第6話 人間サイド Yobaseと田芽助の経験値稼ぎ

一方 ゴナールウォールド平原 日の出前


[こんばんは。squiです。カメレオンの7所持者が正式にNPCになりました。元NPCのプレイヤーが撃破したので、カードは剥奪。

モンスターがまた第一サーバーに出現致しました。


そのため、第二サーバーを閉めさせていただきます。


スキル画面を更新いたしました。ご確認ください。]


Yobaseはsquiからの伝達を冷静に分析していた。


「なるほどカードに該当したFONUMEESのスキルを手に入れれば次のサーバーが開くのか。カメレオンの7が消えてる。レトファリックは死んでNPCになったってことか。」


鯱千は残念そうな顔を見せた。


「残念。会ってみたかったのになあ。」


「仇をとりましょう。スキルを所持した瞬間に狙いに行く人達に結構怒ってます。あと特別なモンスターはまた洞窟にいる気がしますね。今行かないと手遅れになります。」


田芽助の提案に珍しく峰未雨が同調した。


「今回は田芽助の言う通りだ。今スキル画面でできることは何もない。私も本当の死地には向かえるか分からない。しかし、行きたい。」


Yobaseが3人を静止させた。


「いいや今回ばかりは駄目だ。お前ら自室に戻って頭を冷やせ。」


ウェルジーナ、ドゴスペラ両国は相手がエルフだと勘づき、今のlevelでは太刀打ちができないと思い作戦を練っていた。


彼らが落ち込んでいた時、squiからまた連絡が来た。


[おはようございます。squiです。Non Player FONUMEES SKILL JOKER CODEを使用したものが現れました。回答までの時間は3分です。


正解の場合は、報酬として該当スキルの一部、システムに干渉しない願いを叶えることができます。


不正解の場合はプレイヤー名公表の上、消滅となります。


また、次回は入手可能なカードを全て集めるまでNon Player FONUMEES SKILL JOKER CODEは使用できません。該当者へ。本当にコードを送信いたしますか。]


ドゴスぺラ王国内会議室


「猶予はない。回答を送信するまでに、画面を開いていた者を全て捕えろ。」


ウェルジーナ王宮


「国王様、今すぐ確認いたします。」


「ウェルジーナの人間であれば、今後他国との交渉ができないほど信頼を大きく損失する。全ての我が国民に伝え、相互的に見つけ出せ。」


ドゴスぺラ王国内のとある場所 


「なあ、面白いやつがいるな。トランプって分かっただけの博打か。まあ死ぬかもしれないけどな。」


「終末世界。混沌、必然的。」


「正直ゲームなんてどうでもよくね。現実世界に戻んなくていいだろ。手早く強くなって今度はプレイヤーで楽しむってだけ。案外正解しちゃうんじゃね。失敗したら名前公表の上、死体も残らずに消えるだけだ。あははは。」


ゲーム内スキルの大幅アップデートが行われ多くが書き変わっていたが、βテスターやランカーだったものは前と同じスキルを把握しその内、他のカードに該当しそうなものを考えていた。彼らはNon Player FONUMEES SKILL JOKER CODEのスキルを手に入れる事は難易度を大きく変えるものだと確信していた。



[コード スペードの10]


突如、多くのプレイヤーのメニュー画面に該当者の回答が表示された。下には正解だという旨が書かれていた。


[おめでとうございます。報酬はスペードの10のスキルの使用一部です。よって、第二サーバー、VARMARD PARADOXをオープン致します。メニュー画面よりテレポート画面を追加いたしました。サーバー解放時間になり次第、そこからサーバー間を自由に行き来できます。またカードを裏面にさせていただきます。次のサーバーには各サーバーに存在している固有モンスターとは別にスペードの10に該当する固有モンスターを配置いたしました。新たなサーバーをお楽しみください。]


「「「せ、正解しやがったーー。」」」

ドゴスペラ王国


「長方形、カメレオンの7。情報はこの2つだけだ。正解する確信があったとは思えない。」


「誰だか知らないが、スペードの10を送ったものは私たちより先にスキルを入手したかったように思える。しかし彼には救われた。この国にいる場合好機だ。探し出そう。」


ウェルジーナ王国

ウェルジーナ・レフィナ王国 女王


「今度は名前も分からない人を探さなくちゃいけないのね。でも素敵。救世主だわ。レオリープ・カメレオンの7所持者の方はいなくなってしまったけれど、彼は Non Player Clown FONUMEES SKILL JOKER CODEを暴いてカードを裏面にしてみせた。これでかなり情報が増えたわ。少し困惑中。マニーに説明してほしい。」


「申し訳ございません、レフィナ女王。リーべアレイル・マニーレックは現在ウェルジーナ・コフィレット第一王女の容態を案じております。そのため私、ガラムロードが説明致します。


まず現在使えるのは、メール画面、スキル画面、武器画面です。初期状態の空白ではありましたが、武器は所持ができ、スキルも特定モンスターを倒すと確率で入手できる状態です。」


「本題に移らせて頂きます。昨日と今日スキル欄の長方形のスペースに変化がありました。まずクラブの7が現れすぐに消えた。


おそらくエルフの者が撃破した事が原因と思われます。

そしてそれから約3時間後、皆が落ち込み再び寝静まっている間にスペードの10は回答されました。


スペードの10回答者の所在は4か国内緊急情報網メールとウェルジーナ・アルグレッド協力連携体制メールからも現在情報はありません。


しかし、ウェルジーナ八水狩嵐会議では、クラブの7が出た位置が右下であったこと、スペードの10が右上から一つ下に現れたことからトランプゲームを用いたものだと仮定し考察しています。


また、スペードの10に該当するスキルが前シーズンまでチート中のチートだと言われている時神ルーピル、雷神セト・トルエド、滝神ウァリダスナッコ等の神系のどれかだろうと言われています。」


「第二サーバーはかなり強いモンスターがいそうね。

神の名が入ってるスキルは固有スキルの中でも強いものが多かった。もしその力がログ・ウィルミルのようにモンスター自体に使われたら危険。でもスペードの10回答者がいれば、スキルの一部使用が可能なのだから王国がNPCに襲われても問題ない。


とりあえず強いエルフは第一サーバーに集まっている。第二サーバーの様子を確認してすぐ移りましょう。サーバーが開くまで1時間ほどしかない。おそらく3か国同時ね。現状は分かったわ。追加の情報はある?」


レフィナ女王の質問にガラムロードは答えた。


「スキルについてなのですが、基本的にはモンスターの使っていた技を応用したものです。しかし中には稀に、モンスターの攻撃とは全く関係のないスキルが手に入るらしくそれを、ウィーブスキルと呼んでいます。今まで確認したものは、炭酸やわやわマシュマロ拳、たたた踊り、スゴモールミストシャワーです。」


レフィナにとっては変なスキルの情報は不必要なものだった。


「その情報は聞いてないわ。でも最後のはちょっとほしい。」


「失礼いたしました。しかしここからが問題なのですが、一人の持てるスキルが2つまでしかない状態で、基本的なスキルは変更可能なのですがこの異様に弱いスキルだけは変えられないんです。」


「なるほど。被害が少ないことを祈るしかないわ。あとで所持している人を連れてきて。」


ごめんなさい。重要なスキル所持の話なのに面白くて笑いそうになってしまったわ。後で名前も考えてみてもいいかもしれません。


「かしこまりました。」


井戸の中yobase一行。


「奴は天才だ。Non Player Clown JOKER FONUMEES SKILL CODEを解いたスペードの10仮所持者。なぜなら回答が出たってのにスペードの10である理由が断定できてない。巷では英雄扱い、DESSJOKERなんて言われてる。このゲームを抜け出すには奴が必要だからだ。」


田芽助がYobaseが現実と向き合わない事に焦った。


「その話もうしました。今Yobaseさんのlevelと私のlevelが低いのをどうするかって話してます。もう第二サーバーが開くまで一時間しかないんですよ。」


Yobaseのlevelが未だ1である事を知った鯱千はYobaseに失望していた。


「Yobase。まさかこんな嘘吐きがこのパーティのリーダーなんて信じらんねえ。どして、説明求むわ。」


しかし、このパーティのリーダーはYobaseという方針になっていた。峰未雨が理由を説明しだした。


「まず、鯱千。あなたは信用できない。メール画面にもひどい書き込みがあった。エレミルに何の恨みがあったのか知らないけど、正式にNPCになった元兵士長の顔を晒してざまあみろなんて。私はパーティなんて縛られずに敵に向かっていきたいから無理。六衛田芽助はなんというか、駄目。」


峰未雨からリーダー適正を否定され田芽助が少しムキになった。


「駄目ってあなたも十分ひどいです峰未雨さん。元はと言えば峰未雨さんが、Yobaseさんがlevel8だって偽ってた事を話したから、鯱千さんが全員のステータスを無理やり確認したんでしょ。なんとなく鯱千さんの態度みてたら自分の強さ誤魔化してそうだって分かると思います。」


「田芽助、お前は信用できる男だな。今3対1でも勝てない峰未雨にここまで言えるとは。」


「あ、ありがとうございます。」


峰未雨は鯱千と自分の扱いが異なる事を察した。


「鯱千には何も言わない。推しってことか。はあ。Yobase、話を進めて。」


Yobaseは今パーティの持っているスキルを整理し出した。


「ああ。まず各々のスキルから確認しよう。スキルを持ってるのは峰未雨と鯱千の二人だ。まず峰未雨のスキルは2つ。


[タイジットカーフ]

一時的に跳躍力があがり、前方向にタイジットカーフが現れ敵を噛み砕く。前方向に現れたタイミングでカーフィを呼ぶと自身と融合する。


[クロウメハカアマル]

自身を守る黒い梅模様の袴の鎧が現れる。防御力はまあまあ高い。」


Yobaseは峰未雨の説明を終え、鯱千の説明に移った。


「次に鯱千のスキルは1つだけどレアスキル。


[ニーグ・バム坦々砲]

かわいい絵になりそうと思った人の視界に移り重く最新、青色の専用バズーカを放つと敵を捕獲できる。相手の力が強いと逃げられる。」


Yobaseは田芽助の背中を力強く叩いた。


「ふぇ!」


「まず俺たち男組は弱え。前衛と後衛に分けるにしても俺たちは基本お前らの後ろを半歩下がって攻撃する。これが安全だ。」


「ダッサ、嘘でしょYobase。アイテムを色々いじってたしそれで戦えばいいいっしょ。峰未雨さんは前衛で私は後衛、田芽助とYobaseは剣とか近接武器しかないから前衛。はい、これで決まり。」


峰未雨は鯱千のYobaseに対しての物言いに苛立ちを隠せなかった。


「ちょっと黙ってくれない。調子に乗りすぎ鯱千。今言い方イラッとした。リーダーが私一人で前衛が出来るって言ってるからそれでいい。」


峰未雨と鯱千が喧嘩しだしたので田芽助が救済に入った。


「落ち着いて下さい。鯱千さん、峰未雨さん。私は前衛の一番前でいいです。頑張ってlevelをあげます。」


峰未雨の矛先は田芽助に向けられた。


「私の前には立つなよ。オタク。」


鯱千は峰未雨とは違い田芽助を応援した。


「頑張って。田芽助くん。できればこの女より強くなって。」


Yobaseがいがみあっている状態を鯱千をビンタして静止させた。


「いたいっ」


「これからは俺が手を叩いたら話をするから聞いてほしい。鯱千これは坦々麺の分だ。」


「いいか、やはり冷静に考えると俺たちのlevelは低い。だが俺は峰未雨と同じ前衛でいい。田芽助は俺と固まって動いたほうがいいが、まあ後ろでもいい。」


「それはだめ、」


死んだらくれるって約束してくれた食料がもらえなくなっちゃう。


「分かりました。私も前衛でいいです。」


Yobaseは小さく頷いた。


「決まりだな、鯱千以外前衛。上手く鯱千を守って動く。じゃああと40分の内にスキル入手に努めたい。田芽助、行こう。」


「私はここにいるよ。無駄にリスクを負いたくないし。」


「いいやお前のスキルは使える。手伝え。」


峰未雨は視線で殺気を伝え、指示を出した。


「分かったよ。」


ゴナールウォールド平原


広い草原だが、森や遺跡、遠くに川が流れており、山も見える。初日の夜はあまり寝れなかったが、ひんやりとした風が彼らを覚まさせる。


「作戦通り行くぞ。鯱千頼む。」


「おけ。」


「鯱千。」


「…」


[ニーグ・バム坦々砲]


彼女のこの巨大なバズーカは普通のアイテムも中に投入出来る。Yobaseが遺跡で入手した大きな石を収集、硬い石で砕き丸型にしていた。自分のために爆弾を作ろうとしていたものだった。


大きな玉を発射したは良かったが、敵の狼モンスターのレバニーラフトフには当たらなかった。レバニーラフトフは濃い青色でかなり眼と鼻がいい。例え後ろ方向からの攻撃でもこのモンスターは当たる手前で反応して避けられる。


「すまん。まだ玉が未完成だった。丸石の砲撃玉とアイテムでは表示されているのだが。」


アップデートと同時にアイテムを改造した場合、その出来によってアイテムを何段階かに分けられるようになっていた。彼の作った砲撃玉はまだ1段階目、未完成の代物だった。


[タイジットカーフ]

目の前にタイジットカーフが現れ、敵を視認した。


「ねえ、そっちに懐いてどうする」


タイジットカーフはオスだった。


峯未雨のことを男と勘違いして鯱千に擦り寄っていた。


「今、邪魔しないで。ったく作戦変更で玉取り替えんの面倒くさ。元々出来なさそうだったし。まじでだるいから絡まないで。」


鯱千は機嫌が悪く、足であしらわれたタイジットカーフはとぼとぼと峯未雨のもとに帰ってきた。


「おいでカーフィ、名前は舞雲寺ちゃん。」


タイジットカーフは峯未雨の優しい眼差しを見て光となり融合した。


タイジットカーフの耳と尻尾そして足の裏にも肉食動物の体がつき、かなりの身体能力を手に入れた。スキルに慣れることでさらに進化する。紺色と白色の縞模様が耳と尻尾に生え、彼女は獣人のような見た目となった。


「すごいこれ、めっちゃ飛べる。なんで今まで使わなかったんだろ。」


峯未雨にしては珍しく戦場で屈託のない笑顔を浮かべていた。


[タイジットカーフ]


このスキルは当人の身体能力に比例して強くなる。本来であれば子供でメスのタイジットカーフなら2mが最大だが、彼女は4m以上飛んでいた。


「耳いらない。鯱千。あそこのレバニーラフトフを半殺しにしてくる。だからさ、なあ鯱千。」


峯未雨は鯱千に目で命令した。


「分かった。」


ええとイラストになりそうなかわいいモンスターいないかなあ。

ウィーブローズシープの群れがいた。始まりの草原の進化系だった。体に棘があり、突進されれば継続ダメージが入る。


「バムバム。」

[ニーグ・バム坦々砲ゲージluv.2現最大値]

「ええと、名前はウィーブローズシープたん。」


名前を言わなければならないらしい。


「捕まえてあげる」


専用のバズーカから大きな光の玉がウィーブローズシープの群れの方向に飛んでいき当たった。4体ほどが捕まっていた。

l

uv.2は威力、網の強度が少し落ちるが、網の直径が広くなり最大5体のモンスターを一度に捕獲出来る。


峯未雨もレバニーラフトフを数えられるだけでも5体程動けない状態にしていた。


「ありがとうございます。」


「助かった…お前ら。」


Yobase田芽助は彼女らの捕獲したモンスターにとどめを刺そうとしていた。

Yobaseがレバニーラフトフを倒してlevelをあげていたが顔は晴れていなかった。

田芽助は止まっていた。


「Yobaseさん、僕、は。」


田芽助は固まったまま剣を握っていた。


彼は目を隠し少し考え結論を出した。


「あなたにこのモンスターと向こうのウィーブローズシープの経験値あげます。すいません。あとで井戸の近くに戻るんで。」


「田芽助!」


田芽助は遺跡の方に走っていった。


「無茶だ馬鹿野郎。」


Yobaseはなんとなく彼は強くなりたいのだと思った。

彼も同じ事を考えていた。彼の中には生き残りたいという気持ちが根幹にあった。MMOでデスゲームが始まっても安全圏から動かなければ死ぬ事はない。

何処かの阿保とは違い最善手だった。


「Yobase、ウィーブローズシープも持ってきたぞー。」


彼女の網にかかると重いが鯱千だけ軽く持ち運べるようになる。レアスキルと呼ぶほど強力だった。彼女はそれを引きずってエルフを井戸の中に運んでいた。


「Yobaseリーダー、level UPおめでとう。」


「ああ峯未雨、鯱千、お前らのおかげだ。」


彼はlevelが2に上がっていた。3になるのも時間の問題と言える程だった。


「じゃあ急いで田芽助の馬鹿を引き戻しに行かないと。遺跡まではまだ距離があるし私のスピードでもスキルでも追いつける。じゃちょっと待ってて。」


「待ってくれ。」


彼は峯未雨から目を逸らした。


「お前ら井戸の中に戻っててくれ。俺があいつを連れ戻しに行く。もし時間に現れなかったら第二サーバーに向かえ。遺跡のウェイターボの動きは分かってる。すぐ戻ってくる。」

「分かった。リーダー。」


「いいぞー。早く安全圏に戻りたかった。もう誰かいるかも知れないしな。」


鯱千が井戸の中に走り出したので峯未雨も戻らざるおえなくなった。

峯未雨は感情は無駄だと思っているが、戦をしてきたものの予測、嫌な感じを察知した。


「Yobaseさん。どうか血迷わないで下さい。」


「連れ戻すだけだ。井戸に入る時も油断はするなよ。」


彼も遺跡に向かって走り出した。


ガーケイム・アトラ遺跡


田芽助はようやく、遺跡につき膝を抱えていた。


「何をしているんだ僕は。自分じゃないみたいだ。」


パーティーから離脱し単独行動、その上、推奨レベル22の遺跡へともう一度足を踏み入れた。迷惑な判断をしていた。


どうしよう。levelを上げたくて来たのにこれじゃ何も出来ずに帰るだけだ。峯未雨さんでもウェイターボガーディアンを倒せてないのに僕が倒せるはずがないじゃないか。


彼は勇気のある青年ではあった。しかし、草むらからガーディアンの動きに怯えるしかなかった。


「このガーディアンの動き、さっきも見た。」


彼は草むらから見つからないようにウェイターボガーディアンを見つめていたが、その動きの規則性に気づいた。


「敵がいないときは、柱を通りすぎて右に曲がっている。しかし向こうのガーディアンと鉢合わせたら向きが逆になるんだ。」


彼は峯未雨と出会ったときを思い出していた。


あの時はガーディアンがどう動いていたんだ。確か視認しても急に曲がる事はできない。そうか彼らは4方向にしか進めないんだ。


あの時ガーディアン同士がぶつかったのは?ビームを打つ前の動作は?

連撃とビームを打つ時の距離との関係は?


彼の脳内では一撃で致死ダメージを与える相手のパターンを経験から推測し続けていた。


彼は、推しを見つけるとその人の事しか考えられなくなる。その際推しの行動、反応から自然と分析する様になっている時があった。


彼はそれを死線に応用した。


彼の中では勝利への方程式を探すようになっていた。


「まず、ウェイターボガーディアンは近くに2体のみ。それなら一直線上に来たタイミングで中心で視認させる。ビームを打つ際の動作は必ず右から。柱の手前で打たせれば柱は少し崩れるが次のビームまでのインターバルを稼げる。その間に上部にあるセンサーを大きな石で壊せれば確実に2体がぶつかって停止する。」


強い者や察知力のある者であれば感覚でやっていることを彼は全て手順を明確にしなければならなかった。しかし、それ故に動きに規則性を見つければ彼の洞察は周到深い、侮れないものになる。


「別に柱の手前に数cm単位で合わせなくてもいいんだぜ。駄目なら俺が囮になってやろう。」


「Yobaseさん。なんでですか。」


「経験値くれたり食料あげたり、敵のエルフ逃したり話を聞くたびにお前はこのDESSQじゃ真っ先に死にそうだと思った。だが、お前人がいいからな。うちのパーティーには必要だ。男一人だと辛いからな。それともう敬語は必要ない。」


「あ、ありがとうございますー。」


田芽助は泣きそうになりYobaseに抱き着いた。


「まあいいか、じゃ行くか。田芽助。」


「はい。手順通りに行きましょう。」


ウェイターボガーディアンが円を描くように回って来た。柱の通りすぎ曲がった。2本の柱の間をガーディアンが抜けようとした。


「今です。」


「手合わせ頼むわ。ガーディアン君。」


ウェイターボガーディアンlevel 10防御力がかなり高くビームを打つことが出来るので弱点が少ない。


ウェイターボ2体が彼を視認。ビームを放つが柱に阻まれる。田芽助はその間に大きな石を回収して投げていた。


2体ともセンサーが壊れ、何も見えないまま真っ直ぐ進んでいく。


「まだ油断すんな。停止したら攻撃だからな。」


「はい。でもやりましたね。Yobaseさん。」


「ああこの経験はきっと役に」


ガブり。ホラノイエンノシンゴーレムがボスだというのはアップデート前の話だった。洞窟や遺跡は新しいモンスターを再配置していた。


名はホラノイノスラバリウレム。ガーケイムアトラ遺跡の新ボスモンスター。


ホラノイエンノシンゴーレムは、地中から地上に出る際ドリルで穴を開けて出てくるので、反応して避けられる。このホラノイノスラバリウレムはの空いた穴を使って移動。カバのように固い顎で敵を丸呑みにするモンスターだった。


「ゔああああYobaseさーーん。」


地面が割れ、表面のみが修復されていた穴を伝い、ノスラバリウレムはYobaseを捕食し自身の縄張りである地下遺跡へと潜っていった。

地面が自動的に修復され田芽助の侵入を防いだ。まるでシステムとして初めから狙われていたギミックのようだった。


ガーケイム・アトラ地下遺跡 推奨level 35


「ゔぐ、あああ」

僕がYobaseさん殺したんだ。リーダーを失ってしまった。峯未雨さんや鯱千さんに、どんな顔をして説明すればいい。取り返しのつかないことをした。


ガガガ。物音が立ったと思ったら、地下遺跡への入り口が開いた。

「開いた。Yobaseさんの生命がまだあるんだとしたらこの遺跡の中に。行こう。僕が起こした問題だ。助けに行こう。」


彼の行動とは裏腹に足は動かずにいた。

自分の渾身の作戦を嘲笑うかのようにカベリウレムは現れた。

目が定まっていなかった。


足を叩いて動かし地下遺跡にいこうとした時、門が閉まった。


「え、なんで。」


「ぎゃはははははは。いい顔っすね。」


ウェイターボガーディアンの1体が向こう側から綺麗な軌道を描いて現れ門を閉めていた。


なぜか周りの草むらからも笑われていた。


[これは北極のカード]


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