202号室
深夜、バイト帰りの滝上から電話があった。
「水口君どうしよう。うちの階で怪しい人がうろついている」
「管理会社に同居がばれたのか、早いな」
「そんなしっかりしてそうな感じじゃない。201号室に用があるような動きだ」
なんと、不審者に先を越されてはかなわない。俺は電話を切り、玄関からそっと外の様子をうかがう。上半分が黒くなった汚い金髪の小男が201号室のドアスコープを一生懸命に覗こうとしている。
「どうかしましたか。そこ、俺の知り合いの家なんですが」
俺が声をかけると、小男は大げさに驚き声を上げる。
「うわっ!お前川内修の知り合いか!」
あまりにも大声なので慌てて口をふさぎ、203号室まで引きずって部屋に入れた。
「静かにしろ!川内にばれたらどうするんだ!」
「あ?川内はいま出かけてっから大丈夫だろ」
「え?何でそれをお前が知ってるんだ?」
「俺、川内に昔売られたんだよ。先輩にボコされて、マジで死ぬかと思ったしなんか金も借りパクされてんだ。許せねーと思って業者に拉致ってもらおうと思ったんだけど、情報自分で集めないと余計にお金かかってさぁ、だから隣に住んで自分で調べてんの」
「酔ってるのか?」
「あ?なめてんのか」
あまりにも洗いざらい話す小男にあきれた俺は口を滑らせてしまい、小男はご立腹だ。
「なんで不審者までうちにいるんだ?」
慌てた様子で滝上が帰ってきた。
「お前も川内の仲間か?やってやろうじゃん2対1でかかって来いよ!」
「川内の仲間なわけないだろう気持ち悪いことを言うな。ちょっと落ち着け俺たちも川内にやられた側だ」
滝上が小男を制し、俺と滝上が川内にされた仕打ちを話す。
「なんだよそれ、俺たち仲間じゃねえか」
「そうだよ。わかってくれたか」
落ち着いた小男は田口と名乗った。再度説明を聞くと、自分をハメた川内に痛い目を見せるために必要な情報を集めるため、202号室に住んでいるのだという。
「出かける時間は把握したんだが、俺はどうも尾行が苦手で、家以外で何をしているのかわからねえんだ」
「3人もいたら、川内を直接襲うのも視野に入ってくるのではないか?」
「視野に入るってなんだよ。頭いいってアピールするな」
「3対1なら川内を殺せるんじゃないかってことだよ」
「それはいいな、俺それがいい」
俺たちは川内への復讐計画をどんどん具体的にしていった。
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