第9話 過去の制裁



 次の日の朝、アンナの勧めもあって二人は冒険者ギルドに行くことにした。


バベルはあまり乗り気ではなかった、今までの過去があるのだ。冒険者ギルドが、バベルを受け入れるはずがないと知っているからである。そのときはアンナだけでも冒険者登録すればいいかということになり、ひとまずはどんなもんか見に行くこととした。


冒険者ギルドはすぐに見つかった。

そして冒険者ギルドに入ると、やはり皆の視線が集まる・・・

(やっぱりバベル様は有名なんだな・・・)


バベルが有名ということもあるが昨夜の事が噂になっていたのである。


そう、この街でも悪名高きあの山賊一味が一夜にして壊滅したということを、アバシーが自慢げに、妹を助け出してもらった事とあいつらをコテンパにやっつけてくれたことを、あちらこちらで話して町では一躍評判になってたのである。


受付に向かうとすぐに受付嬢がお礼を陳べてきた。

「バベル様でいらっしゃいますね。山賊一味を討伐して頂いたとお聴きしました。ほんとにありがとうございます。」


「お?おぅ・・まぁ討伐はついでだ・・・」


「あー本当でいらっしゃったんですね、ギルド組合始め、この街の者はほんとに感謝しております。」


「そ、そうか・・・」

バベルは感謝されるのに慣れてなかった。てっきりここでも歓迎されるとはおもってなかったので、少々面食らって戸惑っていた・・・


「それでギルド組合からも何らかのお礼をさせて頂きたいと思い検討しようと皆で話してたところです」


「いや、お礼なんかはいいんだ・・・こっちのアンナが冒険者登録をしたいと言うので来てみたんだ。」


「バベル様もでしょ?」


「いや俺はいいんだ・・アンナだけ登録させてくれないか?」


少し申し訳なさそうな顔をする受付嬢。


「アンナ様の冒険者登録はすぐにでも受け付けさせて頂きますが・・・」


そうなのだ、バベルは、超が5個程つく危険人物として全国の冒険者組合のリストに名前が載っているのであった。


少し不機嫌な表情をするアンナ。今までのバベルの行いを間近で見て来て変わろうと努力しているのを一番よくわかっていたから黙って居れずには居られなかった。


「バベル様がだめで、私だけ登録できるというのはなんか不愉快です・・・」


「そういわれましても、本当に申し訳ないんですがこればっかりは私の一存では・・・」


「いや、わかってるんだいいんだ、あんまり受付の人困らせるな・・・アンナだけ登録してくれ。」


「だったら、私も登録しないでいいです・・・」


「おいおい、待てよ昨日あんなに冒険者になるの楽しみにしてたじゃないか、頼むからおとなしくアンナだけ登録して行こう。」


 最初はバベルが昔のバベルじゃなく、とても思いやりのあるいい人になったことを受付嬢に力説してたアンナであったが、バベルの説得もあってなんとか気を取り直してアンナだけ冒険者登録をすることとなった。


 そして、一旦は冒険者ギルドを出ようとした時にそれは起こった・・・


きつね色に日焼けした涼しげな顔立ちにサラリとした栗色の髪を靡かせて鋭く綺麗な目をした女が、ギルドに入ってきた。それは賞金稼ぎのアミだった。


「バベル、この顔忘れちゃいないよねー探したよ!」


 アミは賞金稼ぎで有名なチームを組んでいた。その昔勢いのあったアミのチームはバベルの首に目をつけ挑んだ・・・結果は無残なものだった。アミ以外の皆は殺された・・・


「バベル、あたいはあの時の事は今でも夢にでるくらい覚えてる。あれから泥をすすりながらも必死に強くなるためにどれだけの地獄を乗り越えてきたか、その身に思い知らせてやる、表へ出な!」


「待ってバベル様は昔のバベル様じゃ・・・」


「いいんだ、アンナ。言うとおりにする。」

そして二人は冒険者ギルドを出て人気のすくない広場にて向かい合った・・・


「構えもしないのかい、暴勇様は余裕だね。」


「俺は手は出さない好きにしてくれ。」


「どういうことだよ、ふざけんな構えろ!相変わらず女子供は殺しはしないってか!その余裕いつまでもつか・・」


 アミは素早く懐に入った、それは確かにとんでもないスピードだった。そして、バベルの頬を暗器がかすめる、バベルは微動だにしない。それにさらに怒りがこみ上げるアミ。バベルの横っ面に電光石火のハイキックが入る。思いっきり吹っ飛び、ゆっくりと起き上がるバベル・・・


「強くなったなアミ・・・」





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