第51話 魔界への潜入


 フレイアを帰したバベルは、デュークの居場所と思われる要塞に単身乗り込もうとしていた。


シャドウを展開しながら完全に気配を絶ち、見張りの手薄な所を探す。

流石のバベルでも単身で正面から乗り込んでては、デュークまではたどり着けないだろう。

この要塞の中には魔界の四天王のいずれかが、いる可能性もある。

慎重に潜入しなければならない、ここでしくじればもうチャンスは無い。

それは、連合軍を一気に窮地に立たせることにもなるのだ。


やはり魔界にデュークの敵は居ないと言う事だろうか正面以外はほとんど見張りの気配は感じられなかった。

それに最後に見たあのデュークの薄ら笑い、完全に見下してる。

今まさか敵が攻め込んでくるなどとは想像もして無いはずだ。


そして意を決したように完全に気配を絶ち、見張りのいない西の方へ回り込み要塞の壁をよじ登りテラスの窓から侵入した。

バベルは要塞内に三つの大きな気配を察知していた、最上階と思われる付近に二つと地下に一つ。

バベルはまず地下に向かう事にした。


恐らくは最上階付近がデュークと思われるが、二つある事から闘いが長引く可能性もある。

そこに三人目が現れたら厄介なことになると判断し、まずは孤立してる一つ目から潰すことにした。


慎重に地下に足を進める。完全に気配を殺し物音ひとつ立てずに忍び寄る先にそれは居た。

四天王の一人暗黒魔導士のミラだった。何やら魔法スクロールの準備等してる様子だった。

一気に決めるべくスキルを纏い間合いを詰める。


【バベルマキシマイズ】

【バベルブレイド】

後ろからサクッと行くはずだったが・・・


その気配に気づき咄嗟に障壁を張り身を守るミラ。

「何者だ!」

言い放つと同時に魔法を展開しようとするミラに対して

「させるかよ・・」

【ライトニングバベル】

ミラの張った障壁もろとも胸を貫いた。

「ぐっ・・」

碌な反応も出来ずに四天王のミラは崩れ落ちた、そこに居たのが魔導士で良かったとバベルは胸を撫でおろした。

魔導士と言うのは正面切って対峙し、魔法の備えをされるとすこぶる厄介だが、不意打ちには弱い。

魔法を展開する間を与えなければ肉体的には脆いからだ。

これが肉体派の四天王なら、バベルは不意打ちを断念したかもしれない。

これはもはやバベルだけの闘いではないのだ、しくじれば国が亡ぶかもしれないのだ。

卑怯だろうが不意打ちだろうが、必ずやり遂げなければ成らない、その一念を胸に刻み次なる標的に足を進める。


そして一瞬だけシャドウを展開し要塞の状況を再度確認する。相変わらず強い気配は最上階の方だけだ。

それだけ確認するとまた気配を完全に殺し最上階に向けて足を忍ばせて行く。


 上の階に繋がる要所にはやはり見張りの魔族が居るが、今のバベルの敵では無かった、物音ひとつ出さずその息の根を止める。そっと背後に忍び寄り気が付いた時には既に心臓は抜き取られている・・・その動きは全盛期を彷彿とさせるものがある。


そうやって慎重に時間はかかるが階を登っていくバベル。

ここでミスは許されない、なによりも確実にこの作戦を成功させなければならない。


暫く息を潜めては敵をやり過ごし、とうとうその大きな気配が二つする部屋の前まで来た。

慎重に中の様子を確認しながら聴き耳を立てる。


「バルサーチ将軍手筈は整ったか?」

「ハッ、ヘルファイアタイラント20体とデスストームドラゴン3体」


中では、デュークとバルサーチが次なる侵攻の手筈を確認してる様だった。

(まずいな・・・よりよってバルサーチか・・・)

未知の強さのデュークと、ついこの間辛うじて勝利したバルサーチ、今のバベルでも流石にこの二人の相手は厳しすぎる・・・


それにヘルファイアタイラント20とデスストームドラゴン3体って、すでに地上全てを制圧できる戦力だぞ、もはや連合国の戦力程度では、どうにもならん・・・


(どうするか・・・流石に今出て行って二人相手は分が悪すぎる)


もたもたしてる時間は無いがバベルがここでしくじれば、先ほどの魔物が連合軍に襲い掛かる・・・・

いくら白虎が来ると言えどもかなり厳しい状況に思える。せめてバベルと白虎が居ればどうにかなりそうだが・・・焦る気持ちを抑え、少し聴き耳を立てながら様子を見ることにした。


「ところで提督あの計画は順調に?」

「無論だ、だがあれにはあと国一つ分の人間の魂が必要だ、私であればすぐにでも蘇らせる方法は、ある事はあるが・・・」

「時間は掛かっても構わない。俺はその言葉を信じて提督に従うだけ。」

「では、第二幕はそなたに任せるぞ」

「ハッ仰せの通りに」

そう言い終わるとバルサーチは部屋を後にした。


とうとう千載一遇のチャンス到来、今この部屋には奴しかいない。

バベルは高鳴る胸の闘志を抑えるので必死だった、

(まだ早いせめてバルサーチの行方を確認しなければ。)

もしここでデュークとの激しい戦闘でバルサーチが感づき戻ってくれば、全ては水の泡だ・・・


慎重に確認する、息を潜ませてバルサーチの動向を見守っていると数人の魔族と言葉を交わした後に要塞を後にした。


時来たり・・・


 残すは部屋に居るデュークのみ。ゆっくりと部屋の中に侵入する。

何かの準備をしてるデュークを発見する。

バベルにはまだ気づいてない様子で、その準備に気を取られてるのか黙々と作業をテーブルの上でやっている。


そっと背後に忍び寄りスキル発動と共にデュークを貫く・・・


(こんなにあっさり・・・やったのか・・・)


その瞬間デュークは霧となり消えた・・・・


背後に気配を感じた、バベルは飛びのく。


そこにはニヤリと不気味な笑顔を浮かべたデュークが居た。



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