第48話 決戦の場はローレンス王国



 次の日の朝

早速国境付近の砦まで行くことにした。いずれにしろローレンス王国に言い渡されたリミットもあと数日なので、敵の侵攻は避けられない。ならば早めにしろ砦までいって備える事にした。


さすがにローレンス国でも緘口令が敷いてあると言え、隣の国が侵攻されれば否が応でもその噂は広まり王国の民たちにも動揺が走っていた。

しかし、ベルランテ帝国兵一万ラグナロア共和国兵一万ローレンス王国兵2万の計4万の兵が国境に向けて進軍したのである。

それを見た王国の民はその希望にすがる様に熱烈な声援を送ってくる。その声を受け兵たちは、必ず守り抜くという自信と信念に満ち溢れた顔で進軍していく。


その国境まで進軍するにあたり通る町や村で熱烈な声援を受ける、どの兵士も下を向いてるものは居ない。

いざ決戦となるであろう国境の砦をしっかりと見据えた強い眼をしていた。


そうして翌日に国境の砦に連合軍は到着した。

まだ魔族や魔物の姿は見えなかった。

その日は、兵を休ませる事にし、各国の将軍を集め作戦会議が開かれた。

ラドルフがバベルに問いかけた。

「あのデュークと言うのは本当に魔族を引き連れてくると思うか?」

「来るのは間違いないだろうな、ただ敵の戦力が見当もつかねぇ」

「ボストール将軍、ブルーム連合国の状況は何か情報が入ったか?」

「言おうか迷ったが、正直に言おう、想像を絶する有様だったらしい。遠目で確認してもあちらこちらで火の手や煙が立ち込め、完全に焦土と化してるようだ・・・」


ラドルフ将軍が悟ったように言った。

「抵抗すれば容赦はないって事か」


「しかも斥候の話ではヘルファイアタイラントが複数にドラゴンらしき物まで確認されてるようだ」


そこに、共和国のヴォルグ将軍が一縷の望みをかけたように言う。

「だが、あのデュークと言うものは言ってたよな焦土と化した国を作るつもりはないと・・・」

「たしかに言ってたな。おとなしく国を明け渡せと言う見せしめかも知れんな・・・」

「いずれにしろ焦土と化そうと魔族に支配されようと未来はないな」

「そうだな・・背水の陣か」

「もし魔族が現れたら援軍を要請した方がいいかもしれんな」

「そうだな、いずれにしろここで止めなければ終わりだな」

「後は作戦だな、この砦を抜かれたらもうその時点で終わりだ」

「どう死守するかだな」

「砦に結界師を集めて結界で守るのはどうだ?」

「ただ魔族の侵入を防ぐほどの強い結界となると長くは持たんな」

「その間に殲滅しないといけないって事か」

「後は敵の戦力がどのくらいの物か・・・」

そうしてバベルが言った。

「前回の襲撃で分かってると思うが闇騎士は多数来るだろう。それにタイラントやドラゴン等来たら、普通の兵じゃ到底太刀打ちできねー。まずは魔法ぶっ放してくれたら、俺がデカイのを潰しに行く、後の漏れて来たのを皆でなんとか止めて欲しい。」


その日はいったん解散し明日に備えることにした。

その夜バベルはハクの元を訪れてた。

「ハクもう寝たか?」

「何か用かな?」

「いや、ハクにはこの人間の戦は関係ないからなと思ってな」

「関係なくはないぞ、この地が魔族に支配されるとなったら父上も悲しむ」

「そうか・・・」

「いざとなれば、父上にも来てもらうつもりだ」

「来れるのか?」

「我らは神通力が使えるからな、呼ぶことはできる」

「だけど白虎はあの連峰から出れないのではないのか?」

「あの連峰から出ると不死身ではなくなるのと年を取るから極力出ないってだけだ。」

「そうなのか?」

「あの霊峰で霊気を養っているのだ、その霊気の届く範囲があの連峰なのだ。」

「それで霊峰にいる内は聖獣は不死身なのか」

「これは言うなと止められていたが、父上は過去に何度か山を下りようとしたことがある。」

「それは俺が白虎と出会い鍛えて貰った後か?」

「そうだ、バベル殿の悪いうわさが広まってた時だった・・・」

「それほどまでに俺は・・・」

「あーバベル殿の事はいつも気に掛けていた。」

「そうだったか、この戦が無事に終われば一度必ず行こう、美味い酒でも持ってな」

「そういう事だから、バベル殿は何も俺に気を使うことは無い、これは俺の闘いでもある」

「ありがとなハク」

「礼には及ばぬ」


本当はバベルはハクには霊峰に帰ってもらおうかと思ってたが、その必要のない事を確認しその日は休むことにした。



___次の日



国境の砦にて陣を張り魔族を警戒する。だが魔族の来る気配は無かった・・・

その日は夏の終わりを告げる涼し気な風が吹く秋空だった。

もしかしたら魔族はもう魔界に帰ったんじゃないかと思うくらいに気持ちのいい空だった。

そしてその日は、何も起こらなかった・・・




だが次の日に一報が舞い込んできた。

見張りの為あちらこちらに配置してある斥候から山に蠢く魔物や闇騎士が確認されたと。

そして、国境砦の全軍に警戒体制の指示が飛び、その場に緊張の色が走る。


国境向かいの山の方角から闇が広まって来た・・・


とうとうその歓迎されざる者達は姿を現したのである。

それは、百戦錬磨の兵士達も思わず寒気がするほどの死の具現化したような髑髏の騎士達の集団・・・

ざっと見積もっては千は下らないだろうと思われる。


バベルがラドルフに告げる。

「恐らくあの闇騎士達以外にも来るはずだ、この兵力では持ちこたえれないかも知れない。即刻援軍要請出した方がいい」

「分かった、とりあえず伝令鷹を帝国に飛ばす」


そしてヴォルグ将軍も共和国に要請を飛ばした。



そしてその死の具現化した軍団の中から奴が姿を現した、デューク・ロック・モンティエロだ。

「皆さんお揃いのようですね、出迎え有難うございます。」

「ローレンス王国に与えた期限が来ましたが返事は如何に?」


そしてボストール将軍から指揮が飛ぶ。

「全軍構えええええ!!」


「なんと愚かな、この国は残したかったのですがねー仕方ないですね」


そして不気味な笑い声を上げながらデュークは、言った。



 「それでは、第一幕、開幕といきますか、せいぜい楽しませてくださいね」




 遂に魔族との決戦の火蓋が切られた・・・



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