第21話 過去の清算と制裁
その夜バベルを連行した兵は帝都に到着した。
帝都に入るにあたって再度手枷をされた、今のバベルにとっては無意味であったが、兵士に、そうでないと自分の首が飛ぶと泣きつかれたために、しぶしぶ手枷をして入ることにした。
そして一晩拘留されることになった。
その頃ハクとアンナも帝都に来ていた。その後のバベルがどうなるか、情報収集する事にした。バベルが連行されたという噂はすでに帝都にも広まりつつあった。やはりそこでもバベルの制裁の行方は注目の的になりつつあった。
都の中を歩けば至る所、その話で持ちきりだった。
バベルの死罪になるかどうかについては、賛否両論だった。
このベルランテ帝国は強き者を尊ぶ傾向があるからだ。
ハクとアンナは死罪は免れる可能性が高いとみて動向を見守りつつ、城の方へ向かった・・・
~~~翌日~~~
そしてその日は来た。
朝、兵士は、バベルに皇帝陛下より、呼び出しが出たことを告げ連行する。
今のバベルには何の意味も持たぬが、厳重に鎖で体を拘束され手枷を付けられ、
バベルは皇帝陛下の前へ突き出された。兵士から槍で首根っこを押さえこまれ跪く様命じられる。
「余が、『シュニッツアー・ロア・フォールン・ベルランテ』である。バベルよ表を上げよ。」
バベルがゆっくりと顔を上げる。その眼は真っすぐに皇帝陛下をみた。
シュニッツアーは、そのバベルの眼を見たときに想像してた暴勇さを感じられなかった。むしろ決意を固め洗礼された騎士のような覚悟を感じた。
「お前は本当にあの暴勇バベルと呼ばれた男か?」
「そう呼ばれてた事もある。」
「口を慎め、皇帝陛下の前だぞ!」
陛下が手を少しあげ兵士を制する。
バベルは耐えた。一瞬鎖を引きちぎって暴れたくなる衝動を・・・
「余には、お前がそのような男には見えないのだが、それにここに来るときも一切の抵抗をしなかったと聞いてる、何があったのだ?」
そしてバベルはこれまでの経緯を話し始めた。兵士がバベルの口の利き方に動き出そうとしたが、シュニッツアーが制し続けさせた。
バベルは今までに、もちろんこう言った場には、出たことが無い。長い間誰にも従った事は無い。今ここで鎖を引きちぎって暴れるのは簡単だが、それでは今までと何ら変わらない・・・
バベルは過去の己に慙愧に堪えぬ思いを懐き、力を正しき事に行使する事を誓った。
「ふむ、お前の言い分は分かった、だがお前の過去の清算はどうする?」
トクン・・・ドクン・・・
「・・・・・」
「普通なら死罪が妥当だが、余もお前のような強き者を殺すのは惜しい・・・」
その時だった。
一人の女性がツカツカと入ってくる。
皇女『ジュリア・アルメイダ・フォールン・ベルランテ』である。
「お父様、提案があります」
「なんだ、ジュリア言ってみろ」
「私はこの男に一度命を救われました、よってその恩赦として死罪ではなく別の刑を与えては。」
「なに、その救われたというのはいつだ?」
「少し前に、カラコルム連峰の一角の山で、グリフォン討伐に出向いたときに救われました。」
「ふむ、そうであったか、ジュリアの命の恩人でもあるか。」
そう、この皇女は、カラコルム連峰の帰り道でグリフォンと交戦してた女であった。
ジュリアは、男勝りな性格で冒険者の一面も持ち、戦姫として戦場に出る事で有名な皇女でもあった。
「この男を私に預けください、ラグナロアとの戦に出兵させます。」
「ふむ、ジュリアの命を救い、この国のために戦うというのなら民も納得するな。バベルよどうだ、受け入れるか?」
ジュリアはバベルに耳打ちした。
「ここが落とし所よ、分かりましたとだけ言って。」
バベルには何者にも従った事が無い・・・
すべてを放り出しこの鎖を引きちぎろうとしたその瞬間・・・
アンナの顔が思い浮かんだ・・・また会いたい・・・
「・・・分かりました・・・」
バベルはラグナロア共和国との紛争への出兵を余儀なくされた。
そしてバベルは、ジュリアの元へ呼ばれた。
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