前兆

次の日、ルーノは電話の音で目が覚めた。まだ辺りが薄暗いのに、家に一つしかない電話が、リィリィと金切り声を上げて、人を呼んでいた。ルーノはベッドから転がり降りて、電話まで走った。

 ボーンボーンと、時計が朝を告げる。


「ティア! 星降りの日に向けて、お店は今日でお休みだって。」

「そう。なら、一緒にお買い物に行きましょう。」

「ねえ、本屋には行く?」

「まだ行かない。新しい本を買うお金がないもの。」


その日から段々、お昼が少なくなった。

外は真っ暗で、窓の外にあるはずの庭も見えない。


「今日だわ。星が降るの。」


ティアがいったので、夜ご飯を食べる間、ルーノはそわそわしていた。


「ねぇ、もう星は降ってるんじゃないかな。」


ルーノはティアに話しかけた。


「まだよ。星が来る前には、必ず前兆があるもの。」


ティアは食後のお茶をゆっくりとすすった。


「でも、前触れに気づかなかったかもしれないよ。」

「たとえ、寝てたって星が降り始めたら気づくわよ。そんなに気になるなら、自分の部屋で窓の外を覗いてたらどう? 前兆があったら、すぐにわかるから。」


ルーノは急いで食器を流し台に浸けて、階段を駆け上がった。


「持ち物確認もしておいてね。」


ティアの話す声が遠くから聞こえる。


「はーい。」


ルーノは大きな声で返事をした。


リュックサックの中身を確認していると、窓の外からパラパラと音がした。ルーノはすぐに窓にへばりついた。小さな何かが、空の上から大量に降り注いでいる。それは、雨どいを伝って、合流して下に流れ落ちて行っている。


「雨だ。」


星ではなかった。ルーノは、がっかりして、下の階にいるティアに向かって雨が降ったよと叫んだ。ティアが返事をした。どうやら、これが前兆らしい。突如、すさまじい音がして、ルーノは飛び上がった。


「音がしたよ。雷じゃないよ。」


ルーノは、さっきよりも大きな声で叫んだ。ティアはルーノに着替えるように言った。急いで着替えると、ルーノはリュックサックを掴んで階段を駆け下りた。ティアは玄関前で大きな荷物を背負って、ランタンを持っていた。


「これから、星の着陸場所まで歩くわよ。」


ドアノブに手をかけて、ティアが言った。ギシギシキイキイ音を立てて、扉は開いた。ティアの後ろにくっついて、外に出た。

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