第4話 レトファリック、エルフの復讐に巻き込まれる

「おい、まだ竜が攻撃してこない。もしかしたらこのまま逃げ切れるかもしれない。」


ちょうどその時だった。白藍鱗竜が突如大きくうねったと思うと、角に集中した光が拡散する様に口から炎を放った。


『復讐の時は来た。我々エルフ族含め多くのNPCの反撃を受けよ。』


白藍鱗竜ログウィルミルの逆鱗』


炎がコレックエレミーの城を破壊し内天井から王宮の一階まで砕けた。もはや地震だ

った。炎が地面を伝うように王国一帯に拡散し多くの建物は燃えて崩壊した。


コレックエレミー王国が一夜で姿を変えた。


そして拡散した光が力に呼応する様にもう一度白藍鱗竜の角に集まり始めた。


なぜ一発で魔力を大きく消費する燃費の悪い技が逆鱗なのか。白藍鱗竜の逆鱗は使用者の魔力量に応じて変わる。魔力が尽きるまで攻撃は終わらない。


レックサンド平原、ロードアーム王国に続く広い道で坂になっているエリアだ。

彼らは見た。一瞬の内に先程までいたコレックエレミー王国が崩壊した一部始終を。


そしてその後竜がまた雲の中を光が移動するようにこちらに向かってきているのを目で見て理解した。


「終わりだ。光が移動している。竜がこちらに向かってきている。」


「もう無理だ。あんなの受けたらひとたまりもない。」


白藍鱗竜は無慈悲に彼らを視認した。集めた光の量で効果範囲は変わる。まとまって行動していた彼らを葬るのには僅かの時間で十分だった。


始まりの草原


「なんだあれは。」


「あれが白藍鱗竜だ。忌まわしきプレイヤー共。」


青く白い竜が次々と国や平原を燃やしているのを見て、近くにいる者は驚き怯えていた。


「おいあの野郎、もう一度打つぞ」


ロードアーム王国も同じように崩壊してしまった。


エルフたちの心の中には自分たちの知らない感情が湧いていた。もっとプレイヤー共を追い詰めたい。苦しむ姿が見たい。


「貴様らに最後の機会をやろう。我々に頭を下げ慈悲を乞いた者たちは魔法を解いてやる。竜と我々エルフ、モンスターたちから逃げ切れればの話だがな。」


兵士たちはあまりの衝撃に話を聞いていない者も多くいた。国王様の安否を心配している忠義を持つ者もいた。


「エルフ様方、本当にごめんなさい。ごめんなさい。」


レトファリックは衝撃のあまりにこれはリスポーンしないということを肌感で理解した。王国を次々と破壊していく化け物に畏怖し泣いた状態で瞬時に逃げようと反射で謝罪した。


「俺もごめん。」


「どうかチャンスを下さい。靴でも舐めやすから。」


Yobase含め多くの者が後に続いた。


「NPCを奴隷のように扱った人間共。謝罪すれば全て許してもらえるとは思うな。」


「族長、早く我々と同じ苦痛を味合わせましょう。魔法の使用許可を下さい。」


渾身の謝罪が今の嗜虐心を掻き立てているエルフには通じなかった。


エルフの一部の者が上位魔法を放とうとしたが、クロシス族長がそれを止めた。


「やめろ。これでは、プレイヤー共とやっている事が変わらなくなる。苦しい者もいると思うが彼らを逃そう。どの道、道中のモンスターに追い詰められるだけだ。」


「感謝します、族長様。」


「勘違いするなクズ共。貴様らを正式にNPCにさせた後、火あぶりにして殺すとしよう。」


エルフは結局謝罪したものたちは逃すことにした。プレイヤーたちは顔を青ざめたが、エルフの脅威から本能で逃げていた。レトファリックはとにかく竜とエルフから逃げなければならないと思い誰とも纏まろうとせずものすごい勢いで逃げ出していた。行き先も分からないまま。



Yobaseら他の者たちも動揺しており、比較的バラけていたが、何名かは団結して行動していた。


「まずい。どうしよう。武器もないんだけど。なんでこんなMMOを始めちゃったんだよ僕は。」


動揺のあまり頭の中の事を彼は全て発言していた。この世界をどう生きればいいのか彼には全く分からなかった。チュートリアルで習った武器を使った攻撃方法が役に立たない。



数十分後、ゴナールウォールド高原 インスターボの森


ラグリーグ・レトファリックは元人魚故足の動作がおぼつかない。それでも彼はひたすらに走っていた。


「死ぬなこれは。」


アクセルロールビーの群れが迫ってきていた。彼らは獲物を見つけると円を描くように動きを封じてくる。本来であれば魔法か剣の大振りで倒す相手だが彼は何も持っていない。


「Yobaseたちと一緒にいればまだ安全だった。」


後悔したがもう遅かった。彼は生存本能のまま木々の向こうにうっすら見える近くの山に逃げていた。洞窟がある事のみに賭けていた。


「頼む。隠れる場所、隠れる場所。」五月蝿い音が近づいてくる。「キーーー」


アクセルロールビーには仲間を呼ぶ能力もあった。後ろから異様な数の蜂モンスターが押し寄せて、彼に襲い掛かった。


「どの道あの竜をまた召喚されたら終わりだ。」


彼は時期死ぬと思っていた。しかし気持ちの悪い蜂たちに殺されるのはすごく嫌だった。その時だった。木を抜けている道中に木の棒が幾つか落ちている事に気がついた。持てそうにみえた。反射だった。


「うっしゃあ。持てた。」



ゲームマスターは、草原の至るところに無数に武器を配置していた。


NPCである彼らにも武器は持てるようにしていた。


[木の剣強度3強さ1]「クソッ」


明らかに弱い武器だったが素手よりはいいと思った。

「キーーーーー」


アクセルロールビーの群れの長には1日に一度だけビーメタルスラッシュという技が使えた。蜂の針をうねらせ回転させながら放つ強力な技だった。


[ビーメタルスラッシュ]



手元の端末が震えた。緊急表示だった。


ゲームマスターは彼らに一般的なスキル、技は使用した場合手元の端末が反応し攻撃名が表示されるようになっていた。彼は木の棒を投げた。


これも反射だった。奇跡だった。投げた棒が敵の脅威的な技をそのまま相手に弾き返した。


「キイイイイ」


先頭のアクセルロールビーに攻撃が当たると、他のモンスターも電気で身動きが取れなくなってしまった。


先頭辺りにいた3体の蜂モンスターは討伐された。


[Level UPおめでとうございます。]

[Level 3 UP↑]


手元の画面に表示されると体が光った。


[Level 3UP↑ スキル獲得 木剣衝弾投]

[Level UP bonus一時的なパワー、スピードの増幅]


気づけば山の付近を回っていた。そして狙い通り洞窟があった。


「よっしゃあ。行けるぞー。」


彼はそのまま洞窟へと入っていった。


ライムゴナールドレインの洞窟、推奨Level 25の危険な洞窟に彼は入っていった。



その頃、Yobaseは3人で行動していた。


六衛田芽助と峰未雨というプレイヤーと共にYobaseは一番近いはずのドゴスペラ王国に向かっていた。


「峰未雨、六衛田芽助、俺たちならドゴスペラ王国まで行けるな。」


六衛田芽助という人が彼を守っていた。


[六衛田芽助 Level 2 ]


「あなた何もしてないじゃないですか?ここで戦力失うわけにはいかないから守ってるだけですから。」


[Yobase Level 1 ]



「俺は後衛担当だって作戦決めたじゃねえか?あの時もホラノイエンノシン・ゴーレムに俺が気づいてなかったらお前ら死んでたんだからな。

その礼だと思ってくれ。というかあいつは死にたいのか。なんで先頭突っ走ってんだよ。」


[峰未雨 Level 5]


彼女は目の前のリトルタイガーのタイジットカーフィー、弓を打ってくるハカアマルゴブリンを一人で討伐していた。目の前の敵はほとんど彼女が倒していったので他の二人の経験値はあまり差が無かった。


「もう全然死線を感じない。」


彼女は、死線が好きな死にたがりだった。三国志のゲームをやって胸を打たれそれから緊張感のあるゲームを探してこのDESSQにのめり込んでいた。


峰未雨はドロップアイテムを田芽助達に持たせていた。

「はいこれ。」「「…はい。」」

基本的な会話はこれぐらいだった。


彼女はモンスターを倒して得たアイテムを半分ほど渡していた。彼らはただそのアイテムを保管するだけの荷物係だった。


「あのー峰未雨さん。できればもう少しチームで行動しませんか?今の戦い方は見ていてこわ…危ないですよ。」


「戦場では油断はしない。」


「田芽助のご無礼をお許し下さい峰未雨さん。今回は弓を補強しやした。どうぞ。」


「…感謝する。」


少し前の出来事。彼らはゴナールウォールド高原で出会った。「何者だあいつは。自ら敵モンスターに向かっていっている。」


少Yobaseはダースピック・スケルトンの群れに木の棒のみで向かっていく彼女を見た。彼女は相手の片手剣を奪い取り、そのままその剣で何度も起き上がるスケルトンを次々に倒していった。


彼女はレベルアップした状態で屠り続けており素早く動いていた。


「おい、そっちは危ねえぞ。」


峰未雨はホラノイエンノシンゴーレムがいる推奨Revel 22のガーケイム・アトラ遺跡に向かっていった。


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