第25話 モンスターハウス、峰未雨植物モンスターに襲われる

とにかく田芽助を捕らえるために、専用のバズーカの向きを変えながら、焦りながら10体のグラスピーズを捕獲し地面に落とし動けない状態にした。


田芽助がグラスピーズから憑依を解こうとしても網に捕まってしまう。


通常の凍結や捕獲スキルであれば憑依は解くことができるが、鯱千のレアスキルは精神干渉もする捕獲スキルなため、田芽助はグラスピーズのまま身動きが取れなくなっていた。


小刀を取り出し、網の中のモンスターを脅した。


「好きとか推しとか地下遺跡だからまだいいけど街とか人のいる場所では言わないで。あとね、田芽助君結局私の意見は聞かないんだね。もしこれから私の命令に従うなら網を…。」


峰未雨が剣で田芽助ごと網を切ろうとしたが、寸前で止め、網だけを裂いて解放した。


「ひえ。」


「こんな奴と張り合ってると思いたくない。馬鹿にされた気分。スキル奪ってやろうかな。」


峰未雨が横から鯱千を脅した。


鯱千の生返事に峰未雨は胸ぐらを掴み、何も言わずに離した。


「鯱千もつまらない冗談は今後やめて。」


「はーい。」


「鯱千さん、Yobaseリーダーを探しに行きましょう。」


その後、鯱千が前向きになり、峰未雨と田芽助も順調にスキルの感覚を覚え始めて地下遺跡を駆け降りていった。


地下遺跡5階


モンスターの群れが来るたび峰未雨が襲い掛かり敵に見つかってしまう。田芽助が足止めを行い、鯱千がすかさず網で捕獲して残った強敵を峰未雨に倒してもらうという戦い方で何とか乗り越えてきた。しかし、一番初めに体力を失ったのは峰未雨だった。


虫モンスターの麻痺、機械モンスターの電撃、それらの状態異常ダメージが峰未雨の身体に蓄積され、足が止まってしまった。レバニーラジブルの群れが襲い掛かって来た。


「峰未雨さん危ない。」

峰未雨が反射で身を躱し、緊張と汗を熱に変えて、流れるような剣技で敵を圧倒した。

すかさず田芽助がスキルで止めに入ったが必要ないと言わないばかりに全ての敵を葬り去った。


[level9 UP ↑ ]

[level 9 UP bonus 一時的なスキル 攻撃力、防御力増幅。]


足止めに徹している田芽助は、levelが6に上がり、鯱千も捕獲したモンスターを倒し、level4に上がっていた。


「峰未雨さん。一旦仮眠を取りましょう。level7を超えたあなたなら睡眠後10分でHPが3分の1回復します。私たちが見張っているので休んで下さい。あなたが今一番負荷を負っていてHPが低いです。」


峰未雨は田芽助の助言を断った。


「いや時間がもったいない。1階ではモンスターの攻撃を喰らいすぎたがその後は的確に倒せている。Yobaseさんは一つ下の階にいるかもしれない。」


遺跡に入った初めの頃とは違い、負荷を負い3分の1まで減った峰未雨と、鯱千の仲が悪くなっており田芽助が間を保っていたが時期会話が少なくなっていった。


しかし、田芽助にとっては複雑な気持ちだった。


「田芽助っち。どうやってテママリナネットを倒したの?」


鯱千は前よりもフレンドリーに話しかけてくれるようになった。


「倒したんじゃなくて承認してもらって。相手の数も攻撃も多くてゴーレムの攻撃を避けて、レバニーラフトフを倒していったら、上手く行きました。」


「DESSQ内じゃ噂が止まなくなっていると思うよ。私も田芽助君の活躍を近くで見てたいな。」


鯱千は田芽助の身体にハグしてエールを送った。

めちゃくちゃ嬉しい。こんなこと滅多にない。


しかし、峰未雨とはほとんど会話をしていないため田芽助の顔はあまり晴れていなかった。


6階に入ると印象が変わりモンスターが少数で出てくるようになった。峰未雨も今まで通り機敏に戦えていたため、これならこの階はひとまず乗り越えられそうだと思った。


2階と4階にもあった定期的に訪れる十字路の多い細い道は少し暗い。必要な場合峰未雨に負担をかけないため田芽助が灯りを持っていた。かなり暗い道が今までにあり10体以上であろうと峰未雨が行動不能にして他の二人でサポートすれば余剰だといえる程だった。


道が少しずつ暗くなっていった。近くの灯りが倒れており、壊れた遺跡のかけらが転がっていて踏むと音がした。


「プス」

前の暗闇から遺跡上部を伝い峰未雨の肩を突き刺した。


「いた。」


「あれ、峰未雨さん。大丈夫ですか?」


「峰未雨どしたん。あ、上。」


峰未雨の足にも同じツルが刺さり、リーダー不在のパーティーは統率が取れなくなっており、峰未雨の息が荒く、視界が狭まっている事に2人は気づいていなかった。


田芽助は浮かれていた。現在パーティーの中核を自分だと思い込んでいた。本当に倒れてはならない者が、戦闘に置いて全幅の信頼を置ける人物が敵に背を向けた。


「み、峯未雨さん。どうして。後方からの攻撃にも反応していたはず。」


田芽助は自分の不注意でまた仲間を危険に追い込んだ事で動けなくなっていた。


「田芽助君。峯未雨を守って。お願い早く。」


普段とは違う声色の鯱千に田芽助は我を取り戻した。


「はい。スキルを使用します。テママリナネットの3。」

しかし、テママリナネットの3は敵モンスターを完全な姿で3秒間視認しないと発動できない。


田芽助はスキルに比重をかけていた。自分の実力とテママリナネットの能力を混同していた。


脇腹を抑える峯未雨を見るのは、初めてだった。


「動揺するな。援護なしでも私は。」

無情にもツルが増殖し、峯未雨に纏わりついて連れて行った。


「駄目だ。行かないで。」


田芽助は、Yobaseと同じ悪夢が脳裏をよぎり、ひたすらに走っていた。鯱千もかなり青ざめており、動けなくなっていた。


暗い広間に着くと縦に長い大きな広間である事が分かった。

なにせ、モンスターのうめき声が多すぎる。

手前のみ灯りがつき、人間の来訪を歓迎していた。


ガーケイム・アトラ地下遺跡6階モンスターハウス


通常であれば9階以下にいるはずのゲラリオレミザリア、ゲラリオレミゾカ、レバニーブル、ジジベム等が獲物を探していた。


しかし田芽助はそれを視認できるほど心が正常では無かった。


「まただ。また仲間を失ってしまった。」

田芽助の心で蠢く中で黒い何かが視界を狭めた。こんな時ださえ理論的に今帰れば、鯱千さんを、鯱千を。顔が浮かんで曇りは晴れていった。


「まだだ。まだやれる事がある。」


視認できるモンスターはレバニーブル一体だった。

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