第20話レトファリック vs 始発のカード 今の旅客機と8つの壁
レトファリックは飛行機の絵をアイテムから取り出し、自分の目に映るように見せた。
「まあお前はこの絵が好きだろうな。何せこの紙だけ綺麗に保管されている。悟らせず壁を築く几帳面なお前なら大事なものを箱の中の一番下にするだろう。」
『そうだ。嫌な予感はしていた。……。』
「今から現実というものを教えてやろう。飛行機のこのタイプは皆無になった。新型が出たが、料金が高い。お前が日本人と入れ替わったところで乗れない。詳細を話す。航空便が発着してから着くまでの時間を短縮するようになったが、金銭面から航路が一つずつしかなかった。次第に」
「ゴゴゴ。」
『おい。ノスラバリウレムが来てるぞ。』
「航路を増やし、製作コストも考えて新型旅客機で統一しようという流れになったが特許を先に海外に取られた。製作に必要な電池が少なくなっており競争が激化。結果、旅客機を確保するために使用したお金が高くて日本だけ旅行便の料金が高い。」
「ゴゴゴ。」
『ノスラバリウレムが、最短でこちらに向かってきている。』
「海外航行費用は、20000ドルからだ。日本円にして3000000円。国ごとの経済成長率に大きな差が生じたことで海外式の渡海交通手段はほとんど高くなってしまった。その上、お前は実際に空を見ても飛行機を視覚できない。」
(『意識に語りかけるか。このままこいつが死ぬならまだしも、いや、こいつの持っている情報をもらってからにしよう。』)
「いたた。あれ、こんな所に壁があっただろうか。」
(『馬鹿だなこいつ。この壁は元々備え付けられているものだ。惜しいな。右側の壁を壊せば道が見える。』)
「なあ頼むから話し合わないか。モンスターの音が聞こえて怯えているんだ。この壁なのか。なあ頼む教えてくれ。」
(『……。はは。このまま眺めておこう。』)
「取引をしよう。俺は君の器用さを高く買っている。君の下で作りたいものを私が作ろう。君が私や別のモンスターを使い旅客機等作っても構わない。」
(『何を言っているんだ。私の方が優秀だ。壁を見て違いが分からないことが証明だろう。』)
Yobaseはモンスターからの応答がないことを確認して彼の性格を感じ取っていた。
「お前は強情だな。一度落ち着いて耳を澄ませ。さっき接近していたノスラバリウレムの音が遠ざかっていくのを感じないか。なぜだか考える機会をやろう。俺に教えてくれてもいい。」
(『……。お前も俺と同じように壁を築いたのか。動揺を誘っているな。』)
「ああ。お前の考えている通り罠はあまり作っていない。壁を築いた。あの化け物相手では、惑わすしか逃げおおせる方法がないからな。」
(『……。しまった。どうやら私は今閉じ込められているらしい。だが私は動けない体にならなければ倒す事が困難だ。』冷静に考えろ。私が背後の敵に3秒以上次の標的を視認していれば私にダメージが入り、姿を出す事はない。)
「お前がもしアップデート前からこの地下遺跡にいるんだとしたら、俺の考えないようにしてることが分かっているかもしれない。」
(『なんだ。また取引か。人間など信用できない。アップデートしていく度人型NPCでさえ同じように見えていく。』)
「お前に聞きたい。何のためにこの地下遺跡にいるんだ。生息地域というシステムの中で動いているからか。それともゲームマスターとの取引のために画策しているのか。」
『……。』
「どちらでもいい。お前の目的はこの大切な絵に答えがあると思ってな。返しておこう。保管用の箱も新調しよう。」
『……。』
「この目で旅客機を見たい。そして作りたいのであればお前はこの壁の先に行かなければならない。システムの中に囚われ願いが叶うことも無く他の人間に殺され願いのまま終わるといい。」
(『…うるさいうるさい。』)
「人間の力を借りないのであればシステムという壁を壊すんだ。」
感情的になったYobaseに寄生したモンスターは思わず会話をしてしまった。
『…その、その壁の先には何もねえんだよ馬鹿。』
「おお。会話する気になったか。この壁ではないのか。」
Yobaseは何かに気づいたような素振りを見せた。
「では右だな。」
『……。なぜだ。』
「問題は7つだろうか?向こうまで続く壁の内のどれかだな。さてお前の長年の力作とやらを拝見してみよう。もし当てられればお前の実力をノスラバリウレムを惑わした俺が超えたことになる。偽装できていない壁は意味がないもんな。」
(『最悪の気分だ。自分を否定された感覚だ。何があってもこいつにはカードの承認しない。』)
「よし。ひとまずこの4つの壁で考察しよう。別に話さなくてもいいぞ。俺が当てるところを見ているといい。」
4つの壁は同じように見える。苔の生えた位置もばらばら。削れた部分も見えない。
「光が差し込むなんて初歩的なミスは無さそうだ。難しいな。一つ目には傷が目立ち、二つ目には絵が描かれている。三つ目には何も無く、4つ目の壁は血が付いているな。」
レトファリックは考えた事をあえて言葉にしていた。
「お前は器用だが、繊細な部分があるな。自分の壁に傷をつけるなんて事はしなさそうだ。2つ目は鳥の模様が星々のマークに向いている絵が描かれているな。模様がついていて目立つがそう思わせている可能性も十分あり得る。そう仮定して考えれば思慮深いお前は自分の偽装に何もしないなんて事はしないのだから3つ目は除外しようかな。血が付いているのもお前らしくはない。俺の推測を言おう。この4つの壁全て元からある本物だ。そして向こうの4つの壁の内、おそらく植物等が生えている壁が、本物だと思わせる思慮深いお前の作りそうな壁だ。」
『……。お前は』
「お前は見栄を張るが案外優しい気がする。被験体となって第二サーバーにいったゴブリンのことを何度も気にかけているから人間を信用しないと決めたんだろう。」
『お前は何も分かっていない。』
レトファリックは推測に基づいた答えの壁がないか探しに移動し始めた。
「かなり頭のいいモンスターだ。ほとんど姿を現さないなら実体は弱いと思う。『しかし、私はお前の事を見下している。』」
特別なモンスターは焦り、短時間のみ使用できる強化されたスキルで何度も意識に語
りかけ制御を始めた。
Yobaseは全身の感覚をモンスターに委ねられ意識のみとなり状況が逆転した。
「『私はお前がモンスターである限り討伐する。』」
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