが8つ。ビリヤード玉の大きさの丸型の凹みに現れた。


〔ゲームボードの右下の丸型の凹みにトランプのマークに沿って描かれた4色のボールを8つ出現致しました。手に取ってご確認下さい。〕


「このボール、4色のトランプのマークが描かれていて、数字が書かれてる。」


「4色のボールの模様を見ると明らかにトランプカードだ。ビリヤードをするにしても違和感が拭えない。」


「このクラブの7のボールには、緑色のレオリープ・カメレオンが描かれてるよ。」


「このダイヤの3の裏にはテママリナネットの絵が描かれてますよ。」


〔ボードの右側にある棺の中に今回のゲームで使用される白いボールがありますのでお取りください。白いボールがボードに置かれた時、ゲームの説明を続けます。よろしくお願いいたします。〕


「あの白い花が咲いている棺か。」


Yobase一行は棺まで向かい、峰未雨が鯱千を静止させて、Yobaseが棺を恐る恐る開けた。棺の中身には白いビリヤード玉のサイズのボールが入っていた。

「モルホデフタの絵だけが描かれてる。」

そこには紙が置かれていた。

紙にはこう書かれていた。


「こんにちは。ダイヤの3所持者。始まりの君へ。私はゲームマスターの緋戸出セルだ。DESSQ開発者リーダーを務めていた私、ゲームマスターはいわば、ゲームの世界での神だ。神がいれば、平等にルールが与えられ、ルールを侵せばシステムに抵触し殺す事もできる。それは君達にとっては平等だ。でもね。それは平等に見えているだけで君達は私の下僕なんだ。君達はシステムの中で予測できる行動をする事が多い。NPCに見えてしまう時があるんだ。


しかし時々、ゲームの世界でただ写真を撮っているプレイヤーの姿を見ると、君達を試したくなってしまった。私が見ているというだけで君達は萎縮してしまう。神は存在するだけで人間全てを威嚇できるからね。現実の君達も空や海、世界のありとあらゆる物体に神が存在していると考え行動する。私が現実主義MMOのDESSQを作ってから、時間が経つにつれて、世界を創造したゲームマスターこそが人間であるプレイヤーを監視している事で抑制していると気が付いた。DESSQを開発した神などとお膳立てされる私はこの世界に不必要だと思ったんだ。


だからね。私のいない世界を生み出してみた。私よりも賢い、DESSQ総ユーザー1000000人のデータ、その他も含め数多の情報を学習させたsquiを神とする事にして私はこの世を去る。この新しいDESSQを楽しんでくれると心から嬉しい。

DESSQ開発者 緋戸出セル」


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