第45話 激闘


 次の日そのまま集会場で寝てしまったバベルはアンナに起こされた。

「おはようございます、バベル様」

「あたた、おはようアンナ」

「最近飲みすぎじゃないですか、バベル様」


ようやく起きたバベルにアンナは水を手渡した。

「バベル様今日はどうするんですか?」

「どうするかなー行かないわけにはいかないよな・・・」

バベルはアンナに貰った水をごくごくの飲み干し、頭を抱えて考えてる様だった。

「帰ってもらうように話してみたらいいんじゃないですか?」

「あれは素直に帰る奴じゃないぞ、魔族でも珍しいタイプだな」

「私が行って話してきましょうか?」

「やめとけ、この村にでも来たらややこしくなる。」


そうして、とりあえずバベル達は昨日の森の中の湖まで行ってみることにした。

バベルはあまり乗り気じゃなかった、恐らくあれは魔王の部下で忠誠心に篤い騎士みたいなタイプでしかもかなりの腕前であろうと、一目見て見抜いてた。


乗り気でないのはバルサーチが強い事では無く、魔界から来た原因である。

バルサーチがここまで来た原因はバベルが魔王を倒したことが原因であろうことは、容易く想像がつく。しかしマリのなつき様を見てると、昔のバベルより随分ましなようにバベルの眼には映ってたのである。


そんな事を考えながら森の中を歩いていくと、湖のほとりで仁王立ちのバルサーチが待っていた。

その表情からは、昨日の苦しみ様が嘘の様に静かにその体内に闘気を充満させてるのが、分かった。


「どうだ、治ったのか?」

「手間かけさせたな、礼を言う」

「なぁ、大人しく魔界に帰ってくれねーか?」

その鬼のような顔が一瞬笑ったような表情を見せた。

「主の敵を目の前にして帰ると思うか?」

「だよなぁ・・・」

「これ以上の言葉は無粋」


魔王軍の一端を担うバルサーチと魔王を倒したバベル。その戦いは必然であった・・・

バベルはハクたちを下がらせた。何があっても手を出すことを禁じた。


そして両雄は対峙した・・・


【バベルマキシマイズ】

【オーラディフェンス】

【バベルブレイド】

バベルの闘気が一段と高まる。それに応じてバルサーチの闘気も一段と高まる。

先に駆けたのはバベルだった。そのスピードはもはや戦場を翔ける矢の如く飛んでいく。

バルサーチは全く避ける素振りを見せず、敢えて一撃貰ってもバベルと打ち合うつもりかその両手を大きく広げる。


懐に素早く潜り込み一撃を与えるバベルであったが、それをものともせず、掴みにかかるバルサーチ。

 それを躱し、後ろに回り込むバベルであったが、バルサーチは動きを読んでいた。


後ろに回り込んだ瞬間のバベルにバルサーチの裏拳が飛ぶ。その速度はどうやったらこの巨体から繰り出されるのかと言ったスピードで、躱しきれないと見たバベルはガードするが、バルサーチはその裏拳の勢いを利用して回し蹴りを放ってきた。

何と言う格闘センスだろうか、百戦錬磨の経験であろう。

その丸太の様に太い足がバベルを襲う。


その回し蹴りは、流石にガードしても吹き飛ばされた、木々を薙倒しながら吹っ飛ばされるバベル。

すかさずそれを追い追撃を与えんとするバルサーチ、まさしくその形相は鬼の如く襲い掛かる。


バベルもすぐに起き上がり迎撃態勢で迎え撃つ。二人のスキルが激しくぶつかる。


【バベル波動】

【オーガインパクト】


ドゴオオオオオオオオン!!


そのバルサーチから繰り出された一撃は、今のバベルの力を上回っていた、またもや弾き飛ばされるバベル。

精鋭オーガ部隊を率いるバルサーチの打撃力は、パワーだけなら魔界随一であった。

「流石は魔界の将軍やるなー」

「お前の本気もそんなもんでは、ないんだろ」


バベルは吹っ切れた、どこかこの男と闘う事に負い目を感じていた。主のかたきの為に軍を率いず単身乗り込んで正々堂々と勝負しに来ていたことに・・・

だがバルサーチの強さがバベルの本気を呼び起こした。


先ほどとは比べ物にならない速さだった、先ほどのが矢ならもはや弾丸である。

その弾丸が突っ込んだ先でスキルを放つ。


【バベル波動】ドゴオオオオオオン!


0距離からのバベルのスキルがバルサーチにヒットする、そのまま後ろに押し戻されるバルサーチ。

口元にうっすらと血がにじむのが見受けられたが、まるで効いてないと言わんばかりにバベルに突進し回転胴回し蹴りの様なスキルを放つ。


【オーガスパイラルハリケーン】


それを見て後方に飛びのくバベルであったが、その蹴りから放たれた風圧が竜巻となってバベルに襲い掛かる。


その竜巻に巻き込まれ舞い上がるバベル、それを見たバルサーチが勝機とばかりに、空中の落下してくるバベルに走っていき飛び掛かって捕まえる。そのままバベルの体を掴んだま地面に叩き付ける。


【ファイナルオーガインパクト】


ドシイイイイイイイン!!!


バベルが地面に突き刺さる・・・吐血するバベル・・・

(つえーな、魔王なんかよりよっぽど強いんじゃないか・・・)

その時バベルは思わずこのまま寝てようかと思うくらい効いた・・・


そしてゆっくりバベルが立ち上がる。


「これを食らって立ち上がって来たのはお前が初めてだ。」


「へっ、あんた魔王より強いんじゃないか」


アンナはその闘いが怖かった・・・


バベルが負けることは考えてなかったが、それ以上にバルサーチは強かった。でもアンナは最後までしっかり見届けなければと、目を背けず震えながらその行方を見守った。


(まだだ、負けてねぇ、捕まったらだめだな、止まらずに動き続けるしかないな)


そしてバベルが飛び込む、敢えてスキルは放たずブレイドで突き刺す、強靭なジェネラルオークの体にはなかなか突き刺さらないが、溜めの有るスキルを放つとあの巨体で素早いバルサーチに捕らえられる。

当てて離れるヒット&アウェイで行く戦法をとる。さすがのバルサーチもトップスピードに乗ったバベルは捕えきれず攻撃が空を切る。


そうして小さなダメージを与えて行き、塵も積もれば山となる・・・。

その闘いの中でバベルは闘う楽しみを思い出してた。


次第に傷が増えて行くバルサーチであったが、強靭なジェネラルオーガの肉体には一発は大したダメージではないかもしれない。

だがダメージは積み重なり、体力を奪っていく、そしてチャンスを伺う


バベルが頃合いを見てスキルを放つ

【バベル波動】ドゴオオオオオオン

後ろにのけ反るバルサーチ、その距離を詰める様にバルサーチもスキルをお返しする


【オーガスパイラルハリケーン】

この時を待っていた、必ずスキルを撃つときその技が大きければ溜ができとなる。

そこに最大の一撃をカウンターで決める。


【ライトニングバベル】

落雷が落ちたかのようにバベルの体が発光する。


ズキューーーーン!


それは音すらも置き去りにする速さでバルサーチのスキルの出始めを潰す、そして胸を貫いた。


静寂が勝負の行方を語ってた・・・


ゆっくりと崩れ落ちるバルサーチの巨体・・・


「見事・・だ・・・さぁ、とどめを・・・」


「力だけは返してもらう」


___テッテレー【バベルハリケーン】獲得___


ゆっくりバベルが近づき手を差し伸べる


「情けは受けぬ・・・」


「情けじゃねーアンナ、フレイア治療を頼む」


元よりオーガの回復力なら放っておけばそのうち回復するだろう

「なぜ助ける・・・」


「わからねぇ・・・わからねーけどあんたをここで死なせたくない。」


「いいのか、俺が戻ればいずれは、また敵として戦う事になる」


「あぁ、それで構わない」


その時バルサーチがわずかに微笑んだように見られた。こいつに負けるのであれば、仕方ないと納得したかのような表情だった。


「一つ忠告して置く、デューク総督が魔界の四天王を引き連れてやってくる。」


「総督、あいつが魔界の・・・?それに魔界の四天王も従ってるのか、あいつら仲悪いはずなんだが、それが従う?・・・」


「デューク総督に従わない魔族はいない、理由は話せないがな・・・」


「まだ奴には何か秘密がありそうだな・・・」


「これ以上は・・・・また相まみえようぞ、その時までつまらぬ者にやられるなよ」


「おまえもな」


そしてバルサーチは口笛を吹いた、どこからともなく魔界のナイトメアホースが駆けて来た。

それに跨り魔界へと帰って行った、その後ろ姿は負けてなお清々しかった・・・


激戦だった、流石は魔王軍の精鋭オーガ部隊を率いる将軍、その闘いぶりは力強く、正々堂々としてて、好感すら感じられるほどの漢だとバベルは闘いの中で感じた。




そしてバルサーチの最後に言った言葉を思い出しながら村に戻って行った。








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