第42話 三国同盟の始まり


 その頃ベルランテ帝国とラグナロア共和国との休戦の調停が行われようとしていた。


ローレンス王国の王都では、ローレンス王国が間に入りベルランテ帝国とラグナロア共和国の休戦の調停を行う場を設けていた、出席者はローレンス国王である、『クリストファー・ロイ・ローレンス国王陛下』、ベルランテ皇帝の『シュニッツアー・ロア・フォールン・ベルランテ皇帝陛下』、ラグナロア共和国の『ユリ・アルネ・クリスタル女王陛下』。

そして各国の皇女並びに皇太子が出席していた、


「この度は、このローレンス国にご来賓頂き、有難く思う、我がローレンス国もこの両国の記念すべき日に立ち会える事はこの上ない光栄な事、願わくはこの休戦から三国が手を取り繁栄していく事を切に願う。」


 ローレンス国王も両国とは付き合いのある国として、和平を望んでいた。


ベルランテ帝国もラグナロア共和国もこの前の戦でのバベルの呼びかけと新たなる強敵の出現により、休戦の意思はあったが、なかなかその重い腰が上がらずにいた。

それを見かねた、ローレンス国王が今やらねば、このような機会は二度と訪れぬであろうと立ち上がってくれたのである。


そのローレンス国の仲立ちがあったからこそ、この両国の長い紛争からようやく休戦調停が実現した。


そしてシュニッツアー皇帝とユリ女王は、ローレンス国王が見届ける中休戦にサインしたのである。


「いやはや、このような輝かしい日をもたらしてくれた、第一の功労者のあの暴勇バベルにも感謝せねばならないな。」ローレンス国王陛下が自慢の顎髭をゆっくりと撫でながら穏やかに微笑んで言った。


「今や、あの男は昔の暴勇と呼ばれた男の眼では無かった。」

「そうだった、シュニッツアー皇帝陛下はもう会われたのであったな、余も会ってみたいものだ。」

「私共のヴォルグ将軍も、あの男は信じるに値する英雄だと賞賛しておりました。」

「いやはや、大した男だ・・・」


そうしてベルランテ帝国とラグナロア共和国の休戦協定はローレンス国が見守る中無事に終えたのである。

そしてその後、ローレンス国王の提案により、デュークなる者が率いる第三勢力に対する共闘の約束がなされたのである、これが後に語り継がれる三国同盟の始まりでもあった。


その日はローレンス国挙げてのお祝いの日となった、人々は一時の平和の訪れに歓喜したのである。



~~~~~~・~~~~~



 

一方そんな歴史に残る一場面のきっかけとなった男は、のんびりと魔界島から船に揺られて港に向ってたのである。


「強かったなーバオー」

「とても強く、そして暖かい人に感じました。」

「仲間思いのいい奴だったな・・・」


 バベルはバオーの事をどこか自分に照らし合わせて見てたのかもしれない、一人であの魔物しかいない島で強く生き抜き、そして周りの魔物たちに認められながらも、強さを求め、逞しく生きていることを。


「しかし、あんた達は、やっぱり流石だな、あの島から無事に生還するなんて・・・」

「んーおっさんもしかして俺ら帰ってこないと思ってた?」

「そんなわけではないが、無事ではないだろうなっと思ってたが、ぴんぴんしてるから」

「強かったぞーあいつら、この前村に最後に来た魔物と同じのもいた。」

「あの山みたいなゴリラか!?」

「そうだが、ゴリラより獣人いたろ、あいつのがつえー」

「あのでかいゴリラよりか!?」

「その強いバオーさんに、バベル様は勝ってましたけどね。」

「英雄バベル・・・そう言われてるのも頷ける。」

「そんなたいした者じゃねーよ」

「あんたら知らないのかい今日ローレンス王国で帝国と共和国の休戦協定が結ばれたって、なんでもその功労者があんただって噂じぇねーか」


 バベルは今や時の人だった、町の人は皆バベルの噂話をし、両国を休戦に導いた英雄だと讃えるものや、四聖獣の白虎と友達で、その戦闘力は並ぶものが居ないほど強いが、決して偉そうではなく本当に生まれ変わったと評判は上々だった。


「・・・・」


バベルはなんかむず痒い感じと、今までそんな事に期待してなかった自分に戸惑っていた。


「戦争が一時的にでも終わるのはいい事だな、帝都のやつも共和国の将軍もいい奴だった・・・」


「こんな話してると、あんたは全然偉そうじゃないし、話しやすいのに・・・すごい人乗せてるんだよな。」

「だから、そんなんじゃねーって」

「もっとご自分に誇りを持ってください、英雄バベル様、ウフっ」

「アンナてめー・・・」

「あたしも鼻が高いよ、バベル君がこんなにも誇らしく成長するとは!」

「バベル殿は父上の友であり、尊敬に値する人だ。」

「おまえらーいい加減にしろよ、人を煽てやがって・・・オラオラ」

「ちょっとバベル様危ないです。」


 そしてしばらくして港についた、バベル達は船賃を払うと言ったが、バズはいい自慢話が出来たと言って、受け取らなかった。バズの表情は誇らしくいい笑顔をしていた。


すっかり日も落ちてしまったので、その日は港町の宿にて魔界島からの無事な帰還と英気を養うように小さな祝勝会をやって、次なる旅に向けて休んだ。



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