第10話 激情のナイフの行方

___強くなった___


その一言がまたアミの怒りを注いだ・・・

「強くなっただと・・・復讐を誓ってどれほどの修羅の道を歩いたか・・・」


 アミが加速する、蹴りが炸裂する。倒れようとするとまた反対から蹴りが飛ぶ。アミの足が見えないほどの蹴りのラッシュで倒れることも許されないバベル・・・



その時だった、ギリリと弓を構えるアンナ。

「バベル様から離れてください。」


「やめろ・・・ア・ン・ナ・・・」


「お嬢ちゃん何するつもりだい弓なんか当たんないよ。邪魔するなら容赦しないよ。」

冷たくアミの口から放たれた言葉には鋭い殺気があった。


「やめてくれ、アンナは関係ないんだ手をださないでくれ・・・」


その言葉がさらにアミに火をつけた。


「オマエガ・・・キサマが・・・それを言うかぁああああああ」


 そう、アミのチームがバベルの首に手を掛けた時に無残にも敗北した。

アミはチームの命乞いをした、必死に・・・

それは聞き遂げられなかった・・・・

むしろバベルは笑いながら楽しむように痛ぶり・・・

アミの悲痛な叫びにも似た願いは聴き遂げられなかった・・・・

その時の光景がフラッシュバックし、アミの怒りは最大限に達した。


 怒涛の連撃とはこのことだろう。


それを見たアンナは死を覚悟した一矢を放った・・・

アミは余裕でそれをかわし、見向きもせずナイフを放った・・・


一直線にアンナの心臓に向かって飛んでいく・・・・




ドン・・・・




辛うじてバベルの体がそれを受けた・・・

そうバベル君ダッシュのおかげだ・・・


「フザケルナ、フザケルナ、ふざけるなぁああああ!オマエは・・・キサマは・・・そんな奴じゃないだろぉおおおお!」


「ス・・・・」


すまないという言葉が出かかったバベル。でも決してそんな安い言葉では済まされないことをアミの強さが・・・アミの憤怒が・・・胸をさしたナイフが・・・語っていた・・・。


 アミは涙を流していた・・・それはアミの怒りを表し、そのやり場のない矛先を堪えるような赤い血の涙だった・・・。


アミはぽつりと溢した・・・


「ハヤッシーすまない・・・・ミンナ・・・・スマナイ・・・・私には果たせない・・・・ーあああああああああぁぁぁっ・・・・・」



アミの絶叫がこだました・・・・それはぶつけ様のない怒りだった・・・


「なんで・・・オマエは・・・あのままのバベルでいてくれなかったんだ・・・・こんなに苦しいならあのままのオマエに殺されたほうがましだ・・・・。」


そういうとトボトボとアミはどこかへ消えていった・・・・


 あまりのアミの怒りに触れ、さらにその心の苦しみを察したアンナは、震えながらバベルに身を寄せた。


「バベル様大丈夫ですか?・・・」


「あぁ・・心配いらねぇ・・・このくらいじゃ死なねぇ・・・」


「あのアミさんの・・・憎しみが・・・怒りが・・・怖かった・・・」


「あいつだけじゃね・・・俺は・・・今までに・・・」


「・・・・」



「これからどう生きるかですよバベル様、さぁ立って。昔のバベル様は私はよくわかりませんが、今のバベル様がどういう方かは、よく知ってるつもりです。」


「あいつの激烈な、憎しみと怒り・・・・どうやったって過去は変えれねぇ・・・」



そうしてバベルとアンナはいったん宿にもどることにした・・・


二人は何もしゃべらなかった、ただゆっくりと沈みかけた夕陽に照らされながら、一緒に寄り添って歩いていった・・・・














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