第12話レトファリック一行の論戦ありのパーティー会議

「まず、鯱千。あなたは信用できない。メール画面にもひどい書き込みがあった。エレミルに何の恨みがあったのか知らないけど、正式にNPCになった元兵士長の顔を晒してざまあみろなんて。私はパーティなんて縛られずに敵に向かっていきたいから無理。六衛田芽助はYobaseを殺したからなんというか、駄目だし嫌。」


峰未雨からリーダー適正を否定され田芽助が少しムキになった。


「駄目ってあなたも十分ひどいです峰未雨さん。元はと言えば峰未雨さんが、Yobaseさんがレトファリックを助けに行こうって話したから、鯱千さんや僕も助けに行く流れになったんじゃないですか。ステータス確認してYobaseさんのレベルじゃ外は危ないって鯱千さんは思ってたみたいですよ。」

レトファリックは田芽助を褒めた。

「田芽助、君は信用できる男だな。あの峰未雨さんにここまで言えるとは。」


「あ、ありがとうございます。」


「だが他人に責任をなすりつけるのはよくない。」


田芽助は申し訳がなかったと謝罪した。

また、峰未雨は鯱千と自分の扱いが異なる事を察した。


「鯱千には何も言わない。推しってことか。はあ。Yobase、話を進めて。」


レトファリックは今パーティの持っているスキルを整理し出した。


「ああ。まず各々のスキルから確認しよう。スキルを持ってるのは峰未雨と鯱千の二人だ。まず峰未雨のスキルは2つ。


[タイジットカーフ]

一時的に跳躍力があがり、前方向にタイジットカーフが現れ敵を噛み砕く。前方向に現れたタイミングでカーフィを呼ぶと自身と融合する。


[クロウメハカアマル]

自身を守る黒い梅模様の袴の鎧が現れる。防御力はまあまあ高い。」


Yobaseは峰未雨の説明を終え、鯱千の説明に移った。


「次に鯱千のスキルは1つだけどレアスキル。


[ニーグ・バム坦々砲]

かわいい絵になりそうと思った人の視界に移り重く最新、青色の専用バズーカを放つと敵を捕獲できる。相手の力が強いと逃げられる。」


レトファリックは田芽助の背中を力強く叩いた。


「ふぇ!」


「まず俺たち男組は弱い。この擬態するスキルは主に逃走用で実戦じゃ不向きだ。前衛と後衛に分けるにしても僕たちは基本お前らの後ろを半歩下がって攻撃する。これが安全だ。」


「ダッサ、嘘でしょレトファリック。カードのスキルなんだから色んな使い道があると思うよ。アイテムを色々いじってたしそれで戦えばいいいっしょ。峰未雨さんは前衛で私は後衛、田芽助とレトファリックは剣とか近接武器しかないから前衛。はい、これで決まり。」


峰未雨は鯱千のYobaseに対しての物言いに苛立ちを隠せなかった。


「ちょっと黙ってくれない。調子に乗りすぎ鯱千。今言い方イラッとした。リーダーが私一人で前衛が出来るって言ってるからそれでいい。」


峰未雨と鯱千が喧嘩しだしたので田芽助が救済に入った。


「落ち着いて下さい。鯱千さん、峰未雨さん。私は前衛の一番前でいいです。頑張ってlevelをあげます。」


峰未雨の矛先は田芽助に向けられた。


「私の前には立つなよ。オタク。」


鯱千は峰未雨とは違い田芽助を応援した。


「頑張って。田芽助くん。できればこの女より強くなって。」


レトファリックがいがみあっている状態を鯱千をビンタして静止させた。


「いたいっ」


「これからは僕が手を叩いたら話をするから聞いてほしい。」


「いいか、やはり冷静に考えると俺たちのlevelは低い。だが俺は峰未雨と同じ前衛でいい。田芽助は俺と固まって動いたほうがいいが、まあ後ろでもいい。」


「それはだめ、」


死んだらくれるって約束してくれた食料がもらえなくなっちゃう。


「分かりました。私も前衛でいいです。」


レトファリックは小さく頷いた。


「決まりだな、鯱千以外前衛。上手く鯱千を守って動く。じゃああと40分の内にスキル入手に努めたい。田芽助、行こう。」


「私はここにいるよ。無駄にリスクを負いたくないし。」


「いいやお前のスキルは使える。手伝え。」


峰未雨は視線で殺気を伝え、指示を出した。


「分かったよ。」


ゴナールウォールド平原


広い草原だが、森や遺跡、遠くに川が流れており、山も見える。初日の夜はあまり寝れなかったが、ひんやりとした風が彼らを覚まさせる。

「作戦通り行くぞ。鯱千頼む。」


「おけ。」


「鯱千。」


「…」


[ニーグ・バム坦々砲]


彼女のこの巨大なバズーカは普通のアイテムも中に投入出来る。レトファリックが洞窟で入手した大きな石を収集、硬い石で砕き丸型にしていた。自分のために爆弾を作ろうとしていたものだった。


大きな玉を発射したは良かったが、敵の狼モンスターのレバニーラフトフには当たらなかった。レバニーラフトフは濃い青色でかなり眼と鼻がいい。例え後ろ方向からの攻撃でもこのモンスターは当たる手前で反応して避けられる。


「すまん。まだ玉が未完成だった。丸石の砲撃玉とアイテムでは表示されているのだが。」


アップデートと同時にアイテムを改造した場合、その出来によってアイテムを何段階かに分けられるようになっていた。彼の作った砲撃玉はまだ1段階目、未完成の代物だった。


[タイジットカーフ]

目の前にタイジットカーフが現れ、敵を視認した。


「ねえ、そっちに懐いてどうする」


タイジットカーフはオスだった。


峯未雨のことを男と勘違いして鯱千に擦り寄っていた。


「今、邪魔しないで。ったく作戦変更で玉取り替えんの面倒くさ。元々出来なさそうだったし。まじでだるいから絡まないで。」


鯱千は機嫌が悪く、足であしらわれたタイジットカーフはとぼとぼと峯未雨のもとに帰ってきた。


「おいでカーフィ、名前は舞雲寺ちゃん。」


タイジットカーフは峯未雨の優しい眼差しを見て光となり融合した。


タイジットカーフの耳と尻尾そして足の裏にも肉食動物の体がつき、かなりの身体能力を手に入れた。スキルに慣れることでさらに進化する。紺色と白色の縞模様が耳と尻尾に生え、彼女は獣人のような見た目となった。


「すごいこれ、めっちゃ飛べる。なんで今まで使わなかったんだろ。」


峯未雨にしては珍しく戦場で屈託のない笑顔を浮かべていた。


[タイジットカーフ]


このスキルは当人の身体能力に比例して強くなる。本来であれば子供でメスのタイジットカーフなら2mが最大だが、彼女は4m以上飛んでいた。


「耳いらない。鯱千。あそこのレバニーラフトフを半殺しにしてくる。だからさ、なあ鯱千。」


峯未雨は鯱千に目で命令した。


「分かった。」


ええとイラストになりそうなかわいいモンスターいないかなあ。

ウィーブローズシープの群れがいた。始まりの草原の進化系だった。体に棘があり、突進されれば継続ダメージが入る。


「バムバム。」

[ニーグ・バム坦々砲ゲージluv.2現最大値]

「ええと、名前はウィーブローズシープたん。」


名前を言わなければならないらしい。


「捕まえてあげる」


専用のバズーカから大きな光の玉がウィーブローズシープの群れの方向に飛んでいき当たった。4体ほどが捕まっていた。

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uv.2は威力、網の強度が少し落ちるが、網の直径が広くなり最大5体のモンスターを一度に捕獲出来る。


峯未雨もレバニーラフトフを数えられるだけでも5体程動けない状態にしていた。


レトファリックも峰未雨と鯱千に負けないようにスキルを使用した。

「凍結の牙。」

コールドメスシャークの凍結の牙に化けて大きな矢のようになり、敵のレバニーラフトフを凍結させていた。

「これで討伐完了、田芽助からlevelあげていいぞ。level低いと危険だからな。」


「あ…ありがとうございます。」


「峰未雨、鯱千、助かった…お前ら。」


レトファリック、田芽助は彼女らの捕獲したモンスターにとどめを刺そうとしていた。

レトファリックがレバニーラフトフを倒してlevelをあげていたが顔は晴れていなかった。

理由は田芽助は止まっていたからだ。

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