第41話 DESSQシステムでも予知できない事、ウェルジーナ・コフィレット登場
ぎこちない会話だったが、二人は黙々と壺の破片の回収作業を行った。
破片を整理していると、壺の破片の一つが生き物のように動き始めた。
「まさか。破片になって壺の中に入っていたのか。」
レトファリックの推測通り本体のレオリープ・カメレオンは壺の破片に化けていた。
破片が移動したので、レトファリックは手伝う手を止めて後を追った。
[これは幸運のカード]
「この表示間違いない。レオリープ・カメレオンだ。さっきまで一緒だったのに逃げるのか。また探さないといけないのか。」
既にスキルは所持しているが、レオリープ・カメレオンの後を追うと、まだ入居者のいないホテルの一室に入った。
そこには、ランプや時計、ベッドや服が置かれていた。
「大きいものには化けないだろう。化けられるのは無生物のアイテムだもんな。」
彼は、此処が従業員が掃除をしていた場所だと気づき浴室の部屋のスリッパが綺麗に並んでない事に気づき、レオリープ・カメレオンを見つけ出した。
「ツキレニーも、ミライエルさんもホテルをいつでも清潔に保つために頑張っている。そんなメルノシ―ミルホテルの浴室のスリッパが綺麗に並んでないなんてことはない。」
既にカメレオンのスキルは持っているが、レオリープカメレオンとの再会にレトファリックは興奮した。
「僕の事が好きだから近くにいたのか。お前もこれからよろしくな。」
擬態スキルを手に入れたレトファリックは、ホテルの従業員という新しい人生を歩み始めた。
その頃、第二サーバーVARMARDPARADOX
都市から外れた灯りのないガラクタが積み上げられた地面。それを家の補強にしたのだろう。ビルはないが、ホテルや建物に、歯車や、汽車の一部がついており、空爆を受けたのか一部の建物は崩壊していた。都市の中心には、青白く光るガラス張りの電脳城があり、遠目でモンスターのスケルトンやゴブリンが暮らしているように見えた。多くの大きな画面に、モンスターの獲得スコアのCMが流され、戦闘しているモンスターの左に人のマークが書かれ数字が大きく表示された映像があった。
「このメカメカしい都市に着くまでに何千人死んだんだろうな。」
「が、が、が、概算しても、今の残NPC数は55000人という所です。こ、今後の第一サーバーにおける農業可能面積、squiが放つプレイヤーは20000人と判明。そこから強奪可能金額から、第一サーバー食材屋の在庫数を考えても今の数でも十分です。s squi流石です。でも人間は後17000人は減らした方がお得です。」
「後は僕一人でも十分そうだね。役になってあげるから君は一旦休むといい。目がやつれているよ。」
都市に着くまで何があったのか、血が止まらず身体の一部が動かなくなっている人間達が、お金を求めてNPCの街を襲っていた。
「揃いも揃って自分を破壊して前に進もうとしない。同じ言動、同じ思考。自分という役を演じる仮面劇を俺たちは見ているだけさ。つまらないだろう。それならば、殺して役を奪ってあげよう。削って役を作り直してあげよう。人間は自分を破壊できる点においてsqui、君を上回っているんだよ。」
既に第二サーバーではDESSQのシステムでも予知できない程の事が起きていた。
1時間30分前 ウェルジーナ王宮内
水色のステンドグラスが目立つ王宮の階段の下、赤い絨毯の敷かれた長い道に植物や花が咲いた大庭園へと続く道から大きな窓に陽が差していた。
「まずい。コフィレット様が出てこない。後10分で会議に出席しないと怒られる。」
私は幹部でもないのに。
「コフィレット様、メイドの方が、ご勝手ながらシチューをご用意致しました。一度食事でも取りませんか。」
扉の先から返事はなかった。
リーべアレイル・マニーレックは自身のlevelが未だ5である事を危惧していた。
(他の幹部の方々はみんな二桁だ。スポーンする度にまとめて倒していくから纏まりがないんだよなあ。)
デスゲームが始まったというのにウェルジーナの幹部陣は殆ど動揺していなかった。
(NPCなんて言われたけどシステムは前と同じだし、スキルも同じようなものが手に入ってきたから第二サーバーが始まっても内は優勢じゃないかな。)
ウェルジーナ王国第一王女ウェルジーナ・コフィレットの自室は、まさしく王女と呼ぶべき部屋だった。窓は金製。棚には兵士達からの恋文がかなり置かれていた。星の描かれた宙色の水玉模様のロイヤルベッドが部屋の大半を占めていた。机が高い窓の下にある。コフィレットは横にあった地球儀を持ち出して、愛犬とともにベッドの上で考えていた。
「Rokuei tamesukeさん。マークも消えてないみたいだし。テママリナネットが最初のカードみたい。テママリナネットって青い猫なのかな。モンスターなのに名前もかわいい。ウェルジーナに来てくれるといいな。マニー、tamesukeさんのニュースは無いの。」
「只今ゴナールウォールド平原に兵が向かっております。コフィレット姫。」
「そうなんだ。ああ残念だよマニー。」
リーベアレイル・マニーレックは体を震わせた。
「仲間と共にウェルジーナ中の情報網を集めてまいります。」
「早めに戻ってきて。」
マニーからの話だと、ウェルジーナの大事な会議ではトランプの13まで表面でスペードの10だけがJOKERだから問題ないって事で一致したみたい。
ウェルジーナの幹部の人達の結論は合ってると思う。これは…戦いたくないからやってるだけ。
「やっぱりトランプだよラジエット。…。テママリナネットの3が青色だからダイヤ。カメレオンの7が現れたここが多分、クラブ。だからこの右上がダイヤの3。左下がクラブの7。やっぱりスペードの10だけが変だよ。」
渡されたA4サイズの紙が幾つもベッドの上にあった。その一枚の紙に1、3、5、7と書き出した。
「1、3、5、7。でも此処が偶数の10。奇数じゃない。なんで。マニーが言ってたそすうも違うみたい。分からない。」
机の上の6人の写真を見てもう一度スキル画面の長方形について考えていた。
「私は役には立てないから、ミパルニー、ツキレニー、リュナテア。みんなは私が守らないと。もう一回考えよう。」
高級縫製の水色のパジャマから手を取り出しコフィレットはベッドに散らばった紙を踏みながら、机から新しい紙を持ち出した。
「よし。えーとトランプのマークは…七並べ。だから順番はスペード、ダイヤ、ハート、クラブっと。それならもう見れないけど表面は、9の模様に沿って右上から、スペードの1、ダイヤの3、ハートの5、クラブの7。右側は分からないんだった。確か、スペードの10の場所からスペードのダイヤのマークが反対になっていて、同じように下のマークも反対になっている。その場合、ダイヤの9、スペードの10、クラブの11、ハートの12。もしそうならこの真ん中にダイヤのKingだ。」
コフィレットは自分のノートに書いた内容を見て笑顔になりカードに該当する人物を思い浮かべていた。
「えへへ。もしかして幹部の方々より私の方が優秀なの。テママリナネットの3のtamesukeさんに会ったら答え合わせ出来るかも。カメレオンの7の方…Kamesisiさんは最初だからって狙われて可哀そう。」
コフィレットは初日の夜を思い出し、今までの出来事を振り返っていた。
20分くらいでカメレオンの7がなくなるのを見てあの日、本当にプレイヤーの皆さんは凄く怖いです。しかしその後のスペードの10の方のおかげで私たちは士気を取り戻せました。
コフィレットはまた少し怯えてしまい、ベッドに横になってノートを見ていた。
「この方々はどんな人なんだろう。やっぱり気になる。Rokuei tamesukeさんは名前がかわいいから優しそうです。マーヴェリックさんは初日の夜にカードを手に入れた勇気のある方のように思えます。」
「えーと。スペードの10は一体どんな御方。名前も分からない。私たちを救ってくれた英雄。きっと私よりも賢い方な気がします。私より頭のいいこの方がこの結論で満足するのかな。」
ノートの表面のマークを見て瞬時に閃いた。
「そっか。このカード、裏面が10で表面が9になってる。だけどそれじゃあ裏面は13を超えちゃうよね。どういう事。」
それから、またコフィレットの悶々とした苦悩は続いた。
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