3.エンヴィキャット/前編
「姉さんもオシャレすればいいのに」
妹からの突然の言葉に、アリスは固まった。
薄汚く狭い部屋には妹と自分、女二人が押し込められている。
一体どんな話からそんな話題が出てきたんだっけ、とアリスは首を傾げながらも手元の作業を再開した。
「きっととっても綺麗になるわ」
「私はいいわよ、別に。あまり興味もないし」
「ネイルとかはどう? 普通の女の子みたいにたくさん盛らなくても、塗るだけでもかわいいし」
「……無理よ」
「どうして?」
「私の不器用さは知ってるでしょう」
「……あ、あたしが塗ってあげる! それに」
カシャンと軽い音が鳴る。
それはアリスが拳銃のメンテナンスを終えた音だった。
「……それに、そんなに完璧に銃をバラして、掃除して、組み立てられるなら、ネイルくらい出来るはずよ」
「これは習慣、癖みたいなものよ」
諦めなさいとアリスは話を流そうとするが、妹は頬を膨らませて不満を訴えている。
だがいくら食い下がられても、アリスにとっては洋服や化粧、オシャレといった類のそれは不必要なものだと感じてしまうのだ。
指先についた黒い油汚れを見つめ、目を伏せる。
「安心して、最低限の身だしなみはしてるんだから。必要に駆られれば私もなんとかするし」
「姉さんのその必要に~っていうのは“仕事で必要なら”って話じゃない! そうじゃなくて、プライベートで楽しんだらって言ってるの」
「だから、別にいいわよ」
「んも~! 姉さんとショッピングに行きたいって言ってるの! こんなこそこそ隠れた隠密人殺し旅行じゃなくって!」
妹は自分と違って愛らしく、美しく、人目を引くオーラがあった。
これは妬みでも僻みでもない事実だし、何より血が繋がっていないのだからそのあたりのこだわりなどとうの昔からない。
着飾る妹を見て可愛いと感じるし、オシャレというものを楽しんでいる姿を見ているとこちらも楽しくなる。
ただ、アリスには興味がないというだけの話だった。
「それじゃあ、予定より早くこの仕事が終わったらね」
「……え? 本当?」
「空いた時間だけ付き合ってあげるし、思う存分私を着せ替え人形したらいいじゃない」
それで満足するのなら、とアリスは苦笑した。
妹はしばらくポカンと口を開けたまま固まっていたが、数秒後には拳を握り締めて天高く上げていた。
「さっさと標的誘惑しておびき出して油断も油断っていう状況に貶めて姉さんにど頭ぶち抜いてもらお!」
「順調に仕事を終えられるのなら何でもいいわよ」
「あたしのテクで骨抜きにしてくるから待ってて!」
おぉそれは頼もしいとアリスが小さく笑うと、妹もやる気に満ち溢れ白い歯を見せて笑った。
「あ、でもごめん。姉さん」
「?」
「あたし行けないんだった」
――あたし死んじゃったから。
「っ……!」
飛び起きたところで、夢だったと理解するのにしばらく時間を要した。
心臓は暴れ、暑くもないのに脂汗が止まらない。
肌にへばりつく長い髪をかき上げて、アリスは何度か深呼吸を繰り返した。
「……何、今の夢」
似たような会話をしたような気もするし、任務中にした様々な会話を断片的に繋ぎ合わせたかのような会話だった気もする。
ただ記憶から作り上げられた夢の中の妹は、まさに彼女そのものであったのは間違いない。
窓を確認するとまだ日が昇る前の時刻らしく、外は薄暗かった。
すぐに寝直す気分にもなれず、アリスはベッドを抜け出すと極力物音を立てないようにしてキッチンへと向かい、水道水を一杯飲み干して心拍数が下がるのをしばし待つ。
(どうしてあんな夢を。……もしかして)
依頼人の一人目を始末した昨晩、その足で姫崎と買い物に行ったから?
妹とはろくにショッピングなんて行ったこともなかったことを、無意識に後悔していた?
「……あり得るわね」
化粧もおしゃれも、まだ妹に教わっている途中だった。
成人してから「これからは大人のメイクをしないとね」と、年下の妹が自分よりも張り切っていた記憶がうっすらある。
妹と違って自分は標的と直接会うことが少ないし、特に交渉は不向きだとボスにも言われていたため群衆に溶け込むための術というものを習得する必要はないと考えていたのだ。
だが、そのツケが現在回ってきていることを考えると、やはり人間日々学びは必要なのだなと痛感するばかり。
「あなただったら、もっと上手くやれたんでしょうね」
返事は聞こえない。
やけに広い早朝のリビングは、清々しい程に静かだった。
#
無意識の内に何度も時計を確認していたのか、隣の席の教員から「何か予定でもあるんですか?」という質問を投げられた。
自分でも気付いていなかったことを指摘されアリスはぎくりと内心驚きつつも、平静を装って正直に白状する。
「い、いえ。午後に兄が来るという連絡があって、迎えに行かないといけないので」
「へぇ、久慈先生お兄さんがいるんですか。てっきりご長女なのかと」
「そうですか? なら、妹がいるからそう見えるのかもしれません」
「なるほど、確かにそうかもしれませんね。お姉さんっぽさがありますから」
年配の男性教員から朗らかな笑みでそう言われて、アリスは頬を緩めた。
本業では他人と関わることが少ないため、第三者から自分はそう見えるのかと初めて知ったこともあってだろう。
自分の父親以上の年齢である教員からそう指摘され、どこかむず痒くなる。
そんな話をしながら講師としての最低限の仕事を終えると、職員室のドアがノックされた。
「失礼します。久慈先生いらっしゃいますか?」
「あぁ、こっちよ」
職員室へ入ってきた男子生徒はアリスが受け持つクラスのひとつのクラス委員だった。
休み時間中に廊下ですれ違った際、この時間に職員室へ来て欲しいと伝えておいた。
「えっと……何でしょうか? 僕だけ著しくテストの点が悪かった……とか?」
「いつも満点取っておいて何言ってるの。次の授業、急用で出られなくなってしまったの。だからその伝言役と、これを持って行ってくれないかしら」
そう言うとアリスは用意しておいたプリントの束を男子生徒へと手渡す。
男子生徒はただの雑用を託されるために呼び出されたとわかり、安堵のため息を漏らした。
「次の時間手が空いてる先生がいないから誰も教室には行かないわ。だからこの自習プリントだけやって、終わった人は自由でいいから」
「わかりました。……って、簡単な問題ばかりですね」
「難しくてもやる気出ないでしょう。あと、何してもいいけどくれぐれも静かに、とだけ」
「了解です。それじゃあ僕はこれで」
「えぇ、私ももう出ないと」
アリスは鞄を手に立ち上がると、隣の席の教師に失礼しますと軽く頭を下げて男子生徒と共に職員室を出た。
二人はそれぞれ一つ下の階にあるクラスと、一階にある職員玄関へ向かうため並んで階段を下っていく。
するとそういえばと男子生徒が声を上げた。
「久慈先生って、この学校にいるのは今だけなんですよね?」
「えぇ。怪我をされた先生の代理で来ているだけだから、もうしばらくしたら元の職場へ戻るわ」
もちろん、そういう設定でこの学校に潜入しているだけである。
とはいえ英語教師を一人どかさなければならなかったため、その教師には軽い怪我を負ってもらった。
もちろんこちらの事情で故意に怪我を引き起こしたこともあり、慈悲深い金持ちの加害者として接触して医療費も全額こちらが負担している。
特に裁判が起こされることはないし、その医療費も経費の内だ。
「久慈先生がいなくなっちゃうの残念ですねぇ。すごく人気なのに」
「目新しい若い女教師が珍しいだけでしょう。二、三年もしたら皆すぐに忘れるわ」
「そんなことないですよ。それに、一番残念がるのは多分……」
そこで男子生徒の言葉は止まった。
彼のクラスがある階に到着したこともあったが、彼の口を塞いだのは別の要因だった。
階段の踊り場には、腕を組んで仁王立ちをしている“悪魔”の姿があった。
「聞いてない」
「…………」
「オネーさんの授業が潰れるの、ボク聞いてない」
悪魔こと姫崎はじろりとアリスを睨んでいる。
いつもの悪魔の羽根が付いたリュックを背負っているということは、彼女も早退するのだろう。
「早退するなら別に問題無いじゃない、姫崎さん」
「撮影の仕事が入っちゃったから早退するだけだし、オネーさんの授業誰よりも楽しみにしてたのに~~。っていうか『姫崎さん』じゃなくて、『ノノ』って呼んでってもう何十回も言ってるじゃん!」
険悪になる空気から逃れ、次のチャイムを逃さないためにと男子生徒はいそいそとその場を抜け出した。
彼は姫崎と同じクラスであり、彼女が妙にアリスに懐いていることはクラスの全員が知っている。
そして、こういう時にまぁまぁと止めに入ろうものなら姫崎から激昂を食らうことも知っている。
つまりこの場で取るべき最適な行動は、“逃げ”であった。
「っていうか、私のコレはそもそも本来の依頼内容に入ってないのよ。仕方なくあなたに付き合ってあげてるだけっていうのはわかってる?」
「でもボクはちゃんと依頼料払ってるんだよ!? お金が支払われたんなら、ちゃんとクライアントのゆーこと聞いてくんなきゃ!」
「だからこうして惜しい時間を潰して来ているんじゃない。この後の用事は単に優先順位が高いってだけよ」
「ボクのお願いより大事な仕事なんてあるの!?」
「ちゃんとあなたの仕事だから安心して頂戴、“姫崎さん”」
「だーかーらー!!!!」
無人の階段を言い合いながらツカツカと勢いよく下り、昇降口への分かれ道で二人は足を止めた。
姫崎は頬を膨らませてぷりぷりと怒り、アリスは面倒だと言わんばかりに眉間にしわを寄せている。
しかししばしの沈黙の後、先に折れたのはアリスだった。
「……残り二人の身元が割れたのよ」
「!」
「それを聞くために、今日は私も早退。わかったわね」
そう言って先にアリスは踵を返したが、姫崎は口を尖らせたまま反論しなかった。
だがアリスが歩き出す直前、小さく口を開いた。
「『ノノ』って、呼んで」
「…………」
クラスでも姫崎は下の名前で皆から呼ばれ、彼女のネット上の名前も「ノノ」で間違いない。
せっかく姫崎という苗字を持っているなら「姫」の方を使った名前にするのが普通では? と最初もアリスは疑問に感じていたが、どうやら彼女は下の名前に強い思い入れがあるらしい。
だが、別にその理由を詳しく聞くことはないだろう。
これ以上彼女と親しくなる必要はないのだから。
「それでは、私は急ぎますので。“クライアント”」
そう返事をして足早にその場を去ると、背後から猫の鳴き声のような声が辺りに響いた。
(ボディーガードだの住み込みだの、やっぱり一つでもわがままを聞くとダメね)
帰国一番の仕事にしてはどうも弛んでいる、とアリスは反省しながら手早く靴を履き替えた。
###
駅の出口から出て少し歩いた場所に喫煙スペースが設けられている。
座れるような椅子は設置されておらず、点在する灰皿にそれぞれが自分の場所を作って喫煙者たちは煙を吸っていた。
持て余した時間を潰す若者、忙しい仕事の合間に一息吐くサラリーマン、恋人との待ち合わせまでに一服する女性。
その中に紛れて、アリスも煙草を一本吸っていた。
定期的に吸わなければ落ち着かないという程吸ってはいないが、標的が現れるまで一歩もその場を動かずにスコープを覗く殺しを請け負う時などに吸うようになってからは、こうして時間を潰すアイテムとして嗜んでいる。
本日も快晴。駅の大型液晶から流れてくる広告の音楽や声、行き交う自動車の音で駅前は賑やかだが、煙を吸う者達の集まるその場は静かなものだった。
「俺も一本」
「……五分の遅刻よ」
背後からするりと伸びてきた手をアリスは軽く避ける。
伸びてきた手は彼女の握る煙草の箱には届かず、だらりと脱力するとまた背後へと引っ込んだ。
「電車が遅延してた。俺は悪くない」
「吸うなら店に入ってからね、トウマ」
トウマと呼ばれた青年は小さく舌打ちすると決まりが悪そうに頭を掻いた。
彼こそがアリスが待っていた人物であり、彼女の兄に当たる男である。
ボサボサの黒髪からのぞく両耳には多くのピアスが開けられており、ラフなかっこうも相まって一見バンドマンのような風貌だ。
しかし彼はバンドマンではないし、重く大きなショルダーバッグには楽器ではなく電子機器や書類が詰め込まれている。
遅延した電車に乗って来て喫煙所で煙草をたかるこの男もまた、アリスと同じ立派な殺し屋だ。
「あ、そうそう。今日の店は俺が決めたから」
「へぇ、珍しいじゃない。どうしたの? 彼女でも出来た?」
「うわあセクハラだセクハラ。ノンデリな妹を持ってるなんて信じられない、お兄ちゃんやめてぇわー」
「兄妹間の他愛もない会話ですらまともに出来ない上に、すっかり若者言葉に染まって……モテないわけね。……あ、彼氏が出来たの間違い?」
「白馬の王子様が来てくれるなら俺はそれで泣いて喜ぶがな。泣いて喜んでないということはつまりそういうことだと思うんだが?」
「声に感情の起伏がなさすぎてあんまりウケないわよ、そのトーク」
もちろんアリスとトウマは血が繋がっていない、同じ施設育ちのボスに拾われた同士の兄妹である。
加えて二人の年は一つしか変わらないため兄妹としての上下関係はさほどなく、どちらかというと幼馴染というものに感覚は近かった。
喫煙所を離れると、先導を切ったのはトウマだった。
姫崎の依頼である「三人の殺し」の内、身元が判明していない二人の調査をトウマが行っていたのだが、それに一段落ついたということで午前中に連絡が来た。
電話やメッセージでやり取りするよりも直接会って話した方が早く確実なため、彼女たちの連絡手段は基本対面である。
しかし、会話の内容を外部にそう聞かれては堪らない。
なので腰を落ち着けて話し合う“店”選びは慎重に行わなければならない。
いつもなら行きつけの専用の店があるのだが、どうもトウマが決めた店はアリスの知る店ではないらしい。
新規開拓でもしたのかと思っていると、到着した店は想像していたより数段、アレだった。
「いらっしゃいませー、お好きな席にどーぞー」
ドアを開くと暗い店の奥から店主と思われる男性の声だけが飛んでくる。
駅からしばらく歩いた雑居ビルの地下二階、個人経営のバーのような店だがなんだか全体的に胡散臭い空気が漂っている。
確かに殺し屋という仕事はアングラではあるが、何もアングラそのもののような店に来なくたっていいだろうとアリスは眉間にしわを寄せた。
「……え、何? 飲食店……よね?」
「そー」
「こっち界隈の店?」
「半分こっち、半分はカタギ。多分」
半分って何よ……とアリスがますます頭を痛めていると、ふと壁に貼ってある手書きのメニューが目に付いた。
しかしその紙はメニューではなく、力強い筆文字で「密談歓迎。他言無用」と書かれてあるだけだった。
(密談歓迎って、そんなに大々的に言える言葉……?)
「じゃあこの席な」
アリスの警戒をよそに、トウマは座る席を決めて鞄を開きパソコンやタブレット、資料の入ったファイル等を次々と取り出した。
とりあえず「密談歓迎」と言うのなら普通に仕事の話を進めようとアリスも椅子に腰を下ろすと、店の奥からスタッフらしき少女が出てくる。
「ご注文ー、あ! トウマさんヤッホー!」
「?」
給仕用とみられる丈の短いチャイナ服に身を包んだ少女はトウマの顔を見ると笑顔で両手を振った。
するとトウマは勢いよくその場で立ち上がり「お疲れ様っす……!」と頭を下げる。
わけのわからないアリスはただ一人、その場で固まることしか出来なかった。
「あ~こちらがトウマくんが言ってた妹さん。いらっしゃいませ~」
「……どうも」
「サービスしちゃいますね~食べられないものとかあれば言ってください。適当に持ってきま~す」
チャイナ少女はアリスにも両手を振ると、オーダーも取らずに再び店の奥へと消えて行ってしまった。
飲食店に違いはないが、何かやばいものが出てくるんじゃないかと嫌が応にも構えてしまう。
「っていうか何、あんたの行き付け? ここ」
「まぁ、週四で」
「ほぼ実家じゃない」
まぁあれだけ可愛い子が勤めていればトウマのように通いこむ男も少なくないか。
とアリスは一人で納得していたが、その胸中を読んだのか「あのなぁ……」とトウマから呆れた声が飛んできた。
「あの人はなぁ、世界一位なんだぞ」
「? 世界一……何?」
「格闘ゲーム、世界一チャンプなんだぞ」
「あ、そういうこと」
失敬、尊敬という意味でのあの子のファンだったらしい。
勘違いするアリスに先程の少女がどれだけ素晴らしく強く、芸術的なプレイングを見せてくれるかをトウマが力説しそうになったところでアリスは一言謝ると仕事の話をしようと切り出した。
「それで、どこまでわかった?」
「片方は割とざっくり、もう片方はぼんやり」
「えらい抽象的ね」
そう言いながらアリスはトウマから差し出されたタブレットを受け取り、自分が持っていた仕事用のタブレットを彼に返却した。
新しいタブレットには残る標的の情報が既に入っている。
標的の個人プロフィール、勤め先、行動範囲、日々の習慣等、そういった迅速かつ精密な殺しに必要な情報だ。
早速アリスがファイルを順に開いていくのに合わせて、トウマも自分のタブレットや手元の書類を確認しながら説明を始めた。
「まずは次の標的、ネット上の名義は『シバリエ』って名前らしい。こいつはほぼ確実に男」
「身元まで突き止められなかったの? あんたが?」
「こいつずる賢くってさー。海外から買ったアカウントで活動してる上に、回線も色んなとこ中継してて……この近辺にいるってとこで詰んだ」
姫崎が標的の二人目として挙げたのがこの「シバリエ」という人物。
彼女曰く「生きてられると困る人」とのことで、一人目の時とは違い確実な抹殺が要求されている。
「主な行動履歴は配信者『ノノ』の追っかけ」
「ただのあの子のファンってこと? 厄介ファンなら私たちが動くことはないでしょう、対象外じゃない」
「ファンってよりはグルーピーっぽいけどなー見た感じ。その『ノノ』だっけ? そいつと知り合いだとか、今度会いに行こうかなだとか、そういう“におわせ”をする奴を叩きのめして粛清してるのが派手な動きって感じ」
現役女子高生兼、人気配信者ノノ。
アイドル顔負けの可愛さと掴みどころのない性格が人気の要因で、
つまり最低でも百万人の人間が彼女のファンということだが、このシバリエという奴はその中でも随分と古参なファンらしい。
ノノが無名な頃から応援していたらしいが彼女が有名になるまでそう長くはかからなかったこともあり、彼のようなごく少数の古参を除けば他のファンたちの歴など大差ない。
それ故か、親衛隊気取りなのか、シバリエはノノ本人に接触しようと目論む
……というのがネットの掲示板や各所で書かれていた情報だった。
とはいえネット上に書き込まれることなど半分以上が根拠のない信用出来ない情報であることには変わりない。
なのでこういう場合は、現実世界で足を使ってしっかりと調べることが基本なのだが。
「まさか食い下がったファンの家まで凸って半殺しにまでしてるなんてな。最早過激信者だろこんなの」
「でもグルーピーってあんたが呼んだってことは、このシバリエ自身もノノと接点を持ちたい面倒なファンってことなんでしょう?」
「何ならストーカーまでしてるっぽいんだよな、タレコミだけど。でも姫崎乃々がストーカー被害を警察に訴えた履歴はない」
「つまりまだストーカーがバレてないか、あの子がわかっていて泳がせているかのどっちか……」
『誰が困るの?』
『ボクが困る』
最初に姫崎にこの二人目の話を聞いた時、彼女は即答していた。
あの様子からすると、気付いていないことはないだろう。
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