第28話 人間とドワーフの絆!

地下神殿は、鉄岩の要塞の最深部に広がる巨大な洞窟だった。壁は黒い鉱石と金の結晶で輝き、地面にはガルムのマナが脈打つ土の紋様が刻まれている。中央には巨大な石の祭壇があり、その上にドワーフの鍛冶技術の極致ともいえるハンマーが置かれていた。空気は重く、土と鉄の匂いが混じる。ガルドがハンマーを掲げ、声を張り上げる。


「バルドよ! 地の精霊使いよ! 人間たちがルミアの光を携えてきた! 出てこい!」


祭壇が震え、土が盛り上がり、巨大な影が現れる。地の精霊使いバルド—ドワーフの長老であり、ガルムの加護を受けた戦士だ。白い髭が腰まで伸び、鉱石の鎧をまとい、両手に巨大なハンマーを持つ。彼の目は深い琥珀色で、ガルムの力が宿る。バルドが低く唸る。


「ガルド…人間を連れてきたか。ルミアの光、確かにガルムの土と共鳴する。だが、なぜわしに会いに来た?」


ハヤテがルミアの光の槍を掲げ、言う。


「バルドさん、俺はハヤテ、風の精霊使いだ。こっちはリリス、炎の精霊使い。ルミア—光の精霊使い—がヴェルムドを封じるために命を捧げた。彼女の魂を救うには、風、炎、光、地、水、雷の全種族の精霊使いの力が必要だ。お前の力を貸してほしい!」


リリスがフェニルの紋章を握り、続ける。


「ルミアは私たちの仲間よ。彼女の光を信じてる。ドワーフの誇りも、世界樹を守るためなら一緒だよね?」


バルドが槍を見つめ、静かに頷く。


「光の娘の犠牲…ガルムの土も感じる。だが、精霊使いの力は試練なしには渡せん。神殿の試練—『地の試練』—をクリアせよ。人間とドワーフ、共に戦う覚悟を見せろ」


ガルドがハンマーを構え、笑う。


「バルド、わしも試練に参加する! 人間たちの絆、ドワーフの誇りにかけて試してやる!」


シエルの声がハヤテに響く。


『ハヤテ、地の試練はガルムの力を引き出すものよ。バルドの心を動かせば、ルミア救出の鍵が得られる!』


フェニルの気配もリリスに囁く。


『炎の娘よ、土と炎は相反する。だが、絆でそれを繋げ。ルミアの光が導く』


地の試練:絆の証明祭壇が光り、洞窟が変形。地面が盛り上がり、巨大な岩の魔獣—ガルムの眷属—が現れる。魔獣は土と鉱石ででき、咆哮が神殿を震わせる。バルドがハンマーを振り、言う。


「この魔獣を倒し、ガルムの心臓—地の水晶—を守れ! 試練は三段階だ!」


魔獣が地面を叩き、岩の破片がハヤテ、リリス、ガルド、ドワーフ戦士たちに降り注ぐ。ハヤテが風の結界を張り、岩を弾く。


「リリス、ガルド、俺が防ぐ! 攻撃の隙を作れ!」


リリスが青赤の炎を放ち、岩を溶かす。


「ハヤテ、任せて! ガルド、ドワーフのハンマーで魔獣を叩いて!」


ガルドと戦士たちがハンマーで魔獣の脚を砕き、動きを止める。だが、魔獣が土の波を放ち、結界が揺らぐ。ハヤテの肩の傷が開き、血が滴る。


「くそ…まだいける!」


魔獣が消え、洞窟が迷宮に変わる。土の壁が動き、罠が仕掛けられる。ハヤテの風が道を探り、リリスの炎が罠を焼き払う。ガルドがハンマーで壁を砕き、進む。


「人間、ドワーフの土を知れ! ガルムのマナは裏切らん!」


リリスがハヤテの手を握り、言う。


「ハヤテ、ルミアの光が道を示してる! 信じて!」

二人の絆が迷宮を切り開き、地の水晶が現れる。だが、魔獣が再び現れ、水晶を狙う。


魔獣が水晶を守り、土の槍を放つ。ハヤテが風の刃で槍を切り、リリスが炎の奔流で魔獣を焼き、ガルドがハンマーで水晶を守る。バルドが試練を見守り、言う。


「人間、ドワーフ、絆を見せろ! ガルムの心は、信頼にのみ開く!」


ハヤテが叫ぶ。


「リリス、ガルド、俺たちの絆で水晶を守るぞ!」

リリスが炎を全開。


「ルミアの光、絶対守る!」


ガルドが吼える。


「ドワーフの誇り、ガルムに捧げる!」


三人の力が共鳴し、風と炎と土が一つに。ハヤテの風が魔獣を押し上げ、リリスの炎が焼き尽くし、ガルドのハンマーが水晶に触れる。魔獣が砕け、水晶が輝き、試練クリア。バルドが微笑む。


「見事だ。人間、ドワーフ、ルミアの光…ガルムの土が認めた」


ハヤテとリリスのロマンス深化試練の後、神殿は静寂に包まれる。ハヤテとリリスは水晶のそばで肩を並べ、傷を癒す。ガルドとドワーフ戦士たちはバルドと話すため離れ、二人に一刻の休息が与えられる。ルミアの光の槍が柔らかく輝き、神殿に温かな光を投げる。リリスがハヤテの肩に寄りかかり、囁く。


「ハヤテ…試練、ほんと怖かった。ゼティスとミリス、ルミアの魂を狙ってる…でも、あなたがいるから、頑張れた」


ハヤテが彼女の髪を撫で、緑の瞳を彼女に向ける。


「リリス、お前がいたからだ。ルミアを救うって約束、俺とお前で絶対守る。…お前、ほんと強いよ」


リリスが顔を上げ、彼の目を見つめる。彼女の赤い瞳に涙が光る。


「ハヤテ…私、ルミアを救いたいけど、それ以上に…あなたと一緒にいたい。戦いが終わったら、ルミアと三人で…笑ってたい」


ハヤテが微笑み、彼女の頬に手を当てる。


「ああ、約束だ。ルミアを救って、三人で焚き火囲んで、馬鹿みたいに笑うぜ」


二人の距離が縮まり、唇が触れ合う。神殿の光が二人を包み、ルミアの槍が一層強く輝く。キスは短いが、戦いの傷と疲労を癒すように温かく、互いの心を強く結ぶ。リリスが照れ笑い。


「ふん…相棒、こういうの、ルミアに見せたら嫉妬するかな?」


ハヤテが笑う。


「ルミアなら、笑ってくれるさ。『ハヤテとリリス、遅かった!』ってな」


シエルが囁く。


『ハヤテ、あなたたちの愛がマナを増幅してるわ。ルミアの光も、喜んでる』


フェニルが言う。


『炎の娘よ、愛は炎を強くする。ルミアを救う力となる』


水の精霊使いの手がかりバルドが戻り、ハヤテとリリスに言う。


「試練をクリアした。地の精霊使いとして、ルミアの魂を救う戦いに加わる。だが、全種族の精霊使いを集めるには、まだ道は長い」


ハヤテが槍を握り、聞く。


「バルド、水の精霊使いはどこにいる? ルミアを救うには、六つの力全部が必要だ」


バルドが水晶に触れ、ガルムのマナを呼び覚ます。水晶が光り、映像が浮かぶ—深い森と湖に囲まれた「碧の聖域」。そこには、エルフの集落と水の精霊アクアの力が宿る神殿がある。


「水の精霊使いは、碧の聖域のエルフの族長セレナだ。アクアの加護を受けし者、だが、エルフはドワーフ以上に人間を嫌う。説得は難しいぞ」


リリスが拳を握り、言う。


「エルフだろうが何だろうが、ルミアの光を見せればわかる! バルド、一緒に来てくれるよね?」


バルドがハンマーを担ぎ、頷く。


「ガルムの土は、ルミアの光を信じる。わしも行く。だが、碧の聖域は水と森の試練に満ちる。ゼティスとミリスも、必ず追ってくるだろう」


ガルドが言う。


「人間、ドワーフの誇りを背負って行け。鉄岩の要塞は、いつでもお前らの帰る場所だ」


ハヤテとリリスはバルドと共に神殿を後にし、碧の聖域へ向かう準備を始める。ルミアの光の槍を手に、二人は新たな決意を固める。ハヤテがリリスの手を握り、言う。


「リリス、碧の聖域でも、お前と一緒だ。ルミアを救うまで、絶対離れねえ」


リリスが微笑み、キスを返す。


「ふん、当然よ。ハヤテ、ルミアと三人で笑う日まで、ずっと一緒!」


碧の聖域への旅:新たな試練の予感鉄岩の要塞を後にし、三人は翠の広がりを抜け、碧の聖域を目指す。道中、ゼティスとミリスの気配が遠くで蠢く。バルドがハンマーを握り、言う。


「闇の使者は、精霊使いを集めるのを阻止する気だ。碧の聖域は水の試練が厳しい。エルフのセレナは、アクアの心を試す」


ハヤテが剣を構え、言う。


「試練なら受けてやる。ルミアの光があれば、どんな敵もぶち抜ける」


リリスが炎を灯し、笑う。


「エルフの水だろうが、私の炎で蒸発させてやるわ! ルミア、待ってて!」


旅の夜、焚き火を囲む三人。バルドがドワーフの酒を振る舞い、言う。


「人間、炎の娘、ルミアの光はドワーフの土にも希望を与えた。わしも、初めて人間を仲間と呼ぶ」


ハヤテとリリスが笑い、酒を交わす。リリスがハヤテの肩に寄りかかり、囁く。


「ハヤテ、バルドって、めっちゃいい奴だね。ルミア、喜ぶよ」


ハヤテが彼女を抱き寄せ、言う。


「ああ、ルミアの光が、みんなを繋げてる。次はセレナだ。絶対、ルミアを救う」


星空の下、ルミアの槍が輝き、三人の絆が新たな力を生む。碧の聖域での水の試練、ゼティスとミリスの追撃、エルフのセレナとの出会い—ルミアを救う旅は、さらなる冒険へと続く。

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