最終章 最終決戦

第47話 出陣


 そして出兵の朝


 バベルは、アンナの部屋に向かっていた、迷っていたのであるアンナを連れて行くかどうか・・・

「おはようございます、バベル様」

「あぁ、おはようアンナ」

「どうしました?」

「今日俺はローレンス王国に向けてラドルフ達とここを発つ」

「知ってますよ、もちろんついて行きますけど」

「今回はダメだ、ここに居てくれ」

いつになく真剣な表情にアンナも戸惑った。

「地の果てまでもお供しますと誓いました・・・」

「それは、分かってるが、今度は嫌な胸騒ぎがする。」

「それならば尚更行きます。」

「ローレンス王国が戦場と化すことも考えられる、そこに連れて行くのは危険すぎる、頼むからここで俺を待っててくれないか?」

「・・・・」

アンナは、考えた。今までにここまでバベルが着いて来る事を拒んだことは無い、魔界島に行くことも承諾してくれた。それだけ、危険な所と判断したのであれば、自分は足手まといにしかならないだろうと想像できる、バベルの足手まといになるくらいならここで帰りを待つことに決めた。

しばらくの沈黙の後、アンナは重い口を開き始めた。


「わかりました・・・必ず戻ってくると誓ってください。」

「あぁ、必ず戻る」


そして、そっとアンナはバベルに抱き着いた、バベルも優しく抱きしめた・・・


それから、部屋でバベルが出国の準備をしてるとジュリアが入って来た。

「どうだ準備は出来たか?」

「あぁ、いつでも行ける」

「そうか・・・バベル行く前にな父上がお前に会いたいと言ってるんだが」

「やめてくれよ、俺を送り出すのは絞首刑台にするつもりかよ?」

「あはは、父上もお前の事を良く知ってるからそんな事にはならんと思うが」

「いったい何の用だよ」

「お前の功績を讃え、爵位を授けたいそうだが・・・」

「そんなのいらねーよ」

「あはは、やはりそう言うか」

「気持ちだけ有難く受け取っておくよ」

「わかった、父上には私から何か理由つけて断っとく」

「すまねぇ、それとジュリアに一つ頼みごとがあるんだが」

「なんだ、遠慮なく言ってくれ」

バベルは、今回の遠征には、アンナをおいていく事を説明し、ここにバベルが帰ってくるまで居させてもらうよう頼んだ。

「分かった任せろ、しっかり警護も付けて守ってやるから安心しろ」

「そうか、これでなんの心配もなく戦いに集中して行ける」



そしてバベルはローレンス王国に向けて発った。

城を出るとやはり帝都にはたくさんの人達が激励のため見送りに集まってくれてた。

皆が必死に声援を送ってくれる、やはり祈りを捧げてくれる者もいる、その声援を受けて兵たちもどこか誇らしく自信に満ちた顔つきで国を発って行った。


ローレンス王国に行く道中バベルはラドルフと話した。

昔の事、魔王を倒して女神に力を奪われたその当初は、力を取り戻したら全員纏めてぶっ飛ばしてやると憤ってた事。

そして森で行き倒れてた所をアンナに救われ、生き方を変えて一歩を踏み出した事。

何度か昔の自分に戻りそうになったけど傍にアンナが居てくれたおかげで、今の自分が有る事。

そのアンナが幸せに暮らせる為ならいくらでも戦える事。

延いてはそれが国の為となると教えられたことは今でも胸に抱いてる事。


ラドルフもまた自分の事を色々と話した、そうやって二人は多くを語り合いながらローレンス王国に向けて進んだ。その表情は明るく希望に満ちてる様だった、それを見た周りの兵も表情が明るくなるようだった。そしてラドルフは言った。


「知ってるかこの帝国の兵の中にはお前の事を英雄だと憧れる奴も少なくない事を」

「俺は、まだそんな大した奴じゃねーよ」

「自分で分かってないだけで、大した奴だよ」

バベルは、照れくさそうに頭を掻いた。

「実際この出兵してる兵にも勇気をあたえてるんだぜ、お前が付いて来てくれる事が。」

「俺はデュークと決着をつけると言う目的もあるしな」


そこに、カズヤとタタランティーノもやって来た。

「久しぶりでやんすねバベル殿」

「あー果実園以来だな」

「今回こそ我が筋肉の出番ですな」

タタランティーノがマッスルポーズを取ってよくわからんアピールをし始めた。

「あーみんな頼りにしてるよ」

これからの激戦も何するものぞと言わんばかりに意気揚々としていた。


数日後ローレンス王国に着いた帝国兵の一団は、暖かく歓迎された。

ローレンス王国の兵を一手に纏め上げるボストール将軍が出迎えてくれた。

ボストール将軍はローレンス王国の中でも数少ない名将として知られていた。

その顔つきは誠実で如何にも騎士を思わせる精悍さを漂わせていた。


「ようこそ、遠路遥々我がローレンス王国の援護、誠に感謝する。」

ラドルフ将軍ががっちりとボストール将軍と握手する

「久しぶりだな、ボストール将軍」

「ラドルフ将軍に来ていただけるとは何とも心強い」

「俺だけじゃないぞ、噂の英雄バベルも一緒だ」

そう言ってラドルフは、ボストール将軍にバベルを案内した。

「おぉ、そなたがバベル殿か、いはやは心強い、来ていただき誠に感謝する」

そう言ってボストール将軍は両手でバベルの手をがっちりと握手してきた。

「バベルだよろしく頼む。それとラドルフ、その英雄は頼むからやめてくれ」

バベルは少し照れたように、頭を掻いた。

「何をおっしゃるバベル殿の武勇はこのローレンス王国にも届いている。」


そして早速で悪いがと言って今の状況を教えてくれた。現在ブルーム連合国は、やはり魔族の侵攻を受けているとの事だった。ブルーム連合国とは小さな国三国が一つになって出来た国でローレンス王国との間に大きな山脈があるせいでほとんど親交は無く現在の進行状況ははっきりとわかってないが、おそらく全域が陥落寸前で有る事。数日後はこの国に魔族が侵攻してくる可能性が高い事を説明してくれた。

ローレンス王国としては、ラグナロア共和国も到着次第なるべく早くその国境付近の守備を固めたいとの事だった。


そしてその日のうちにラグナロア共和国も到着し、その日は、ローレンス王国の王都にて歓迎式典が開かれ両国は熱烈な歓迎を受け来る日に向けてお互いの絆を深め合うように、酒を酌み交わした。



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