第4話 コボルトの集落
第二の難所コボルトの集落
そのコボルトの集落をぐんぐんデコピンで蹴散らしながら、駆け抜けていく。
「1デコピン3KILL」案の定調子に乗っていた。
そう、使い方を思い出したバベルのデコピンはすさまじかった。 その威力はつむじ風を発生させコボルト3匹を巻き上げるほどに 。そして光ったコボルトリーダーを見つけ・・ドーン
コボルトリーダーの頭がもげた・・・
「ワンショットワンボスKILL」
『俺の力かえしてもらうぞ』 (なぜかラッパー風)
___テッテレー【バベルの雷矢】獲得___
「あーこれアンナに上げようか」
「そ、それはどんな技なんですか?」
恐る恐る聞いてみるアンナに見てろとバベルは、弓と矢をうけとり木に向かって矢を放った 。その矢が直撃すると同時に稲妻がドーンとその木に落ちて木を引き裂いた 。
「えーっとこれを私が?・・・」
やって見ろと。ポイっと力の光のようなものがアンナに移る。その瞬間アンナは落雷を受けたかのような衝撃を体にうけ、とてつもない力が受け継がれたのを感じた。
バベルの力は本人の意思で自由に受け渡しできるようだ 。
「今のをイメージしながら木に矢をはなってみろ。」
アンナは先ほどの落雷をイメージしながら弓を引き絞った。その矢が 当たると同時にチュドーンとバベルの落雷ほどではないが稲妻が落ちた。
だがその後ものすごい倦怠感がアンナの体をおそった・・・
有り余る技に体が追い付いてないのだ。へなへなとアンナは座り込んだ。
「ここ一発の大技だな」
______そしてアンナの体力回復を少し待って先を急いだ。
「早く泉に行って水をもちかえらないと」
アンナも歯を食いしばってバベルに続いた 。
だんだん大型の魔物が現れるようになってきたが、まだバベルでこぴんの敵ではなかった 。そうこうしてると泉が見える開けたところに出てきた。
「あの泉がそうか?」
「たぶんそうだと思います。」
地図をみながらアンナが確認する、この近くには獣王がいるはずなんだけど・・・
そして泉に着きさっそく水を汲もうとするその時であった 。
___ガオオオオォン__
ものすごい雄たけびが響き渡った。そう、その声の主こそ獣王だった 。
馬ほどの体高があり金色の鬣をなびかせ、ゆっくりとこちらを見据えながら近づいてくる 。
「さぁ来たかボスのお出ましだ、俺の力ももってやがるな」
もう最初に力を返してもらおうと思わないようになった。バベルはいつしか戦いの楽しみを 思いだしつつあった。一勝負やろうぜ!。
バベルは近づいてくる獣王に対して右手を構えた。
獣王の感がこの右手は危険だと察知した。すぐに横に飛びのく、しなやかな猛禽類にある特有の体のバネだ。
(でけーのにすばしっこいか、これ外すとさらに警戒されそうだな・・・ )
そして必中の間に入るカウンターにかけることにした。獣王の爪が先かデコピンが先か・・・普通に考えたらとんでもない光景だ。人間がライオンに向かってデコピン構えてるのを想像していただけるだろうか、無謀にも程がある。
獣王はじっくりとバベルを観察する。その右手以外に脅威は感じられなかった。 そして獣王の牽制の爪がバベルの体をかすめる。
(まだだ・・この間合いじゃねー )
そろそろ来るはずだ・・・そして本気の爪がバベルの体に食い込む、もっと頭近づけろや! 。その瞬間獣王の咢が大きく開かれバベルの喉元めがけて襲い掛かる 。
「今だ、バベルでこぴん!」
その咢の下から撃たれたデコピンは牙をへし折りなら口を閉じた。もう一発! 。
立て続けに打たれたバベルデコピンで獣王はもんどりがえった。
「雷矢!」
その声と同時に矢が走り獣王に突き刺さる、そして稲妻が獣王を襲う。そう、アンナもバベルがチャンスを作ってくれるのを今か今かと待っていたのだ!。
そして黙々と立ち上る煙が消えかかり・・・獣王が起き上がろうとしていた・・・
馬鹿な、これでも動けるのか!すぐさまに獣王の頭部めがけてデコピンを打ち抜く 。
「雷矢!」
しかし矢は来ないアンナは限界だった・・・
「てめー気張りやがれ婆ちゃん助けるんだろうがー」
そしてすべての力を振り絞り、生まれたての小鹿のようにプルプル震えながら必死に弓をかまえるアンナ。
「おばああちゃああん今いくからねー」
渾身の叫びとすべての力を注いだ雷矢が翔ける、ドゴーン!ものすごい落雷が獣王に直撃した。
「やりゃーできんじゃねぇーか・・・」
大量の出血をしながらバベルと獣王は倒れた・・・
獣王の強烈な爪はバベルの体に食い込み引き裂いていた 。
「バベル様大丈夫ですか!」
そうだ泉の水を!いそいでアンナは湧き水を汲みバベルに口移しで流し込む。 すると持ち前の生命力と泉の湧き水の力で、みるみる傷がふさがっていった。
「バベル様起きてください!目を覚ましてください!」
バベルに反応がない・・・・わんわん泣き続けるアンナ・・・
その泣き声以外に何も返ってこない・・・
「ううぅぅっ、ぐえ・・・ううぅぅっ、バベ・・ル・・・」
「うっせーな・・・俺は起こされるのが嫌いなんだよ・・・」
「バベル様ああああぁ・・・」
そのバベルの強くたくましい手がアンナの頭を優しく撫でた。
その後お決まりの力の回収。
___テッテレー【野獣の咆哮】獲得___
「あーちょっとやばいけど使える技来たこれ」
「そ、それはどんな技なんですか、見せてください」
「んー今はちょっと無理だな、できればアンナには見せたくない」
そう、野獣の咆哮とはその雄たけびで低俗な魔物は怯み身動きが取れなくなる。それだけではなく、バベル自身も獣人形態となり通常の5倍の能力となる・・・だがしかし・・・理性も獣並みになるのだ。目の前のすべてを切り裂く爪と牙になり殲滅するまでその姿は戻らない。
~~~急いで湧き水を汲み帰路に就く、帰り道は魔物一匹見かけなかった 。獣王討伐を知ってか近くの魔物は逃げ出したようだ 。
「おばあちゃん、帰ったよー」
息せき切って飛び込むように部屋に入ってきた、ボロボロの二人の姿をみて少し驚く祖母 。
「おばあちゃん、これ飲んで」
「これは・・・」
「なんでもすぐ治す湧き水」
「あんたたちあんな危険な所まで行ったのかい・・・ゴホゴホ」
「いいから早く飲んで」
ゆっくりと注がれた湧き水を飲み干す祖母、しかし奇跡の水も老いは治せなかったのだ・・・。
「あーなんだか力が湧いてくるようだねーありがとうね・・・」
祖母にとっては普通の水であった、しかし二人のボロボロの姿をみた祖母は優しいうそをついた・・・ 。
バベルにはその嘘が分かっていた、アンナも気づいていたのかもしれない・・・。
またそこでバベルは人の温もりに触れた 。
祖母は数日後安らかに息を引き取った・・・少なくとも穏やかに逝ける意味はあったのかもしれない 。
「人間ってのはだめかもしれないとわかってても命をかけて何かをしてあげたいと思うものなのか?それが普通なのか?お前が特別なのか?」
バベルはこれまでの過去の行いを振り返り慙愧に堪えぬ思いで苦しくなることがあった。これまでの自分では今の様な行動が理解できなかったが、その心情に変化が表れ始めた。アンナも時折バベルが苦しそうな表情や、夜にうなされていることを知っていた。またバベルが変わりたいと思っていることにも気づいていた。
「大切な人のためなら命をかけてでも何かをしてあげれる人に私はなりたいです。」
「・・・大切な人のためか・・・俺もなれるかな・・・俺はこれまでに、アンナに言えないような非道の数々を行ったこともある・・・そんな俺でも変われるのだろうか?」
「バベル様はすでに立派な方です、見ず知らずの私たちのために命懸けで、戦ってくれました。」
「それは、行き倒れの俺を救ってくれたから・・・」
「それを言い出したら助けられたのは、この集落に住む私たちのほうが先です。」
この世界も悪いもんじゃねーな、少し世界の見方が変わったバベルがそこにはいた・・・ 善き行いは善き行いとして自分に返ってくるそれが繰り返されれば、良い均衡が保たれるか・・・そのために力をつかうのも悪くないな・・・
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