第50話 決意
激戦を何とか勝利した連合軍の将軍は緊急会議を開いていた。
どの将軍も勝利に浮かれた明るい顔はしていなかった、やはりデュークのあの言葉が、気になってるのである。
その重苦しく張り詰めた空気を切る様にボストール将軍は喋り始めた。
「今回は勝利したがこれで終わりではないはず、より熾烈な戦いが待ち受けてるであろうことはここに居る皆が覚悟してるとは思うが・・・」
そこにベルランテ帝国からの伝令が届き、ラドルフ将軍が言った。
「帝国から一万5千の援軍が来てるとの事だ、只到着するのは明後日だ。」
そしてバベルが皆が恐れてる事の核心を突くように告げる。
「斥候からの情報で分かってるとは思うが、明日は闇騎士だけでなく、恐らくベルファイアタイラントやドラゴンも来ると思う。今のこの戦力で明日を持ち堪えないと援軍が来ても守るべきものは無い。」
皆が一番危惧してるであろうことだった。デュークは言った、この場で徹底的に叩くと・・・
暫くの間沈黙が続いた。恐らくは皆が一様に考えてるであろう事。それはこのまま守りでいていいのか?・・・
デュークが言った第何幕まで持ち堪えれるかと言い放った言葉。
本当にそれだけの戦力があるのか・・・
その沈黙を打ち消すようにまたバベルが提案する
「待つだけでは、ダメだな。」
全員の視線がバベルに集まる。その視線は一縷の望みを懸けるかのように続く言葉を待った。
その一言は、恐らくここに居る将軍全てが感じてたことではないだろうか。だが現在の戦力で守りと攻めに分散するのは危険では無いかと言う事と責めるにしても、肝心な居所が分からない。
「俺は今から敵本拠地へ侵入しデュークの首を取りに行こうと思う。」
その言葉に、全ての将軍の眼は見開かれた。
ラドルフが確認するようにバベルに問いかける。
「奴の居場所が分かるのか?」
「俺も魔界には行った事が有るが、魔界の行き来にはゲートが必要だ。あれだけの闇騎士を連れてくるには、恐らくあの山かブルーム連合国にゲートが築かれてるはずだ。ゲートは直ぐには築けるものでは無いので恐らく結界で隠されてるとは思うが、スキルで見破る方法がある。」
「だがその魔界の先であいつの居場所が分かるのか?」
「それについては、少し俺に作戦があるんだ、ある人物の手助けが要るが・・・・」
「もしかしてバベルが伝令に連れてくるように追加した人物か?」
「そうだ、話せば長いがそいつは俺の散らばった力の場所が分かるんだ。それを利用する。」
実はバベルはベルランテ帝国に戻った時から考えてた事があった。フレイアの力で逆にデュークの居場所を探せないかと。
恐らく魔界に根城を気付いてると思われるが、あいつの行動がどう出るか分からず、迷っていたが、今なら確実にローレンス王国に攻め入るための準備を魔界でしてるはずだ。敵にしてみればまさか来るとは思ってもいないだろう。
そこを逆手にとってゲートから侵入する作戦を立てていた。
ジュリアにも頼み、フレイアの為に必要なマジックアイテムを帝都のマジックアイテム屋で揃えてもらう事も。
「でもバベル君、デュークを倒したらまた魔界は好き放題にならないかな?」
「大丈夫だ、その時は俺が世界の均衡を守るさ。」
~~~出陣前の帝都にて~~~
「フレイア少し大事な話がある」
「なんだいバベル君から話って珍しいな」
それからアンナには心配されないように部屋を変えて話すことにした。
バベルはバルサーチと闘った後から考えてたことが有った。
あいつが魔界の提督と言う事は根城は魔界で間違いないなと言う事と。
居場所さえ分かれば単身乗り込んでやつの首を取りに行こうと・・・
「フレイア俺はお前には感謝している」
「改まって一体どうしちゃったの?」
「お前は俺の散らばった力を感じ取れるよな?」
「今までで分かったでしょ?」
「単刀直入に言う、デュークの居場所が知りたい」
「もしかしてとは思うけど、やっつけに行くつもり?」
「それ以外に奴の居場所を知る理由があるか?」
「もしかしてとは思うけど・・・案内させるつもりじゃないよね?」
「できれば連れて行ってほしいができるのか?」
「どこにでも転移できるけど、あたしだけしか出来ない。」
「そうだと思ってゲートから侵入しようと思うから魔界の中の案内頼む。大丈夫だ俺が守る、そしてお前は居場所を発見したら戻っていい。」
「その眼は、本気ね・・・わかったわ」
「分かってるとは思うがアンナには内緒だ」
「アンナちゃんがそんな事許すはずないもんね・・・」
そしてバベルは、その機会をローレンス王国に奴が姿を現した時がチャンスだと見出した。
~~~現在の将軍会議~~~
「その人物は先行してこちらに飛ばしてきてるはずだからすぐ合流して今から実行するつもりだ」
「だがしかし、今バベルにここの防衛を抜けられるのは痛いな・・・・」
「そのことについてはいざと言う時の切り札をハクに頼んである。その切り札は今の俺より強いかもしれん。」
「そうなのか?」
「あぁ今は明かせないが、それについては大丈夫だ。」
「確かにバベル殿の言う通りこのまま防衛しててもジリ貧になるのは間違いない」
「そうだな・・・」
そして全ての将軍はバベルの提案に一縷の望みを託して懸けることにした。
バベルは皆が納得してくれたのを確認し、皆に約束した。
「必ず奴の首は取って見せる、そうとなれば時間が惜しい。すまないが行動に出る。」
すぐさまバベルはハクに昨晩話したデューク討伐の作戦を実行することを話し、万が一俺が失敗して防衛に間に合わない場合は白虎の要請を頼んだ。
そしてすぐにフレイアと合流するため駆けた。
今のバベルのスピードであれば合流するのもすぐだった。
そしてすぐさまフレイアを小脇に抱え走った。
「ちょっとこれじゃ完全に拉致られた幼女ですけど・・・」
「すまねぇ、時間が無いんだ堪えてくれ。」
バベルの駆ける速度は速すぎて他の人には何が過ぎ去ったか捉えることは出来ないであろうが・・・
そしてすぐさま国境砦を通過し目前のブルーム連合国に向かう山に入りシャドウを展開する。
そうしてしばらく山を駆け抜け探索するとやはりゲートから漏れる魔界の気配を察知した。
「フレイア頼んでたもの持ってきたか?」
「ハイハイこれね幻術看破の魔法スクロール」
「良しこれで気配のするところを探せばゲートがあるはず」
【ディテクト】
「やはり幻術で隠してやがった。これから魔界に入るぞ」
そう言ってフレイアを背中に負ぶって紐で結んだ。
「なんですかこのプレイは?」
「仕方ねーだろ敵がいたら手が空いてねーとな。入ったらすぐにデュークの居場所探ってくれ」
そしてバベルはシャドウを展開しながらゲートをくぐる。
人間界には見張りは居なかったが中で待ち受けてる可能性は多いに高い。
やはり見張りが4人いた。
すぐさま見張りの息の根を止め、あたりの安全を確認する。
「大丈夫の様だな、始めてくれ」
「あった、東の方角」
「分かった極力近くまで同行してくれ確実な場所を確認したい」
そしてバベルはシャドウを展開しながら周囲に注意し慎重に進む。
暫く進むと要塞が見えて来た。
「あの要塞か?」
「そう、たぶんあの中」
「やはり近い所にゲート建ててたな、フレイアはここまででいい」
「つ、ついて行こうか?」
「無理すんな、もう帰れ」
「バベル君も無理しないようにね」
「大丈夫だまかせとけ」
そうしてバベルはフレイアをおろし、単独潜入することにした。
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