第7話 盗人の懇願
それからしばらく町を見て回り、この街には冒険者ギルドがあるという情報を入手
冒険者として活動するれば力を取り戻す機会とある程度の生活資金も得られるので
次の日に冒険者ギルドに行ってみようということになった。
「今日は、そろそろどこかに宿屋でも取りましょうか?。」
「俺はべつにその辺で野宿でもいいが、アンナはそうはいかんよな。」
とりあえず宿屋をとることにしたが予約も入れてなかったので二名一室の相部屋しか
取れなかった。
「俺はどっかそこらへんで寝てきてもいいぞ。」
「い、いえ今の、バベル様は敵が多いし、夜は物騒ですから、ぼ、冒険者の方は、相部屋が、フ、普通って、おしゃってたじゃないですか?」
「なんか、すごい無理してそうなんだけど・・・。」
「べ、別に緊張なんてしてませんよ、こ、これからこういう事も多くなるでしょうし・・・。」
「ふーん緊張してんのか、別に襲ったりしねーから安心しろ。」
ドンドン、ドンドン、そんなやり取りをしてると猛烈にドアをたたく音がする。
「にーちゃんいるんだろ、バベルのにーちゃん!」
ガチャ、息を切らしながらアバシーが血相を変えて部屋に転がり込んできた。
「探し回ったぜバベルのにーちゃん、助けてくれ!」
「あのな、どこに人から物スッといて頼み事する盗人がいんだよ・・・」
「まーまーバベル様話くらい聞いてあげましょ。」
「ほんと人がいいなアンナは、まぁ言い話せ」
アバシーがなぜスリ等やってるか、本当はやりたくないんだということを話し始めた。そして山の麓に根城を置き山賊をやってる者に兄妹で拾われて育った生い立ち、妹を半人質に取られてしかたなくスリ等で稼ぎをもっていってたことを、正直にアバシーは話した。
「それで、何を助けれってんだ逃げればいいじゃねーか。」
「おいら一人ならどうとでもなるけど妹のショコラが明日売られちまうんだ。」
「妹を助け出してくれたら何でもするからさ。」
「その山賊ってのは何人くらいいるんだ?」
「30人くらいだよそれになんかゴリラみたいなスゲー強い魔物も従えてる。そのゴリラに峠を通る商人襲わせてやがるんだ。」
本当どこにでもそういったろくでもねー奴がいやがるんだな、この世界はそういった魔族よりも腐った人間どもがまだまだいることに、バベルはいら立ちを感じていた。
「分かった力を返せすぐ行ってきてやる。」
___テッテレー【バベル君ダッシュ】獲得___
「バベル様私も行きます。」
「あーいいよ、ちょうど新しい技の肩慣らしにいい、ここでアバシーと待っててくれ。」
ードキューンー
そう言い残しドアを出たバベルは、ものすごい速度で駆けていった。その速度はすさまじく普通の人の目で姿をとらえることはできない速さだった。そしてアバシーから聞き出した山賊の根城まで一直線に駆けていった。
「うぉな、なんだてめーはどこから現れやがった。」
「ここにショコラってガキがいるだろ、おとなしく引き渡せ。」
「おい、みんなー変なのが現れたぞー出てこーい!」
ぞろぞろと集まる山賊衆、そしてやはり【バベルの能力】を持ってるものまで数人混ざっているのがバベルには感じられた。
「おいおい、だれかと思ったらバベルじゃねーか知ってるぞお前の噂を。あの時の借りを返すいいチャンスだな、今のお前は無力なんだろ?。」
「んー借りが多すぎてどれだか分からんがまったく無力ってわけじゃない。俺も昔の俺じゃないから無駄な殺しはしたくない。おとなしくショコラを引き渡して山賊を解体しろ。」
「ハハハ、強がりだけは変わらないな、知ってるぜ魔界から逃げ回り人間界でも
逃げ回ってたということを。」
「ふぅー話してわかるような奴らじゃないか、忠告はしたからなこの人数デコピンじゃ厳しいなあれで行くか。」
【野獣の咆哮】ガオオオオオォォン
そしてバベルは獣人形態へと変わった。その咆哮で腰を抜かすものかろうじて武器を構える者、そのすべてがバベルの敵ではなかった。目にも止まらないスピードでその爪が切り裂いていく。
そして親分と思しき者と魔物が出て来た。
魔物はデビルコングだった、魔界に住む獣だ、スピードはそれほどでもないがパワーはすさまじい。いかに獣人形態の能力向上したバベルといえでも村人ベースではパワーでは勝てないだろう。勝てるとすれば、スピードと無限に近いスタミナ、これで勝負するしかない。
両雄ゆっくりと近づきお互いを警戒しつつじっくりと観察する。
先手を打ったのはバベルだ電光石火の速さの爪の一撃。
しかしコングの毛皮はあつくそう簡単に爪を通さない。
すぐに飛びのくバベル、コングにつかまってしまったら、一たまりもない。アンナがいれば雷矢で勝負はつきそうだが、この形態でアンナがいるのは危険と判断し連れてこなかった。
息のつまる攻防を繰り広げる両雄、そしてお互いを睨みあう静寂・・・
そしてその静寂を打ち消すかのようにバベルがものすごい速度でコングの周りを回り始めた。コングは、バベルのスピードについていけず全くとらえられない。
そして一気に八方から、何度も攻撃を仕掛けるバベル、勝負はあった、静かに倒れていくコング。
とどめは刺さなかった、それをみて逃げる親分、逃げれるはずはなかった・・・
全ての敵をなぎ倒し雄たけびを上げるバベル、獣人形態を解除し辺りを見回す。
そして山賊の一人から力の回収
___テッテレー【バベルシャドウ】獲得___
次に山賊の根城で檻に入ったショコラと、コングの子供を見つけた。
コングの子供をとらえて使役していたのだろう。
コングの子供は親元にかけより、既に戦闘の意思もないデビルコングは子供を引き連れて、二匹はゆっくりと森へ消えていった。
「おまえがショコラだな兄ちゃんが宿で待ってる。帰ろう。」
「ありがとうございます。あのお名前は?」
「バベルだ。」
そしてその強くたくましい手は優しくショコラの頭を撫でた・・・
お礼を言われたバベルはちょっと照れくさそうに鼻を掻いた。今まで礼など言われる行為をあまりしてこなかったバベル。少しずつ。すこしずつ。己の出来る範囲で、行動を改めていこうと再度心に誓った。
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