4.ライアーガール/後編


 樋永少年の家庭環境は決して良くなかった。

 平均より裕福で、金銭的に恵まれていて、それ故に両親はほとんど家にいなかった。

 昼間家にいるのはお手伝いさんだけで夕方になれば彼女達も帰ってしまう。

 日が沈み、各家庭の明かりが灯る時間になっても親が帰ってくるような家ではなかった。

 仕事熱心だったのかもしれない、遊び惚けていたのかもしれない。

 結局外で何をしているのかはわからなかった。

 一緒に食卓につくことは年に数回あればいい方で、言葉を交わすことなんてほとんどない。

 自分をこの家庭に産んだことを後悔しているのかも、両親に聞いたことはない。

 

 ひとりぼっちの家は退屈で、時間を潰すために勉強をしてみてテストで満点を取っても、見せる相手がいなかった。

 朝起きても、学校から帰っても、食卓に書置きなんてあったことはない。

 持て余した時間を潰したり、最低限のコミュニケーションをとるために学校で友達を作ってみたり、通いのお手伝いさんたちと仲良くなることも出来たが、それでもそれはその場だけのやり取り。

 その場だけ存在している、友愛。

 灰色の世界、灰色の生活、生きている意味があるんだろうかと考えたことは何度もあった。

 誰にも必要とされない、誰にも愛されていない自分が、この世に存在していても意味なんてあるのだろうか?


 そんな日々を送る中。

 誕生日の朝、勉強机に恐らく形式的なプレゼントとして置かれたであろう携帯端末を初めて手にして、小さな自分の世界を手に入れた。

 自宅のパソコンを自由に使えたのでネットに触れることが初めてということではなかったが、手のひらに収まる小さな液晶は、まるで自分だけの小さな世界の窓に思えてその時ばかりは少し高揚したのを今でも覚えている。

 そしてその矢先、彼は“光”と出会った。


 いつもパソコンで見ている動画配信サイトのアプリを自分のスマートフォンに入れて、いつも通り立ち上げた時、ある配信が新規配信としてトップに表示されていた。

 黒髪の可愛らしい少女がカメラに向かってただお喋りをしているだけだった。

 年は自分と大して変わらないだろう。

 視聴者は十人に届くとすぐさま一桁に戻ってしまうような、そんな誰も見ていない配信。

 コメントもゼロだが、それでも少女はずっとお喋りを続けていた。

 どうやら初めての配信らしく、これからどのように活動をしていくか、どんな活動者になりたいかを一人会議しているだけの配信。

 快活な喋り口と堂々としたその様を見て、彼はどこか惹かれるものを感じた。

 それはつまり、彼女には少なからず人を引き付ける魅力があるんだろうと理解した。

 自分だけの小さな窓に映るその少女がどこか特別に感じられて、それが自分に向けられた何かだと錯覚をして、彼は思わず一言「頑張ってください」とだけコメントを落とした。


『……え? えっ!? コメント! コメントだ! うっそお!』


 まぁそうリアクションするのもそうだろう、とコメントをしてしまってから我に返った樋永は苦笑いした。

 恥ずかしいことをしてしまったなとすぐさま後悔と羞恥が押し寄せてきたが、窓の向こうにいる少女はこちらの感情などお構いなしだ。


『嬉しい! マジで嬉しいよ、えー……名無しくん! だけど! ボクの初配信に初コメついちゃった! う~~~~れしい!! 愛してる~~~~~~~!!!』


 もちろん、彼女にとってはこれほどにない喜びだったろう。

 その喜びを現すためだけに、たまたまその言葉が選ばれただけだった。

 それでも、それをわかっていても、彼にとってはずっと追い求め、欲していた言葉だった。



 ――愛してる。





「僕が一番ノノを愛している。世界で一番、誰よりも。だって彼女も僕を愛してくれているのだから……だから」


 僕は彼女が何をしているか、全てを知っている。

 自白にしては含みのあるものだった。

 アリスは樋永の長ったらしい思い出語りを我慢して聞いていたが、流石に悠長にしすぎだと怒りを込めてヒールを彼の背中に突き刺す。


「話が長い男は嫌われるわよ、さっさと答えなさい。あなたは何を、どこまで知っているの?」


 これから始末する男を相手にして焦る必要などなかった。

 だからアリスはいつも通りに落ち着いて、ただ尋問をするだけでいいと自分に言い聞かせていた。

 しかしその理性を無視しに背中から圧し掛かってくる重いものは、嫌な予感という根拠のない直観だった。

 何に対して嫌な予感がするのか、それが当たったら何がわかるというんだと、それはアリス自身も明確にわかっているものではない。

 だが今隠されているものを暴かなければならないと使命感だけは、信じていいと確信している。

 問い詰められた樋永はしばし沈黙していたが、考え事がまとまったのか「そうか」と小さく呟いてから彼は再び話し始めた。


「ノノが殺し屋を雇ったというのはもちろん知っていたし、三人の人間を殺すよう依頼をしていたのも知ってましたよ。……でもまさか、その雇った殺し屋があなただったなんて、流石にそこまでは知りませんでした。てっきりノノについた悪い虫だとばかり」

「あの子のことはいいのよ。そんなことより、あなたさっきナンバーの名前を」

「『ナンバー』というのは、本当の名前じゃないって知ってますか? 先生」


 それは裏社会での名義みたいなもので、本名ではないということか?

 そうアリスが零すと違いますよと樋永は小さく笑う。


「本来の名前はアルファベットのNとOで『NO』という名義だったんです。それを海外のユーザーがそのまま『ナンバー』と読んだことから、界隈ではすっかり『ナンバー』と呼ばれるようになったんです。間違った名前なんですよ、あっちは」

「……何の話?」

「さっきから言ってるじゃないですか。僕はノノのことなら何でも知ってる全て知ってる何をどこでどうしているのか、ネットで出会ったのだからネット上でどんな活動をしているかなんて網羅してるに決まってるじゃないですか!」


 先程までこちらを蔑むように笑っていた樋永の声には怒りの感情が混ざり始めていた。

 話を理解しないアリスに怒っているわけではなく、もう自分が助からないというこの状況に憤慨しているのでもない。


「あぁそうだ! もっと早くに、気付いたあの日に止めるべきだった! 殺し屋なんて雇って、あのゴミを掃除するなんて変だと思ったんだ! あんな下半身男なんて放っておいても彼女には何の支障もないのに、よりにもよってアイツも絡んでたなんて!」


 彼のその言葉を理解するのに頭の中をよぎったのは、姫崎が口にしていた「ゴミくず君」という単語だった。


「それで次は僕、つまり僕は二人目なんでしょう!? ああつまりそういう……さっきの奇襲でちゃんとあなたを殺せていれば、ああ! くそっ!! ダメだダメだダメだ!! そんなこと許さない!」


 樋永が力を振り絞り起き上がろうとするが、それを許すわけにはいかない。

 彼をこの場で殺すことはもう決まったことだ。

 そうすれば、次の最後の一人……ナンバーの始末をすれば。


「僕が死のうとどうだっていい! 僕が守らなくても、ノノはひとりで生きていけるくらい、お前が思ってるよりも強い人なんだ! でも僕がここで死ねば、お前は三人目を殺しに行くんだろ!? NOナンバーを!」


 そうだとも。

 それが今課せられている仕事なのだから。

 クライアントがそう望んでいるのだから。


「お前さえいなきゃ!! あの人は」


 そこから先の言葉は銃声にかき消された。

 引き金を引いたアリス自身も、自分のその行動に驚いて生唾を飲み込んだ。

 その先の言葉を聞いてはいけないと、咄嗟に本能が判断した行動だった。


「……二人目の始末は完了したけど、思ってたよりも派手にやってしまった……。片付けまで済ませないと」


 アリスは誰に言うでもなく独り言ちて、二人目の駆除完了の報告と死体処理の業者を呼び出すためにスマートフォンを取り出した。

 今晩は月が出ている明るい夜だ。

 無人の学校敷地内には拳銃とスマートフォンを手にしているアリスと、赤い汚れにまみれるひとつの死体だけ。

 そのはずだが、ふと人の気配を感じて視線を上げた。

 無人の校舎の窓からは相変わらず非常灯の明かりだけが見える。

 しかし、その中のひとつがわずかに揺らいだ。

 まるで何者かがこちらに存在を主張するように、こちらを誘っているように、ゆらゆらと明かりを揺らしている。

 アリスはしばしそれを観察していると、スマートフォンをポケットにしまって校舎へ向かって歩き出した。



 ##



 ぼんやりしていたからだろうか、アリスは土足のまま階段を上っていた。

 無人の廊下はただでさえ音が響くのだが、ヒールが彼女の居場所を主張するかのようによく響く。

 先程外から見えた人影がいたのはこの辺り、と視線だけを巡らせているとカタンと小さな音が教室から聞こえる。

 これではまんまと誘われるがままだが、それでもアリスは歩を止めなかった。

 受けて立とうとまでは言わないが、ここで引き返すわけにはいかないからだ。

 待ち人がいるであろう教室のドアを開くと、そこには予想通りの人間が待ち構えていた。


「待ってたよ、オネーさん」


 本来立ち入り禁止の夜の教室で、明かりもつけずにアリスを待っていたのは姫崎だった。

 いつもと変わらない制服姿で、マスクで顔の半分を隠して、行儀悪く机の上に腰を下ろして、お気に入りの悪魔の羽根がついた鞄を背負っている。

 初めて彼女とコーヒーチェーン店で待ち合わせた時と同じ格好、違う点があるとすればアリスが教師のような格好をして手に拳銃を持っているところくらいか。


「まっすぐ家に帰りなさいって、連絡したわよね」

「うん。でも待ちきれなくって……来ちゃった♪」

「樋永を始末したわ。シバリエよ」

「そっか、ありがとオネーさん」


 アリスが冗談を取り合わずに樋永少年の名前をあげても、姫崎はいつもと変わらない笑顔でお礼を言った。

 いつも通りの笑顔、いつも通りの素振りで、決して腹の中を見せようとしない。

 いつもの姫崎の姿だ。


「それじゃあ残すは三人目だね。人を殺してしまった悪~い人、『ナンバー』を殺せばオネーさんへの依頼は全部終了! ボクのボディーガードも終わって住み込みもなくなって、自由の身……釈放となる!」

「だから昨晩も言ったでしょう。情報が少なくて、まだ特定が出来ないのよ。トウマ……兄からの追加連絡もないし、どこの誰だか私にはさっぱり」

「今目の前にいるよって種明かししたらびっくりする?」

「あなたが二十年以上ブローカーをしているっていうなら現役女子高生という肩書は詐欺ね」


 アリスは淡々と、姫崎はニコニコと、言葉を交わす。

 空調の利いていない教室の空気は悪く、嫌な汗がじんわりとにじみ出てくる。

 アリスが鬱陶しそうに自分の長い髪をかき上げると姫崎はトントンと指先で教卓を叩いた。


「ねぇ先生、ボク答え合わせしたいな」

「……そうね、私も真実が知りたいところよ」


 左足の負傷も頭の外に、アリスは教卓前に着くと姫崎は教卓へと身を乗り出した。


「うわあ……すっごい、これ本物の銃!? やっぱり殺し屋って皆銃持ってるもんなの? 必需品的な!?」

「銃を苦手な人だっているわよ。私は何でも使えるだけで、今回もたまたま最初に鞄から取り出したのがこれだったってだけ」

「ねえねえ、アレ見たい。弾込めるとこ!」

「シリンダーのこと?」


 姫崎はアリスの左手ごと手に取って小型リボルバーをまじまじと観察していたが、シリンダーを見せて欲しいというリクエストに答えるためにアリスは姫崎の手を離させて弾倉を開いた。

 六発装填のシリンダーには、二発使った形跡が見られる。


「これで樋永君のこと殺したんだ」

「それがお望みだったんでしょう」

「うん。でもやっぱりか弱いボクにはちょっぴり刺激的かも~」


 なんちゃってと舌を出す姫崎だったが、アリスは笑わない。


「あなたがナンバーね、姫崎乃々」

「そうだよ。NONOノノが省略されて誤読されて、そうして生まれたのがナンバーっていうブローカーの名前」

「二十年以上の売買履歴があるのは絶対よ。トウマの腕は一流、ガセネタを掴まされることはまずないわ」

「だって元々はボクのパパとママのお仕事だったからね」


 なるほど、とそこでようやく全てが腑に落ちた。


 姫崎家の資産情報を調べて見ても、家系をいくらか遡っても、そこまで裕福な家ではないとアリスは事前に知っていた。

 つまり、あの大きな家は姫崎の両親が自分たちの力で建てたものだったのだ。

 一戸建てのデザイナーハウス、つまりフルオーダーの戸建てである。

 全室防音仕様であることの理由は、世間的によろしくない仕事を在宅でしているからというしょうもないことだった。

 そして姫崎自身が以前言っていた通り、彼女の両親は彼女が小さい頃に亡くなっている。

 それが恐らくナンバーの仕事が一時的に途切れた時期と合致するのだろう。

 しかし本物のナンバーである姫崎両親がこの世に存在しないのに、ナンバーの仕事はしばらくすると再開した。

 物品の売買から情報の売買へと方針を切り替えた時期がその時期だ。


「パパとママが遺してくれたのはあのおっきな家と、ボクの大事な名前。それと、ボクの名前と同じ名義のお仕事だけだった。ちっちゃなボクは寂しくて寂しくて、少しでもパパとママとの繋がりが欲しくなって……」

「かつて両親がしていた仕事を引き継ぐことで、“家業を継いだ”という繋がりを得たということね。幼くして裏社会に首を突っ込んで、しかも今日この日まで五体満足でいられるなんて」

「なんとビックリ、ボクは天才だったワケ! すっごくない!?」

「ブローカーで食べれていたなら配信業なんて必要ないんじゃない? 心も体も成長したら、承認欲求を満たしたくなったの?」


 その問いを投げかけると、ぴたりと姫崎が停止した。

 アリスの投げかけた皮肉が響く質でないのはわかっているので、アリスは姫崎の言葉を閉口して待つ。

 すると彼女は先程までの飄々とした態度とは一変し、視線を少し泳がせ気まずそうに両手をすり合わせて、年相応に何かを後ろめたく思っている様子を見せた。


「ボクはただ、パパとママのお仕事を手伝うつもりで始めたんだよ。……それは本当」

「疑ってないわよ。あなたがそう言うんならそうなんでしょう」

「……オネーさんって、やっぱり優しいねぇ」


 初めて見る姫崎の力のない笑顔が、目に痛かった。


「ま、前置きとか言い訳とかはいいや。どうせ過去の失敗ってのは消せないもんだもんね」

「言い訳は若者の特権だと思うけど?」

「甘やかしちゃダメだよ~オネーさん。……あのね、ボク人を殺しちゃったんだ」


 人を殺した人は悪い人。

 人を殺したナンバーは悪い人。

 つまり、人を殺したボクは悪い人。


「ボクが仲介した情報の行く先はちゃんと責任もって確認するようにしてるんだけど、ある時お客さんからこの人の情報を売ってくれないかって相談されてね。探して見つけた情報を売ったワケ。そうしたら、その人、その後死んじゃったらしくって」

「……」

「それがね、三年前」


 ナンバーが仕事をぱたりとやめたのは三年前だ。

 最後に受けた仕事のタイトル名を、アリスは思い出したくなかった。


「人を殺してはいけない。そんなの誰だってわかってることじゃん。なのにボク、人を死なせちゃったんだよ、ボクの流した情報のせいで」

「……あなたが直接殺したわけじゃないでしょう」

「ボクはただパパとママの仕事を手伝いたかっただけなの。なのに、そのお仕事に傷をつけちゃったってこと……それも悪いことだし」

「仕事を絶対に失敗なんてことはあり得ないわ、不可能よ」

「それで死んじゃった人のことを調べたら、やっぱりその人には家族がいた。その人の死を悲しんで、もしかしたらボクを恨んでるかもしれない家族がね、いるんだって知っちゃったんだ。ボクにはいない大事な家族が、だから」


 姫崎は淡々と事実を語っていた。

 もちろんこのことを悔いているのは態度を見ればわかるし、「家族」という言葉には熱がこもっている。

 きっと彼女が犯した三年前の失敗は、どうしても拭えず、呑み込めず、自分自身でも許せないことなのだろう。

 姫崎は顔を伏せてぽつりぽつりと語っていたが、言葉が途切れると顔を上げた。

 すると彼女の顔はいつもの挑発的な笑顔に戻っていた。


「だから、償おうと思ったの。妹さんを死なせてごめんなさい、オネーさ……アリスさん」


 謝罪の言葉を述べる表情ではないと指摘するべきだった。

 しかし、アリスは頭の中を整理するのに必死でそんな余裕などなかった。


「妹さんを殺してしまったあの件に関わっているのは、情報源のコウイチと、そのやり取りを知っているシバリエと、情報を売り買いしたボク。この三人が、アリスさんが復讐すべき人間だよ」


 銃を握る手が震える。

 その震えは怒りからか、動揺からかは判別出来ない。

 ただアリスは顔を真っ青にして、脳に酸素を送るために必死に呼吸を繰り返した。

 そんな彼女を落ち着かせるように、姫崎はいつも通りににっこりと笑って両肘を教卓について頬杖をつく。


「だからほら、これで終わり。これで最後。三人目は目の前にいるんだから、そのかっこいい銃で早く殺して」


 ――三人目ボクを、殺して


 甘ったるい悪夢を見せられている気分だった。

 非常灯が彼女の顔を照らし、鞄についている悪魔の羽根が本物なのではと錯覚してしまう。

 悪魔の甘言に惑わされるなと、頭の中で理性という自分が激しく叫ぶ。

 彼女の言う通り、三人目は姫崎だ。

 彼女を殺せば今回の仕事は終えられるし、妹の死の復讐にもなってアリスにとっては得しかない。

 簡単だ、引き金を引くだけだ。

 何を躊躇うことがある、いつもやっていることじゃないか、どうした“殺しのアリス”。

 幻聴が聞こえる、体が震える、脂汗が止まらない。

 何を迷っているのか自分でもわからなかったが、ひとつだけ確かにわかることがあった。


 私に彼女を殺すことは、出来ない。


 同情、共感、愛着、そのどれでもない。

 ただ、アリスは姫崎乃々を殺すことが出来ない。

 幼くして独りぼっちにされた彼女が両親の影を求めるなんて当然のことだ。

 しかもそれを可能にするスキルや才能があったのなら止まるわけはないし、誰にも止められないことだ。

 家族が死んだと知らされることの辛さを、身が裂けるようなあの痛烈な感情を、私は知っている。

 だから、彼女を殺すことなんて出来ない。

 二つの大きな瞳がアリスを捉える。

 指先一つ動かすことが出来なくなった彼女は、ただ眉間にしわを寄せて悔いることしか出来なかった。

 もっと簡単な仕事のはずだった、と。

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