【KAC20243】お好きな箱を、お一つお選びくださいな

三毛猫みゃー

3つの箱

 私の目の前には3つの箱が並んでいる。


「お客様、お帰りになる前にお好きな箱をお選びくださいな」


 先程まで舞を舞っていた美しい女性が箱を手のひらで指し示している。


 一つは小さい箱、手のひらサイズよりも少し大きい箱だ。その小さな箱の横にあるものは、人の頭がすっぽり入るくらいの大きさの箱だった。さらにその横には、人が膝を抱えて入るのにはぴったりな大きさだろうか。


 さて私はどれを選ぶべきだろうか?


 その前に既にお察しいただけていると思うが、ここは雀のお宿だ。ある目的のために散歩がてら竹林を歩いていた所ここに迷い込んだというわけだ。


 食事が出たが一つも食べなかった、お風呂も遠慮した、ただ舞を見て帰ることにした。そしたら、箱を選ぶように言われたわけだ。


「ちなみに中身はなんですか?」


 試しに聞いてみたが、ニコリと微笑むだけで答えてくれない。ふむ、少し舌切雀を思い出してみると違いが出てくる。まずは箱の数だ、物語では確か二つのはずだ、それが目の前には3つある。


 いや、そもそもあれは箱ではなくてつづらだったか。物語のとおりだと一番大きいのは除外だ。選択肢は2つ。どちらかが罠なのか、どちらも罠なのか。


 迷った末に私は……。



 宿を出ると外はすっかり夜になっていた。ふと振り返るとそこには先程までいた宿どころか、道すらなく竹が鬱蒼と茂っているだけだった。


 月明かりの中、私は財布を取り出し中身を確認してみた。うん、ちゃっかり支払った金額がなくなってる。


 ちなみに私は今手ぶらだ、結局どの箱も選ばなかった。どれもいりませんと言ったら「そうですか」と言われただけだった。


 中身は気になったが、どれを選んでも碌なことにはならなかっただろうね。だってどの箱からも嗅ぎなれた血の臭いがしていた。


 私はスマホを取り出し電話をかける、繋がった相手に「犯人は舌切雀だったよ」とそれだけ言って通話を切った。


 これでここ最近起きていた行方不明事件も解決かな。

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【KAC20243】お好きな箱を、お一つお選びくださいな 三毛猫みゃー @R-ruka

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