第24話 鯱千の過去、有名絵師は主人公

虫モンスターである、グラスピーズ


オオゴマダラの形から粉まみれの白い大きな尻尾が生えており、そこから周囲に花粉をまき散らす敵の動きを痺れさせ封じ込み口からベロを出し、敵を絞め毒ダメージで死に追い込むモンスター。


ジジベム。


ジジベムパワーを動力原にしており、それぞれが陽極、陰極を操作し合体し砲撃の方に敵を打ち落とす。合体したジジベム3体以上はジジベムパワーの電気性大きなジジベムパワーの電子移動の流れを大きな糸の形にして合成され、ジダカットカムルになる。これを触るとジジベムパワーの電気が周囲に張り巡らされ網のようになる。


グラスピーズが、花粉をばらまくより先に田芽助が前回の反省を生かし、テママリナネットの3を力技で封じ込み、峰未雨がその間にジジベムを合体前に機械の溝の核を剣で攻撃し裂き続け、電気を帯びたかのように素早く触れずに討伐していった。



すごい。鯱千は、自身よりlevelの高いモンスターを圧倒している二人の力を見てついていけないなと思った。まるで動画に登場してくる有名人を見るように呟いてしまった。



「まるで主人公だなお前らは。」


鯱千はいつしか動画を漁るようになった。


「あー。まだWoddatの出番ないのかよ。ちぇまああの化け狸でいいか。」


「鯱千ー。どうせまた部屋散らかしてんだろ。激辛担々麺買ってきたぞー。掃除してやるからドア開けてくれー。」


男は全員あほだし、女は全員キモイけど、この人たちはめちゃくちゃ面白いな。描くペンが止まってしまう。


7月、夏の日が熱くなり熱中症が叫ばれる中、部屋で3日間風呂に入っておらず、見たい有名人が夏限定でコラボして72時間連続配信をしていたため、現在4日目を更新しそうだった。


親は二人とも航空関係の仕事で外出する事が多く、基本的に一人だった。


昔からイラストを描くことが好きで好きな推しの絵を描いて専用サイトに投稿したこともあった。


ただ、サイトには自分よりも上手い絵が並んであった。一枚の絵を描く労力より、毎日ゲームして掲示板と、クラン間のコミュニティーでチャットする方が明らかに楽しかった。イラストを描くことは趣味でいいと思っていた。


自分の絵が売れたことは無かった。いいねも始めは8いいねくらいが平均だったのに、同じBL系の絵ばかり描いていたら見る人も減っていった。


DESSQ絵師


DESSQ内のリバーサイドシャトール王国で登場するダークエルフ、ゼレラミルラムのコスチューム、キャラクターを担当しました。


アカウントの名前よりも肩書に目が行った。


すぐ下のポートフォリオの一番上にゼレラミルラムの原画が描かれていた。


イラストも何枚かあり、描写も、色彩も、なんか全てが美しかった。


あまり、嫉妬心は湧かなかった。この人の作った絵を私は認めている。


おそらく絵が一流になる程、ひたすら努力したのだろう。見てすぐに自分の描く絵とは違う。イラストの中のキャラクターが動いて選ばれに行っているようだった。


「この人も細部まで綺麗なイラストみたいだ。」


それなら私は脇役でいい。


「またクランの奴らを私のアートを見せて美的センスで驚かすか。」


地下遺跡3階


「かっこいいぞー。お前ら。私は峰未雨の言う通り今回は静観させてもらおうかな。」


鯱千は自分のレアスキルが地理的不利だったため、峰未雨と田芽助に委ねる事にした。いつの間にか峰未雨の陰に隠れる事もやめ後方に下がっていた。


峰未雨が鯱千が集中を解いていることに気づきYobaseの代わりのように指示を出し鯱千を急かした。


「ジジベム合体前に捕獲しろ。合体したモンスターの電気の網に捕まるとまずい気がする。今のお前のスキルでもできるはずだろ。」


鯱千は峰未雨の指示に従って、すぐに専用バズーカを設置。発射準備をした。

「バムバム。」


目標をカーソルで捕捉。峰未雨から離れて空中を電気の磁力で移動しているジジベム4体に狙いを定めた。


「ジジベムたん…。」


鯱千はジジベムの見た目はかわいいと認識すると思っていた。


[ニーグ・バムタンタン砲ゲージluv.0]


「あれ、なんで、なんで発射しないの。」


鯱千は予想外のスキルのゲージに戸惑っていた。

ジジベムが合体し始めた。峰未雨はすかさずもう一度、鯱千を背中を見せながら焦りながら指示を伝えた。


「鯱千。合体する前に早く捕らえろ。」


峰未雨の指揮は失敗に終わり、ジジベム4体が合体し、ジガラットカムルになった。

見た目が、黒い面とジジベムパワーの見える光の面が交互に織り交ぜられた四角垂が上下左右の4方向に並び電気の網を張り巡らせた。


峰未雨はその網に捕まり、感電ダメージが入り始めた。


「いたた。くそ鯱千。しっかりしろ。このままじゃYobaseのいる所までつかないぞ。」


鯱千は半ばこの二人を置いて逃げようかと思っていた。しかし、冷静にこの二人がこのDESSQの現環境で優位な力を持っていると分析した。


「ねえ。もうレトファリック置いて第二サーバーに行こうよ。」


「ふざけてんのか。鯱千。井戸の中で砲弾作ってるときレトファリックの事あんなに仲間みたいに語ってたのにな。」


「仲良しでやっていける程このデスゲームは甘くないと思う。初日でロードアーム王国も、エレミル王国も廃墟になったんだよ。それにYobaseさんも消滅したんだ。」

鯱千は峰未雨がYobaseの事を一人でも追いかけると思い、少し諦めながら話かけていた。


「私はリーダーが彼じゃないとこのチームにはいたくない。」


「強いからって、主人公だからって言い分が通りすぎじゃない。」


鯱千は田芽助に目をやった。


「田芽助君。現状を理論的に把握できる君なら私の意見も分かってくれると思う。私たちが生き残ることがYobaseの望んでいる事じゃないの。」


田芽助は、グラスピーズの群れを足止めするために集中していたが、意識を一体のグラスピーズに集中させ、鯱千に想いを話し出した。


「はい。分かります。今戻って第二サーバーに行くことが賢明で着実で最善です。でも鯱千さん。あなたが笑えなくなってしまうのは嫌です。あなたは僕の推しで好きです。今現在此処にいるあなたが僕の生きる目的です。」


鯱千が田芽助の言動に戸惑っている間も田芽助は

「好きです。推しです。」と叫び続けており、始めて男として見た感情も恥ずかしさに変わり、恥辱になっていった。


怒りが力となって、鯱千のスキルが開花した。


「恥ずい。恥ずいスパークボルト。グラスピーズ田芽助たんへ。」


[ニーグ・バム坦々砲ゲージluv.3]


「乱獲して黙らせて。」


ゲージluv.3のニーグ・バム坦々砲は、網を複数発射するスタイルだった。

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