第21話 レトファリック vs 始発のカード決着、白色化した道
『レトファリックは自分のした発言が』変『だと気づき特別なモンスターの心を傷付けてしまったことを受け入れられずモンスターに逆ギレした。』
「『お前のせいで意識が持っていかれて気味が悪いんだよ。この地下遺跡で同じようにお前のスキルにかかった奴の気持ちがよく分かる。』」
『彼はメニュー画面からアイテムを開きモンスターから得た逃亡用の血のりを使用し4つの壁にばら撒いた。』
『「むしゃくしゃする、人間はモンスターを討伐より卑劣に騙し傷つける。」』
4つの壁全てに血のりを一面に叩きつけ、剣を使い傷をつけ出した。
『「ゴブリンはおそらくもう死んだ。彼らの実験と称した高笑った声を私は忘れない。』」
苔を根元から作業用のナイフで見えない程に抜き取った。怒りが収まったのかレトファリックが目を覚ました。
「怒りは収まったのか。これはアイテムの血のりを使用したのか。」
レトファリックは現状を把握するため左側へと移動しながら壁を見て動揺していた。
しまった。まさかこんな隠し玉があったとは思わなかった。壁の見た目が考察できないほど荒らされている。話を聞いて分析しない限り偽装の壁を突き止める事はできない。
壁を壊そうと残り一つしかない簡易爆弾を取り出した。
「簡易爆弾は予備があるしここで製作もできる。お、お前は前に進むべきだ。俺も危険だと思えば体が動かなくなる。同じ穴の狢だ。このままじゃ旅客機も見れないまま行き止まりだぞ。」
モンスターからの返事が無かった。
レトファリックは動揺した。この壁を砕いてもこのモンスターは心を開かない。彼は貴重なカードに該当するモンスター。承認を得てスキルを手に入れたい。
『私が実体化しないのはお前ら人間なら俺を討伐してスキルを奪うと考えたからだ。何があっても人間の下にはつかない。』
レトファリックは止まった。答えも分からない上、カードに該当するスキルも手に入らないのか。今一度理解を求めないと。交渉が上手くいかなければ、目的が達成されなければ壁を壊した所で意味がない。
「旅客機の作り方に関しては現実世界にいた人間の方が詳しい。スキル上人間の手を借りなければ作りたいものも作れないんじゃないか?」
『仕方がない。私はカードモンスターだが、あのゴブリンには思い入れがある。モンスターというだけで扱いを変えるお前たちの事が信用できない。』
レトファリックは冷静に態度を変えない寄生したモンスターの声を聞き焦り、事実から説得する方向に変えた。
「ゴブリンはもういない。敵であるモンスターに同情する気持ちは俺にも分かる。だがそのゴブリンを弄んだ人間は第二サーバーにいる。」
わからないがおそらく人間ではないだろう。第一サーバーにしかプレイヤーはいない。
『私はお前たち人間の力にはならない。さっさと壁を壊して帰ればいい。』
レトファリックは深呼吸をした。彼は先ほどの絵を見てモンスターに伝えたいと思いが体を突き動かした。彼は壁の前で頭を下げた。正直に弱音を吐露した。
「ここ11階なんだ。お前のスキルがないと帰れそうにない。癪に触ったのであれば謝る。」
『それはなんだ。』
「土下座だ。」
頭の中で、あの部屋の本を読んだ内容、箱を開いてみた絵、そして先ほどの壁の模様を思い出した。
「人間が旅客機を作ろうと思った理由もお前と同じなんだよダイヤの3。空を飛びたい。鳥のように自由に飛びたいと思ったからなんだ。」
『お前らも同じなのか。』
「そうだ。俺もお前も同じ空を飛びたい欲を抱えたモンスターだ。」
『壁だ。私が作った壁のみを破壊できたら力を貸してやる。偽装した壁を見破れないならお前にスキルを譲渡しても旅客機は作れない。同じ想いを抱えた人間だと思わない。』
レトファリックは瞳に光がともった。8つの壁をくまなく調べ始めた。
見つけろ俺。あいつの考えが変わる前に偽装した壁を探し出すんだ。
同じだ。全く同じ壁が4つ並んでいる。あいつが焦ってこの状態にしたのであれば、この4つの壁の内一つが正解の壁だ。
彼は壁を探そうと調べていたが固まった粘土の壁を見て思わず感心した。
「よく見ればこれどこで覚えたんだ。石の壁ならまだしもこの壁は俺でも作り方が分からない。流石だ。」
『お膳立てしても条件は変わらない。』
レトファリックは会話してくれたことに安心しながら壁を一通り見て考えざる負えなくなった。
「やはり一つの壁を見つけるのであれば意識がお前に伝わってしまうな。まず、8つ目の壁はないだろう。端にはしなさそうだと俺は思った。では7つ目か、6つ目か、5つ目か。ノスラバリウレムが通った後とは思えないな。」
レトファリックはまたモンスターとの会話が途絶えた事に少し焦った。
「なあ聞いているか。」
『結論を出せ。』
「よかった。お前が俺の意識を乗っ取ったタイミングが5つ目の壁を見る手前だった。そうであるならば、5つ目は無いと俺は思う。」
レトファリックは2つ目の壁に向かって歩き出した。
「もしかしたら2つ目かもしれない。この絵は模様だが見ていて空に対する羨望を感じる。毎度作るたびに描いていたかもしれないな。しかしお前は旅客機から目を逸らしていた。絵を盗まれても嘆願しなかった。」
「では一つ目かもしれない。ゴブリンを人間にもてあそばれたという推測があるお前は傷を抱えていると言っていい。先ほどまで本物だと思っていた壁も怪しくなってきた。」
レトファリックは意識を奪われた時を思い出すように歩いていた。
「やはり正解は意識をとられた5つ目以降だと思う。お前が、焦るタイミングから俺の進んでいた速度を考える。」
一歩ずつ進み、道を進み続け決めかねていた彼が止まった。
「8つ目の壁を壊す。特別なモンスター聞いているか。」
『……。』
応答がないことは彼は仕方がないと思った。
「やっと、お前というモンスターが分かった。意志が強く人間のような慈しみもあるモンスターだな。」
壁から離れ簡易爆弾を力強く投げた。
壁は壊れ、道が続いていた。
「意志があまりにも強い。7つ目の壁から手前はお前の意志が許さない。約束に二言はあるか。」
『壁を見て偽装だと見抜けなかったからまだ貴様を認めはしない。だが力は約束通り与えよう。』
[おめでとうございます。固有スキル、不動赤鉱鳥の意識指示を獲得されました。使用の際にはNon Player Clown FONUMEES SKILL 〔モルホデフタの3〕を唱えて下さい。トランプカードではダイヤの3です。このカードの意味は〔地始まり〕です。]
ガーケイムアトラ地下遺跡 11階
「向こうの道はなんだ。遺跡の壁の色が白色化している。範囲外か。」
「それは違うよ。」
レトファリックは壁を壊した先には、モンスターのいない道が続いていた。灯りが一切なく遺跡の形状も同じだった。
「なあモルホデフタ。お前この先に何があるのかを知っているのか?」
「…知らない。弟子は喋りかけるな。」
「…ならいい。作戦通り上の階のモンスターに寄生していくぞ。」
しかし上の階へと寄生を始めるとスキルの都合上容易に下の階には降りられない。
レトファリックは横に続く奇妙だが害のない道から頭が離れなかった。
「…なあホラノイノスラバリウレムの開けた穴の先になんで暗い道があるんだ。」
「…新ボスと前ボスの部屋。」
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