第46話 レトファリック、路上授業を見学する
レトファリックはリバーライド・シャレット・ビーチに戻ってきた。
メヌカモ先生は海で遊んだりはせずビーチチェアに座り配信を見ていた。
「よし思いついた。古文の文章風にして愛を伝えよう。」
レトファリックはメヌカモ先生を見つけると近づいた。
「メヌカモ先生、チケットを入手出来ました。」
メヌカモ先生は思いもよらぬ朗報に驚いた。
「それは本当か。どうやってチケットを入手した。見せてくれ。」
メヌカモ先生に頼まれたのでレトファリックは状況説明を行なった。
「チケットは私です。カメレオンの7。」
彼はトレミーのライブチケットに擬態した。
「これは、レトファリックくんが消えて突然チケットが現れた。そうかチケットに擬態できるのか。」
チケットは再び人間の姿のレトファリックに戻った。
メヌカモ先生は面白そうな表情を見せた。
「なるほど面白い。ライブ当日はチケットになってくれるという事か。」
レトファリックは状況が伝わって嬉しくなった。
「はい、そうです。チケットは入手しました。だからどうすれば教師になれるのか。教えてください。」
「ああ教師になる方法を説明しよう。」
メヌカモ先生はレトファリックの願いに応じた。
「方法は2つある。一つは教師の推薦を得る事。シャトール王国会議にて影響力のある第1位から第7位までの教師から推薦をもらえれば確実に教師になれる。
2つ目は生徒を35名集めて試験に挑む事。生徒に署名を書かせてシャトール教育対策部に書類を渡せば教師になるための試験に応募できる。合格すれば正式に教師になれる。通行人署名を書かせるだけじゃ足りない。」
レトファリックはその言葉を聞いて疑問が浮かび質問した。
「もしかしてNPCである私たちは教師からの推薦を得られないという事ですか。」
メヌカモ先生は大きく頷いた。
「ああそうだ。私も2つ目の方法で教師になった。君も頑張りたまえ。」
レトファリックは早速生徒探しを始めるつもりでいた。
「分かりました。生徒を探します。」
メヌカモ先生は彼を引き留めた。
「ちょっと待て。生徒を集めるためには路上授業で集める必要がある。路上授業っていうのはストリートピアノや路上ライブと同じように路上で授業をして生徒やお金を集めること。」
レトファリックは興味深いと感じた。
「路上授業か。」
メヌカモ先生はレトファリックの姿勢に感心した。
「どうだ。見ていってみるか。」
メヌカモ先生に連れて行かれて街の一角で行われている路上授業を見学した。
「さあさあお立ち合い、戦闘魔法ファイアクレーの使い方、覚え方を教えるよ。」
「寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。魔道具エンシェントナルの使い方を解説するよー。」
「ポーションの使い方を授業するよ。どうか見ていってくれ。」
街の至る所で路上でまるで商売のように戦闘魔法や魔道具、ポーションの使い方を解説する授業が開かれていた。
メヌカモ先生は思い出にふけっていた。
「懐かしいな。俺もここで路上授業をしてた。35人集めるのも苦労した。なんせNPCだったからな。」
一通り路上授業を見終わえて元いたビーチに戻っていた。
「このビーチいいだろ。夕方の海って夕日が海に反射して凄く綺麗なんだよな。ずっとここにいたいって思うよ。」
レトファリックも久しぶりの海に感動していた。
「僕にとってはこの海が懐かしいですね。」
人魚だった頃を思い出し思わず涙が出ていた。
レトファリックは涙を手で拭った。
「どうやらお前も訳ありのようだな。」
レトファリックは本当の事を打ち明け始めた。
「僕、実は人魚だったんです。だけどアカウント作成の時に仮NPC専用アイテムをクリックしたら人間と同じ扱いを受けてしまったんです。」
メヌカモ先生は彼を可哀想だと思った。
「それは災難だな。」
話をしているとビーチで異変が起きたのか、エルフの一人が助けを呼んだ。
「女性が一人溺れてる。いつから溺れてるか分からない。誰か助けてくれ。」
レトファリックは急いでビーチを泳ぎ始めた。
もしかしたらもう死んでるかもしれない。早く沖に引き上げないと。
レトファリックは元人魚だ。遊泳速度最速の人魚だったレトファリックが人間になろうと遅くなりすぎはしない。
レトファリックは女性の脇に手を入れ水面まで引き上げた。
女性の息はまだあった。よくみると女性は見た事のある顔だった。
「ツキレニーさん!なんであなたが溺れてるんですか。」
ツキレニーは口から海水を吐き出して答えた。
「うるさい。もうほっといてよ。私を死なせてよ。NPCというだけで職場でも散歩をしても馬鹿にされる。もうどうでもいいんだよ。」
レトファリックは彼女の叫びを聞き自分の考えを話した。
「いくら人間がエルフに酷い事をしたとしてもNPCの今の扱いは酷いですね。僕が教師になってこの国を変えて見せます。」
ツキレニーは彼の話をいたが反応は変えなかった。
「できる訳ない。勝手にやってろ。私を巻き込むんじゃねえ。」
その言葉を聞きレトファリックは、彼女にある提案をした。
「それなら僕の路上授業を見てください。面白いって言わせて見せます。本気でシャトールを変えるつもりだってあなたに見せます。」
ツキレニーは彼の言葉を聞いて少しだけ動揺を見せた。
「し、知るか。」
そうしてレトファリックは沖に彼女を引き上げた。
周りのエルフは溺れていたのが人間だと気づくとしかめ面になるものもいた。
「なんだ俺らに酷い扱いをし続けた人間様かよ。」
「今は立場が逆転してんだから偉そうな物言いはするなよ。」
人間だとしても大丈夫と心配をかけてくれるものもいた。
「よし。それじゃあ早速路上授業してみますか。」
彼の教師になるための新しい行脚が始まった。
彼は路上授業をするために戦闘魔法序の書を購入した。
「まずは火の魔法か、」
書かれている通り全身の魔力を指先に集めて発散させた。
結局できたのは魔力の流れを掴み事くらいだった。
「くそ。全身で魔力をイメージしてもコンロの火一つつかない。」
それもそうだった。スキルは敵モンスターを倒して入手するのが基本。潜在的な魔力は一般人間にはない。しかし彼は人魚だったので水魔法と回復魔法は使う事ができた。
「やったー。水鉄砲程度の水魔法と少しの回復魔法を使えるぞー。」
しかし問題点がある事に今気付いた。
「エルフ達に向かってこの程度の水魔法と回復魔法を教えると言っても無理がある。一体どうすればいいんだ。」
彼の教師への道はかなり困難だった。
その日の夜だった。squiから連絡が来た。
[2日目の夜になったので30分後,19時から元NPCのエルフやドワーフなどのプレイヤーがこのDESSQにログインします。くれぐれもご注意くださいませ。]
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