第13話 第2サーバー開通、vs神々のカード

1時間30分前 ウェルジーナ王宮内


水色のステンドグラスが目立つ王宮の階段の下、赤い絨毯の敷かれた長い道に植物や花が咲いた大庭園へと続く道から大きな窓に陽が差していた。


「まずい。コフィレット様が出てこない。後10分で会議に出席しないと怒られる。」

私は幹部でもないのに。


「コフィレット様、メイドの方が、ご勝手ながらシチューをご用意致しました。一度食事でも取りませんか。」


扉の先から返事はなかった。


リーべアレイル・マニーレックは自身のlevelが未だ5である事を危惧していた。


(他の幹部の方々はみんな二桁だ。スポーンする度にまとめて倒していくから纏まりがないんだよなあ。)


デスゲームが始まったというのにウェルジーナの幹部陣は殆ど動揺していなかった。


(NPCなんて言われたけどシステムは前と同じだし、スキルも同じようなものが手に入ってきたから第二サーバーが始まっても内は優勢じゃないかな。)


ウェルジーナ王国第一王女ウェルジーナ・コフィレットの自室は、まさしく王女と呼ぶべき部屋だった。窓は金製。棚には兵士達からの恋文がかなり置かれていた。星の描かれた宙色の水玉模様のロイヤルベッドが部屋の大半を占めていた。机が高い窓の下にある。コフィレットは横にあった地球儀を持ち出して、愛犬とともにベッドの上で考えていた。


「Rokuei tamesukeさん。マークも消えてないみたいだし。テママリナネットが最初のカードみたい。テママリナネットって青い猫なのかな。モンスターなのに名前もかわいい。ウェルジーナに来てくれるといいな。マニー、tamesukeさんのニュースは無いの。」


「只今ゴナールウォールド平原に兵が向かっております。コフィレット姫。」


「そうなんだ。ああ残念だよマニー。」


リーベアレイル・マニーレックは体を震わせた。

仲間と共にウェルジーナ中の情報網を集めてまいります。」


「早めに戻ってきて。」


マニーからの話だと、ウェルジーナの大事な会議ではトランプの13まで表面でスペードの10だけがJOKERだから問題ないって事で一致したみたい。


ウェルジーナの幹部の人達の結論は合ってると思う。これは…戦いたくないからやってるだけ。


「やっぱりトランプだよラジエット。…。テママリナネットの3が青色だからダイヤ。カメレオンの7が現れたここが多分、クラブ。だからこの右上がダイヤの3。左下がクラブの7。やっぱりスペードの10だけが変だよ。」


渡されたA4サイズの紙が幾つもベッドの上にあった。その一枚の紙に1、3、5、7と書き出した。


「1、3、5、7。でも此処が偶数の10。奇数じゃない。なんで。マニーが言ってたそすうも違うみたい。分からない。」


机の上の6人の写真を見てもう一度スキル画面の長方形について考えていた。


「私は役には立てないから、ミパルニー、ヒユリス、リュナテア。みんなは私が守らないと。もう一回考えよう。」


高級縫製の水色のパジャマから手を取り出しコフィレットはベッドに散らばった紙を踏みながら、机から新しい紙を持ち出した。


「よし。えーとトランプのマークは…七並べ。だから順番はスペード、ダイヤ、ハート、クラブっと。それならもう見れないけど表面は、9の模様に沿って右上から、スペードの1、ダイヤの3、ハートの5、クラブの7。右側は分からないんだった。確か、スペードの10の場所からスペードのダイヤのマークが反対になっていて、同じように下のマークも反対になっている。その場合、ダイヤの9、スペードの10、クラブの11、ハートの12。もしそうならこの真ん中にダイヤのKingだ。」


コフィレットは自分のノートに書いた内容を見て笑顔になりカードに該当する人物を思い浮かべていた。


「えへへ。もしかして幹部の方々より私の方が優秀なの。テママリナネットの3のtamesukeさんに会ったら答え合わせ出来るかも。カメレオンの7の方…Kamesisiさんは最初だからって狙われて可哀そう。」


コフィレットは初日の夜を思い出し、今までの出来事を振り返っていた。


20分くらいでカメレオンの7がなくなるのを見てあの日、本当にプレイヤーの皆さんは凄く怖いです。しかしその後のスペードの10の方のおかげで私たちは士気を取り戻せました。


コフィレットはまた少し怯えてしまい、ベッドに横になってノートを見ていた。


「この方々はどんな人なんだろう。やっぱり気になる。Rokuei tamesukeさんは名前がかわいいから優しそうです。マーヴェリックさんは初日の夜にカードを手に入れた勇気のある方のように思えます。」


「えーと。スペードの10は一体どんな御方。名前も分からない。私たちを救ってくれた英雄。きっと私よりも賢い方な気がします。私より頭のいいこの方がこの結論で満足するのかな。」


ノートの表面のマークを見て瞬時に閃いた。


「そっか。このカード、裏面が10で表面が9になってる。だけどそれじゃあ裏面は13を超えちゃうよね。どういう事。」


それから、またコフィレットの悶々とした苦悩は続いた。



同じく1時間30分前、アルグレット諸島王国


「ねえ!ここら辺カニモンスターが取れるよ。今晩はカニ鍋だな。」


「カニはパスタやコロッケにして食べたいな」


アルグレット諸島王国は外人が多く基本的に英語で会話している。


王様のアルグレット・マシアルはマイペースな性格。バスローブに身を包み、第二サーバーが開くのを待っていた。


「モンスターに捕食される前に風呂に入っておかないといかん。アヨフ、ピクニックの準備はできたか。」


王様の質問に兵士のアヨフは答えた。


「はい。カニや、エビ、アジなど食材は海の幸が多いですね。」


「よし。第二サーバーが開いたら、スキルを持った者を我がアルグレットクランに引き込んでもてなすぞ。」


ウェルジーナ王国、ドゴスペラ王国、アルグレット王国それぞれが、第二サーバーの解放を待っていた。


〔こんにちは。squiです。時間になりましたので第二サーバーVARMARD PARADOXを解放致します。〕


第二サーバーが開いて多くの人間は空中に転送された。


空中には遺跡の道が浮いているように並べられていた。時神ルーピル、雷神セト・トルエド、滝神ウァリダスナッコらがいた。


[これは神々のカード]


端末に表示された言葉が神々が到来したことを告げていた。

まず時神であるルーピルが第二サーバーに着いた彼らにテレパシーを送った。

「君たちは、僕ら神にとってはただの実験体。」


次に雷神セト・トルエドが発言した。


「これから貴様らが地上に降り立つまでの第一サーバーへの転送を禁ずる。」


最後に滝神ウァリダスナッコがわくわくした表情で答えた。


「地上までは僕らの作ったギミックに挑戦してもらう。途中で僕らを殺してもいいよ。」


遺跡の道には大きな鉄球が備え付けられており、水流によって鉄球が流れて、落ちていった。


リーベアレイル・マニーレックはコフィレットを守る為に精力を注いでいた。


「あの鉄球が流れてきたらひとたまりもなさそうですね。ガラムロードさん、お願いします。」

「任せろ。」


ウェルジーナが誇る八水の一人ガラムロードが防御姿勢を取った。


ガラムロードのスキルは周囲を防御するクッション性のある膜を張る能力。


しかし、膜にできたのは鉄球を何十度かそらす事だった。


「水流が厄介だな。雷神セト・トルエドの能力で水に電気が流れているから触ることもできない。」


鉄球が通る道のせいで多くの者が先に進めずにいると、とある男がおもむろに話し始めた。


「人が並んでるだけ。つまらない。私はもっと面白い君達が見たい。」


彼がそう発すると多くの人間の立ち位置が上空になり、多くのプレイヤーである人間が落下したら死ぬ高さまで連れていかれた。


「どうも。私は獅子川 宙炊。スペードの10の回答者だ。授かった能力で君達の五感以外を静止した。」


彼はスペードの10を解いた者だった。名前は、獅子川 宙炊。


「私が能力を解除すれば君達は死ぬ。その前に面白い話が出来たものがいれば君達全員生かしてあげよう。」


突然の出来事に空中で慌てている者が多い中、男が話を始めた。


「じゃあ著作権について話しようぜ。スペードの10回答者さんよー。」


「面白くなければ殺す。」


「うえーおっかねえな、神かよ。作品の参考になりそうだ。俺の名は血潮見レタス売れない漫画家。」


彼は漫画家だった。昔から絵を描いてきて漫画の世界に入り始めていた。


「時神ルーピル、雷神セト・トルエドこんな神達も誰かの著作物なんだから大したことはねえ。」


血潮見は著作権について話だした。


「著作権なんて要らなくないか。各々が作ったものが一致しててもつまらない。結局多様化するだろ普通。」


潮見にスペードの10回答者の宙炊が同調した。


「私は私のコピーが作品に居ようが構わない。」


しかし、彼の話を聞いて反対する者が現れた。


「それは駄目だ著作権がないと模倣作品を容認してしまう。2次創作はグレーであるからこそ原作が汚れずに済んでいる。」


名前は、甲羅川 暁人。プロ手前の小説家。


彼の話を聞いて血潮見が質問した。


「あんた名前は、作品か何か執筆中?。」

「甲羅川 暁人、本名で小説を書いている。連載はしているが、小説一つで生計は建てられないのでプロとは呼べないが。」


「ほー凄い。けどあんたの作品読んだ事ないな。あんたは作品を模倣された事なさそうだ。じゃあ甲羅川さんに聞くけどあんたの小説が模倣されたって面白くなくないか。」


「面白いかどうかではなく許容できるかどうかだ。まだ未完成の作品が模倣されたりなんかしたら問題だ。」


スペードの10回答者である獅子川は話を始めた。


「甲羅川 暁人くんはどんな作品を書いてるの試しに私が模倣して見せようか。」


獅子川は話を続けた。


「私はどんな人間の役も模倣できる。ハッカーを模倣すればハッキングができるし、音楽家を模倣すればミュージシャンにもなれる。君の小説を読めば今の法律に触れずに形だけ模倣すれば新しい作品の完成だ。」


獅子川の話を聞いて血潮見が驚いていた。


「それまじ。凄いやん獅子川さん。漫画の構成考えてもらいたーい。」


獅子川は甲羅川 暁人の回答を待った。


「構造の模倣が出来るんならやってみればいい。」


「それなら君の作品を模倣させてもらう為に他の者も生かす事にしよう。まあどの道神々が道をせき止めてしまっているけれど。」


そういうと獅子川は能力を解き、他の者たちは全員生かされた。


「問題は雷神セト・トルエドだと私は思う。手早く雷神を殺そう。」


獅子川の話に甲羅川と血潮見は同調した。


獅子川は迫りくる鉄球をスペードの10の能力で止めて、その前落ちた鉄球をぶつける事で鉄球に反作用の力を加えて跳ね返した。しかし、セト・トルエドはそれを躱した。

躱した後が問題だった。スペードの10はウァリダスナッコの水流を彼に浴びせた事でセト・トルエドは放電が始まった。


「やっぱり、ゲームマスターの作った神は体内まで電気を帯びてしまっているから水を浴びると放電状態になるね。」


獅子川はもう一つのスキル捕縛鉄網でセト・トルエドを拘束した。


「雷神捕獲。後は能力が欲しいな。」


「貴様なんぞに渡すか。」


「交渉決裂。じゃあ君を殺してFONUMEESのスキルとしてもらうけどいい。」


神と淡々と話をしている獅子川に甲羅川と血潮見が彼を認め始めていた。


「自惚れるな小童。」


雷神セト・トルエドは、電気の体になり捕縛鉄網から抜け出した。


「流石。こんなもので殺せたら神とは呼べない。」


獅子川は今の神の行動から分析に入っていた。


「電気の体になったのではなく電熱で捕縛鉄網を焼き切ったようだ。電気の体でも実体はあって抜け出せないという事かな。」


獅子川の推測は当たっていた。雷神は自身の電圧を上げて網を焼き切って抜け出していた。


雷神は怒りながら能力の底力を見せ始めた。


「雷神の乱怒」


放電状態という事もあり、大量の電気がNPCの人間たちの体内を流れ多くの人間が命を落とした。


「さて、どうするべきか。凍結だろう。水を大量に浴びている。冷気を当てて時間を止めれば実質凍結だ。冷気を浴びせる魔法を持っている者を探そう。」


獅子川の助言通り、血潮見や甲羅川が探していると、画面を巧みに操作している者が手を挙げた。


「と、凍結はあらゆる局面で、て、敵を足止めする価値の高いスキル。わ、私の持っている特技とも相性がいい。」


男の名前は瀬高。ハッカーだった。彼はこの第二サーバーに降り立つと同時にsquiのシステムに侵入して強奪可能なスキルの中から使えそうな能力を奪っていた。


「よし私が時間を止めるから、凍結してくれよ。君名前は。」


「せ、瀬高。」


獅子川は時神の能力一部使用を利用し、セト・トルエドを拘束、また、冷気で凍結させ動けない状態になっていた。


「これじゃあルーピルが力を使って君を起こそうとしても凍結で動けないから無理だね。瀬高くんありがとう。君はハッカーか面白い人だね。」


「貴様ら人にここまで追いつめられるとは。何という屈辱。」


「セト・トルエドさん。今度こそスキルをもらうけどいいかな。」


交渉の末、セト・トルエドが能力を渡さなかったので、結局雷神を殺し、獅子川はセト・トルエドのスキルを手に入れた。


[おめでとうございます。固有スキル、雷神の乱怒を獲得されました。使用の際にはNon Player Clown FONUMEES SKILL〔セトトルエドの10〕を唱えて下さい。トランプカードではスペードの10です。このカードの意味は乱怒です。]

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