第26話 田芽助、ジジベムを駆使して峰未雨を救う事を目指す
彼は現状を冷静に分析した。
半径10mをテママリナネットの瞳で知覚する能力は、人間がスキルを得た今暗闇では効力を発揮しない。モンスターを視認した事を認識するためには一定の明るさが必要がある。
手元にあるランプを何処に投げるか。
騒音が聞こえていた。峯未雨さんの声が見つからなかったが作戦は実行できそうだった。
灯りを遠くへ投げ、2体のジジベムを視認した事になった。
「結局は峯未雨さんもYobaseさんも僕が見つけ出さないといけないんだ。」
ジジベムに憑依してからは流れる動作で、放電を放った。
光の先にジジべムがいた。
彼は見逃さなかった。
瞬時に電荷をマイナスにし、合体した。
ジガラットカムルの電子移動網を全力で使い、光を周囲に張り巡らせた。
レバニーブルを無視してジジベムのみに憑依を行った。
6体が合体した状態になり、光も増大した。
「ああ。」
峯未雨の声がうっすら上部から聞こえた。
光を声の聞こえた方に集中させるとゲラリオレミザリアがいた。ツルが迫ってくる前に憑依を行おうとしたが、出来なかった。
田芽助は反射でジジベムを分解し、敵の攻撃を避けた。
憑依できないものは避け、憑依できるモンスターをミミズのように慎重に移動しながら集め始めた。
ゲラリオレミゾカ3体を憑依した。
(「そうか同化できていなかったんだ。」)
憑依した対象を彼は、位置、身体を正確に把握したため操作ができる事に気が付いた。
しかしまだ思ったようには動かない。
彼は操作するスキルに対しての力量、器が足りていなかったため、ジガラットカムルでジジべムをまとめ、ゲラリオレミゾカのツルに神経を集中させた。
彼は真剣だった。峯未雨がいる。生きている。見えないけれどまだ取り返せる事にジジベムになった本体の中にいる猫の瞳は光っていた。
ツルでゲラリオレミザリアを誘導させ、敵をそちらに集中させた。
本体のジジベムから青鈍色の猫が現れた。
「峰未雨うう。声が小さくて場所が分かりません。目を覚まして返事をしてください。」
ゲラリオレミザリアが彼女を上部に張り付けていた。
峰未雨は田芽助の声で意識を取り戻し、力技で邪魔な植物のツルを噛んで引きちぎり少しの間に返事をした。
「クッソ最悪。このモンスターを殺すから早く解放して。お願い。」
田芽助は変わらない峯未雨の返事に思わず温かみを覚えた。
問題はゲラリオレミザリアが憑依できない事。
ジガラットカムルの電子移動の網で、敵を麻痺にすることができる。
電子移動の網は、彼女も含めて感電させダメージを与える。
田芽助の中で彼女なら耐えられるという確信があった。
ゲラリオレミゾカのツルを峯未雨のいる方向に纏わりついた。
敵の攻撃は纏わりついたツルではなく声が聞こえた場所に向けられた。しかし青鈍色の猫はもういない。ジガラットカムルの電子移動網を使い、ゲラリオレミゾカ諸共、感電させた。
ゲラリオレミゾカは元の状態すら残らず消滅した。ゲラリオレミザリアも感電状態になり身動きが取れない状態になった。憑依できないモンスターの代わりにかなり苛立っている武者が降りてきた。
「峰未雨さん。」
青鈍色の猫の田芽助はYobaseと同じ過ちをせず、峯未雨を救い出した事で泣きそうになっていた。
「後にして。」
ゲラリオレミザリアもまた、上部に張り付き続けられず地面に落ちてきていた。
しかし、感電している間に植物系モンスターは切り刻まれていた。
峯未雨は自分の服を汚された事に怒っていた。本当に武者のような猪突猛進の剣筋だった。
[level UP 10↑]
[level UP bonus 一箇所転移地点設定可能]
「田芽助、とりあえずありがとう。Yobaseの事に対しての恨みは一旦不問にするわ。」
しかし、暗闇の先には数多のモンスターがいた。ひとまずランプを使おうと、田芽助がアイテムを回収していると、鯱千が周りのモンスターを捕獲してくれている事に気が付いた。
「バマバマ、バミバミ、バムバム、バメバメ。ダメダメだな私。自分に怖くなって峯未雨のピンチに動けんかった。」
言葉は何でも良かったらしい。
[ニーグ・バム坦々砲ゲージluv.2]
暗闇の先のモンスターも、捕獲していった。
「峯未雨、お前の力が強くて羨ましくて、わざと避けてた。意地張ってる場合じゃないのにね。ごめん。」
「いいよ。別に気にしてないから。それより先に不気味な気配を感じる。」
ランプの灯りを鯱千と峯未雨が3人分つけて進むと、そこにはモンスターを捕食する怪物がいた。レバニーブルをキバで噛み殺し丸呑みして捕食しているオオキババラメシドミムが、場を支配していた。
ライムゴナールドレイン遺跡のバラメシドミムより明らかに大きな個体で、生息しているモンスターを捕食するため大きな牙で噛み殺し腹の中に蓄積していた。
峯未雨はやっと自身に感電が回ってきて、HPも減っており、手を出せなかった。
オオキババラメシドミムは肉を欲していた。
人間の匂いに気づき、捕食するため、近づいてきた。
「これが私なりの罪滅ぼしだ」
[ニーグ・バム坦々砲ゲージluv.2]
鯱千がまず反応し、峯未雨を守るために専用バズーカを発射。しかし網より大きく意味をなさなかった。
「僕がやります。」
田芽助が、ジジベム一体を操作して、敵を足止めした。組み合わさってまとまっていたジジベムを再び操作してジガラットカムルの状態にした。電子移動網で足止めを測った。
しかしジジベムパワーを食らっても何のダメージもない事を確認した。
峯未雨を助ける際、意識の中で電気の感覚があった。まるで異世界の魔力の感覚がした。
電子移動の網というのはジガラットカムルでの攻撃手段で田芽助には別の可能性が浮かんでいた。本来、電子移動とはジジベムのように一方方向に移動する事だ。とにかく電気の砲撃をしようと考え、スキル能力に神経を集中させた。やはり魔力のようだった。電気が一つに集約されるように全身から一点へ電気を移動させていく。
時間稼ぎに近くのレバニーブルを3体憑依した。方向のみを意識した。田芽助は少しずつ盤面というものを理解し始めていた。
オオキババラメシドミムを3体のレバニーブルでは抑えられなかったが、捕食に時間を回すことが出来た。
「電気の砲撃が発射できない。まずい。集約した電気が散ってしまう。」
田芽助は自分の大切な人を思い出した。
「バムバム。オオキババラメシドミムさん。どうかこの想い、届いてください。」
電子が集約された砲撃がオオキババラメシドミムを消し去った。
青鈍色の猫がジガラットカムルの近くに現れ倒れ込んでいた。
「使うなら恥ずかしがらないでよ。変えるかもう。」
田芽助は自然と自分の身体に戻った。
鯱千は恥ずかしくて頬を赤らめていたが、スキルを過剰に消費した事に気付いた。
地下遺跡 8階
田芽助はスキルを使用するまでインターバルを要する状態だった。鯱千は峯未雨に剣技を教わりながら、順調に下の階へと進んでいた。
[level6 UP ↑]
「峯未雨ー。levelが上がったよ。」
「そうか。油断は禁物だ鯱千。田芽助のように力を抜いてはいけない。」
「力が入らないんです。僕も普通にモンスター倒せてるじゃないですか。」
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