第44話 魔王軍精鋭オーガ部隊長
~~~ 一ヵ月程前の魔界
「何、魔王様がやられただと・・・馬鹿な・・・」
「なんでもバベルとか言う人間だそうです」
「ほぅ、人間にそんな骨の有る奴が居たとはな」
そう言って魔王軍精鋭オーガ部隊を纏める、オーガ種の最上位ジェネラルオーガのバルサーチ将軍は憤っていた。
そのバベルと言う人間を倒すべく人間界に行くと言って魔界を出て行ってた。
~~~
バルサーチは、武士道精神を持ち合わせていた。人間といえども逃げて行くような奴は、殺すに値しないと強者との戦闘を好み、弱者は相手にもしなかった。
人間界に来てみたが、どの人間も逃げて行くものばかりで戦おうともしない事につまらなさを感じていた頃、森の中の湖の近くで一人の少女と出会う。
その少女はその姿を見ても逃げるそぶりを見せない。
バルサーチは、その少女に近づいていくが少女はキッとバルサーチを睨んで両手を開いてその前に立ちふさがったのだ。
「俺が怖くないのか?」
そう言ってバルサーチは少女の前に拳をぬぅっと突き出した、その拳は少女をすっぽりと覆うくらい大きかった、少女はその拳を小さな手でパチンと叩いて言った。
「ここはダメなの!」
「そこに何があると言うのか、命をかけて守る程のもがあると言うのか」
そうして少女をゆっくりどかして行ってみると水鳥が巣を作って卵を温めているようだった。
「なんだこれを命懸けで守っていたのか?」
良く見るとそこにはすでに孵化した雛もいた、それは必死に生きようと小さな声でピィピィ泣いてた。
「ね、かわいいでしょ、もうすぐ全部出てくるのよ」
その光景を見てバルサーチはあっけに取られた、人間の子供と言うのは、なんと純粋な事かと、魔物ですら逃げて行くこの俺にこの小さき吹けば飛ぶような生き物が、立ち向かうなど・・・
そうしてその場を後にしたバルサーチだったが、どうもその少女が気になってちょくちょく湖に来ては、その少女の姿を探した、そうしていつしか、その少女を肩に乗せて遊ぶほどになった。
~~~
その少女はバルサーチの為に森でキノコを採って、持って行った。
そのキノコの中には毒の有る物も交じってたが、バルサーチはそれが嬉しくて旨い旨いと全部食べた。
そのキノコは猛毒だった・・・
バルサーチの容体は次第に悪くなり、とうとう動けなくなった。
「ごめんなさい、あたしのキノコが悪いキノコだったのかも」
「そんな事は無い、すぐに治るから大丈夫だ、早く家に帰れ・・・」
それを昨晩から看病してたのである。
~~~
バベル達はマリを探して森の中に入っていた、これと言って魔物の気配は無く、たんなる迷子なんじゃねーかと言って探索してたが、しばらくしてバルサーチの気配を察知した。
「何やらデカイ気配を察知したが、動く気配は無いな」
そうして進んで行くと横たわるジェネラルオーガと、少女を見つけた。
「あれか?」
バベル達は目を疑った、ジェネラルオーガに寄り添う一人の少女が泣きながら看病してるのだ。
「お前がマリか?」
「そうだけど、お兄ちゃんだれ?」
「バベルだ」
「な・・に・・バベルだ・・・と」
そうしてバルサーチはよろよろと立ち上がった、その姿は正しく鬼の如くであった、体調は3mは有るだろうか赤黒い体にいくつもの傷跡が百戦錬磨の強者で有る事を語ってた。
「ダメ、バルちゃん今病気なの」
「ど、どういう状況・・・」
小さな少女が人々からも魔物からも恐れられるジェネラルオーガを体を呈して庇ってるのである。その状況にバベル達は困惑した。
「マリどくのだ、俺は戦わねばならん」
「ダメ、バルちゃんは寝てなきゃ、マリのキノコで病気になったの」
「・・・・」
恐る恐るアンナはマリに聞いてみた。
「マリちゃんは、自分からここに来たの?」
「うん」
「お母さんや村の人が心配してるよ?」
「バルちゃんがあたしのせいで病気になったのー」
そしてマリはバルサーチは友達で、バルサーチのためにキノコを採って行って食べさせたら急に具合が悪くなったことをゆっくり説明した。
それを聞いたバベルが困り果ててマリに言った。
「とりあえず、お母さんが心配してるからマリ、家に帰るぞー」
そうしてアンナがマリを抱きかかえて、その場から立ち去ろうとした時
「待て、バベル・・・俺は魔王軍精鋭オーガ部隊率いるバルサーチだ・・・俺と闘え」
「闘えって、お前死にそうなんだけど・・・それにマリの様子みてると悪い奴には見えねー」
「俺はお前と闘うために・・・魔界から来たん・・だ」
「分かった、とりあえず、マリ連れて行くけどまた来るからそれまでに病気治しとけ」
そうしてバベル達は、マリを村に連れ帰った、母親や村人たちからは大層感謝されて、その日はその村の集会場で宴を催してくれるとの事だった、最初はそんな大層な事じゃないと断ったが是非にと母親や村長が聞かないので、せっかくだから受けましょうとアンナが宥めて集会場に向かった。
「バベル様この度は、本当に有難うございました、村を上げて感謝いたします。」
「いや、大したことしてないし、まだ鬼はいるんだけど・・・」
村人全員が驚いた表情をした、そしてマリのこれまでの経緯と、
とりあえず鬼はまだいるがこちらから手を出さなければ、
村人に危害を加えることは無いであろうことを説明した。
そして悪い奴じゃないがもう一度明日、その鬼のいた湖に行くことを説明した。
なんだかやりきれない気持ちのバベルだった。
「バルちゃんいじめたらだめだからね」
マリがトコトコやってきてバベルの耳元でこそっと言った。
「大丈夫だ、あいつには家に帰ってもらおう」
マリは絶対だよっと言わんばかりの顔をした、そしてニコっと微笑んで母親の元へ走って行った。
バベルはいったいどうしたもんかと頭を悩ませた、あのオーガジェネラルは言って、はいそうですかと帰ることはないだろうし、かと言って行かなければ、たぶんあそこでずっと待ってそうだし、ほとほと困り果ててその日はそのまま眠りに就いた。
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