第29話 エルフの試練と闇の使徒の襲撃!
碧の聖域は、世界樹の北東に広がる「蒼霧の森」に隠されていた。森は深い青緑の霧に包まれ、湖と滝が無数に点在し、水のマナが空気を震わせる。木々は銀色の葉を持ち、根元には光る水晶の花が咲く。アクアの力が宿る聖域は、エルフ以外が入ることを許さない結界で守られている。ハヤテ、リリス、バルドは森の入り口で立ち止まり、ルミアの光の槍を掲げる。槍の金色が霧を切り、道を示す。バルドがハンマーを地面に突き立て、低く唸る。
「水の聖域か…ガルムの土とは相性が悪いな。だが、ルミアの光があれば道は開ける」
ハヤテが剣を構え、リリスに言う。
「リリス、エルフは人間を嫌うってバルドが言ってた。セレナを説得するのは、ルミアの光と俺たちの覚悟だ」
リリスが炎を小さく灯し、頷く。
「うん、ハヤテ。あなたとキスした後、私、なんか無敵な気がする。エルフだろうがゼティスだろうが、全部ぶち抜く!」
バルドが髭を撫でて笑う。
「炎の娘、ドワーフの酒より熱いな。行くぞ!」
三人は霧の道を進む。足元は水音が響き、木々の間からエルフの監視の視線を感じる。突然、霧が渦を巻き、水の矢が三人を襲う。ハヤテが風の結界を張り、矢を弾く。
「エルフの迎撃か!?」
リリスが炎で霧を焼き払い、叫ぶ。
「待って! 私たちは敵じゃない! セレナに会いに来た!」
霧の中から銀髪のエルフ戦士が現れ、弓を構える。
「人間とドワーフが聖域に? アクアの結界を破るとは…ルミアの光の槍? 族長セレナに確認するまで、ここで死ね!」
バルドがハンマーを振り、水の矢を砕く。
「エルフの小娘、ドワーフの土を舐めるな! ルミアを救うためだ!」
戦闘が始まる寸前、ルミアの槍が強く輝き、霧が晴れる。エルフ戦士が槍を見て驚き、弓を下げる。
「光の精霊使いの…ルミア? 族長が待っている。ついてこい」
碧の聖域:セレナとの対面エルフの集落は、巨大な世界樹の枝に築かれた空中都市だった。水の結界が光を屈折させ、虹が常に架かる。中央の神殿には、水の精霊アクアの力が宿る巨大な水晶柱がそびえる。族長セレナ—長い青銀の髪、金緑の瞳、アクアの鱗模様が刻まれたローブをまとう美しいエルフ—が三人を出迎える。セレナの声は水の流れのように澄んでいる。
「ルミアの光の槍…彼女の犠牲は聖域にも伝わった。だが、人間とドワーフを信じる理由はない。なぜ、私の力を求める?」
ハヤテが一歩踏み出し、言う。
「セレナ、俺はハヤテ、風の精霊使い。こっちはリリス、炎の精霊使い。バルドは地の精霊使いだ。ルミアの魂は光の源泉に閉じ込められ、ヴェルムドの封印と一つになってる。彼女を救うには、六つの精霊の力が揃わないとダメだ。お前の水の力を貸してほしい!」
リリスが槍を掲げ、続ける。
「ルミアは私たちの仲間よ。彼女の光は、ドワーフの土も動かした。エルフの水だって、ルミアなら信じてくれる!」
セレナが水晶柱に触れ、アクアの幻影が現れる。水の精霊アクアは人魚のような姿で、冷たく言う。
「ルミアの光は確かに純粋。だが、ヴェルムドの闇は水をも腐らせる。試練—『水の試練』—をクリアせよ。心と絆を、水が試す」
バルドがハンマーを握り、頷く。
「エルフの試練か。ガルムの土で受けてやる」
水の試練:心の鏡神殿が水に包まれ、四人は水の空間に転移。試練は三段階だ。
第一段階:水の迷宮
水の壁が動き、無数の分岐が現れる。ハヤテの風が道を探り、リリスの炎が水を蒸発させ、バルドの土が足場を作る。だが、水の幻影が三人それぞれの心の闇を映す。ハヤテにはルミアを救えなかった自分、リリスには村を焼き払った過去、バルドにはドワーフの孤立が現れる。
リリスが涙を流し、叫ぶ。
「ハヤテ…私、怖い…ルミアを失うのも、あなたを失うのも…!」
ハヤテが彼女を抱き寄せ、キスする。
「リリス、俺も怖い。でも、お前がいるから、ルミアを救える。愛してる」
バルドがハンマーで幻影を砕き、吼える。
「ドワーフの土は孤独を乗り越える! 人間、炎の娘、進むぞ!」
三人の絆が水の壁を砕き、第二段階へ。
第二段階:水の嵐
巨大な水の龍が現れ、滝のような攻撃を放つ。ハヤテの風が龍を切り、リリスの炎が蒸気で視界を奪い、バルドの土が水を堰き止める。セレナが試練を見守り、言う。
「水は心を映す。愛と信頼がなければ、龍は倒せぬ」
リリスが炎の槍を投げ、
「ハヤテ、バルド、私の全てを!」
ハヤテが風で槍を加速、バルドが土の柱で龍を固定。三人の合体技—水蒸気爆発—で龍を粉砕。
第三段階:アクアの心
水晶柱が輝き、アクアの本体が現れる。アクアが言う。
「ルミアの光は、水をも浄化する。だが、闇が迫る。試練の最後に、真の敵が来る」
聖域の危機試練クリアの瞬間、碧の聖域が揺れる。黒い霧が結界を破り、ゼティスとミリスが現れる。ゼティスが黒水晶を掲げ、影の糸で水晶柱を絡め取る。
「水の精霊使いセレナ、ルミアの魂は我がもの! アクアの力もヴェルムドに捧げる!」
ミリスが蛇の杖を振り、影の蛇がエルフ戦士たちを襲う。
「聖域を闇で満たすわ!」
セレナが水の結界を張るが、ゼティスの糸が結界を侵食。エルフ戦士たちが弓で応戦するが、影の蛇に次々と倒れる。ハヤテが剣を抜き、叫ぶ。
「セレナ、試練クリアした! 一緒に戦おう!」
バルドがハンマーを振り、
「エルフ、ドワーフ、人間、ルミアの光で団結だ!」
リリスが炎を全開、
「ゼティス、ミリス、ルミアに触れるな!」
戦闘が始まる。ゼティスの影の糸が水晶柱を穢し、アクアの力が弱まる。ミリスの蛇がセレナを狙い、水の結界を破る。セレナが水の槍で蛇を貫くが、糸に腕を絡められ、膝をつく。
「アクア…!」
ハヤテが風の渦で糸を切り、リリスが炎の奔流で蛇を焼き払う。バルドが土の壁でエルフを守り、吼える。
「人間、炎の娘、俺が道を作る! セレナを助けろ!」
ハヤテとリリスが連携し、風と炎の旋風でゼティスを押し返す。だが、ゼティスが黒水晶を輝かせ、巨大な影の魔獣—糸と蛇が融合した龍—を召喚。魔獣が聖域を破壊し、水晶柱に亀裂が入る。セレナが血を流しながら立ち上がり、
「アクア、私の全てを…!」
水の精霊アクアが実体化し、水の津波を放つ。だが、ゼティスの糸が津波を呑み込む。ミリスが笑う。
「水も闇に染まるわ!」
ルミアの光と愛の力魔獣が四人を包囲。ハヤテの風が弱まり、リリスの炎が消えかけ、バルドの土が崩れ、セレナの水が枯渇。ルミアの槍がかすかに輝き、幻影が現れる。
『ハヤテ、リリス、バルド、セレナ…私の光を…信じて…愛を…』
ハヤテがリリスを抱きしめ、叫ぶ。
「リリス、ルミアの声だ! 俺たちの愛を、ルミアに届けよう!」
リリスが涙を流し、キスを返す。
「ハヤテ、愛してる! ルミア、待ってて!」
二人のキスが神殿を金色に染め、ルミアの槍が爆発的な光を放つ。光が影の糸を焼き、蛇を蒸発させ、魔獣を貫く。バルドがハンマーを振り、土の柱で魔獣を固定。セレナが水の槍を投げ、アクアの力が復活。四人の力が共鳴—風、炎、地、水、光の五位一体。ハヤテの風が光を加速、リリスの炎が糸を焼き、バルドの土が魔獣を封じ、セレナの水が浄化。光の槍がゼティスの黒水晶を貫き、ミリスの杖を砕く。ゼティスが悲鳴を上げ、
「ヴェルムド様…!」
ミリスが霧に溶け、
「次は…雷の精霊使いを…!」
二人は聖域から逃走。魔獣が崩れ、水晶柱が輝きを取り戻す。新たな絆と手がかり聖域が静寂に包まれる。セレナが膝をつき、四人に言う。
「ルミアの光…あなたたちの愛が、アクアを救った。私は水の精霊使いとして、ルミアの魂を救う戦いに加わる」
バルドが笑う。
「エルフもドワーフも、人間も、ルミアの光で一つだ!」
ハヤテとリリスが抱き合い、涙を流す。
「ルミア…もうすぐだ!」
セレナが水晶柱に触れ、アクアの幻影が次の手がかりを示す。
「雷の精霊使いは、嵐の頂—『雷鳴の塔』にいる。雷の精霊ライオスを操る竜人族の戦士、カイザだ。だが、竜人族は戦いを好み、試練は命がけとなる」
ハヤテが槍を握り、リリスと手を繋ぐ。
「カイザか。どんな試練でも、ルミアを救うためなら受ける」
リリスが微笑み、
「ハヤテ、バルド、セレナ、一緒にルミアを迎えに行こう!」
セレナが水の結界を解き、
「碧の聖域は、あなたたちの帰る場所よ」
四人は雷鳴の塔を目指し、碧の聖域を後にする。ゼティスとミリスは傷つきながらも、雷の精霊使いを狙う。ルミアの光が輝き、五人の絆がヴェルムドの闇を切り開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます