第15話 田芽助vs北極のカード決着、Yobase遭難
田芽助が一時的なスピードを利用した地を蹴るような動きで2体のレバニーラフトフを一撃で倒した。
「弱い。防御力が低いのか。」
群れは身の危険を感じ、惑わせるように動いた。しかし1体のレバニーラフトフは一瞬静止し、ゴナールウォールド平原に向かって走り出した。ウェイターボガーディアンの反応も以前と同じようになっていた。
彼は辺りを見回してレバニーラフトフの群れ6体の位置を確認。
田芽助は先程のモンスターのことが気になっていた。口調は荒いが、優しい事を肌感で理解した。
彼はなぜだかレバニーラフトフが逃げて行ってもモンスターの気配を感じあまり焦らなかった。
彼はその内の3体、ゴナールウォールド平原の反対、インスターボの森に向かっていく3体に目を向けた。
レバニーラフトフの生息域とは別の方向に動く3体の中に間違いなく憑依したモンスターがいると判断した。
レバニーラフトフは早かったが、彼の動きは無駄がなくなっていき抵抗を受けぬよう低姿勢で走っていた。レバニーラフトフにも逃げる算段は合った。
「そんじゃあばよ。見誤ってた。お前は強いわ。」
レバニーラフトフの一体がそう話すと後ろ約10mのレバニーラフトフに気配が移った。彼はそれを察知し意図を読んだ。
「甘かった。確かに自惚れていました。反省だ。」
彼は自身を顧みてまもなく、レバニーラフトフに向かって走り出した。
田芽助の中では既に憑依には範囲があり、あと何度か憑依が移ってしまうことも予測していた。
例え峰未雨でも追いつくか分からない状態だったが、彼は走った。
なぜだか追いつくような気がした。今の自分の本気で彼は走った。
草むらを抜け元に戻ると、さらに向こう側のレバニーラフトフに憑依を移った事を確認した。
ようやく4mまで縮んだらまた離される。それでも彼は走り続けた。
ゴナールウォールド平原で先にばてていたのはレバニーラフトフだった。
早朝、平原の大地にモンスターが寝ころんでいた。
朝日が雲の隙間から差し込み、田芽助とレバニーラフトフを照らした。
「くっそ。こんなゴミに負かされるなんて最悪だ。」
「はああ。まだまだ走れますよ僕は。でも楽しかったです。成長できた気がします。」
そういうと田芽助はレバニーラフトフに近づいていき足を心配して容態を見ていた。あの頃の先生のように。
「それでも僕の勝ちなんで倒させてもらいます。カメレオンを知っているならスキル、持ってるんですよね。」
モンスターは田芽助の息を感じ温もりのようなものを感じた。
「いいや。承認すればいいから。とりあえずそれで勘弁してくれ。」
モンスターは光を出し、彼の前から消えた。
[おめでとうございます。固有スキル、多憑依獣の転転移を獲得されました。使用の際にはNon Player Clown FONUMEES SKILL〔テママリナネットの3〕を唱えて下さい。トランプカードではダイヤの3です。このカードの意味は〔北極の海〕だ。]
モンスターはなぜか背中辺りに戻っていた。
20cmほどの大きさで黄色い羽根付き帽子を付けた青鈍色の猫が歩いてきた。
「スキルの使い方教えてやるよ。」
ガーケイム・アトラ地下遺跡
何階かも分からない遺跡の近くで彼は暗い部屋の隅に隠れていた。
片腕が焦げて負傷していた。痛みを感じないことが不思議だと思えるほどだった。
ホラノイノスラバリウレムは石の壁のような腹の中だった。
1時間前に遡る。
叫び声を出しながらホラノイノスラバリウレムとともに遺跡の近くに落ちていった。
穴をいくつも抜けてたどり着いたことをYobaseは腹の中で感じ取り気を失いそうになった。
「なんだ、こいつ。消化ダメージをまだ受けてない。」
ホラノイノスラバリウレムは石の顎で出来ており中も石の空間なため消化ダメージを受けていなかった。かなり時間が経つと、石から肉体へと変化し消化ダメージが入る。初心者の多い地域のアップデート後のモンスターは、プレイヤーを倒すまでに時間がかかるように設定されていた。
「くっそ口が開かねえ。」
20分後パーティーメンバーの六衛田芽助から連絡が来た。
[こんにちは、squiです。たった今、プレイヤーRokuei tamesukeがテママリナネットの3を獲得致しました。スキル欄をアップデートいたしますのでご確認ください。]
スキル画面の長方形の空白が8つある内の右上から一つ下の欄にトランプのダイヤの3が現れた。
「田芽助、凄いなお前。カードのスキルを手に入れたならあいつが俺を助けに来てくれるかもしれない。」
しかし、30分間腹の中で適した武器やアイテムを使用しても無駄に終わった。
そろそろまずいかもしれない。この俺手製の簡易爆弾を一か八か使うか。でも二個しか持ってない。しまった。田芽助に同情して渡さなければ良かった。
ホラノイノスラバリウレムの中は座る分には広く意外と快適だった。
「まあ自分一人じゃあどの道帰れそうにないならここにいたほうがまだ…うわ、」
カバリウレムは捕食対象を見つけたのか突進していった。
彼は腹の中でただ動かないことしかできなかった。
「口を開いた隙に出てしまえばこっちのもんだ。」
ノスラバリウレムは口を大きく開けると彼は暗い部屋に異様な数のモンスターの気配を感じた。勢いで押し出されそうになったものの彼は怖くなり意地で口の中から動かなかった。ノスラバリウレムは自身の口の中にまだ獲物がいることに動揺し再び辺りを周り助走を取った。
「なんか、死亡フラグ感じたわ今の。モンスターみんなで美味しく頂きますってか。ふざけんな。」
「ゴー。」
鼻から空気を出し前回よりも早いスピードで突進していた。
「田芽助君が偉業を成したんだ。僕も頑張らないと。」
Yobaseは危機が迫ると基本的に動かない性格だった。
友人とバンジージャンプをやる流れになった時。
海外の絶叫必須のジェットコースターに乗る流れになった時。
例え、飛行機での待ち合わせでも明らかに予定に遅刻している時。
彼は動かない。何も見ない。ただ何もしない訳ではない。
面倒くさがりが故に彼は可能な限り最善をとる。
「鼻の穴が少し広がったな。お前。」
大きな鼻の穴から彼は簡易爆弾を投げた。
「ゴゴゴ。」
レトファリックの狙いは目を見えなくさせるか、この地下遺跡のボスモンスターらしいこいつに周囲のモンスターを全てすり潰してもらう事だった。
鼻の穴を抜けた辺りで爆発が起こり、彼の狙い通りホラノイノスラバリウレムが壁に向かって突進し出した。混乱しているようだった。
「分かった。さっきの部屋お前が捕食する為に保存してる死体のモンスターだろ。肉食動物からの血があったのに声が聞こえなかった。」
彼は手に爆弾を片手に上機嫌になっていた。
「お前、この地下遺跡で最強なんだろ。最強ってのも大変だよな。大抵一体で行動しなくちゃいけねえ。他のモンスターが何を考えてるのか分かるか。」
前が見えなくなったホラノイノスラバリウレムの周りにモンスターが集まってくる音がした。
「キエエ。」「じじじ。」「ガルルル。」
「ボスをどうやって倒して縄張りを広げるかって考えてんだよおお。」
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