第28話 同盟の名は
黄泉の断る発言で種族会議は大混乱。サンタナ、ラルド、マルタの3人は黄泉に
「話聞いてましたか!、ヨミさん!!」
「お前さん、空気を読めんのか!!!」
「我々はこんな男に負けたのか。こっちこい、もう一回勝負しようじゃないか!」
仲良くしなとふっかけておきながら、いざ先頭に立ってくれとお願いされると嫌がる黄泉。これには獣人も魔族も関係なく呆れ返ってしまったのだ。
しかし黄泉はサンタナの意見を無下にしたかった訳ではない。その事をしっかりと話すことにする。
「待って、待って、待って。話聞いてよ。俺はナックルベア、ナードベアどっちも仲良くなりたいと思ってるよ。俺が断るって言うのは俺の傘下に入るって話だけ」
「傘下に入るのがなぜダメなんだ?」
「俺は誰かの上に立つとかそんな器じゃないんだよ。協力はする、するする。でも俺がトップみたいなのはやめてくれよ。そんなことできないんだから〜」
「ですが同盟を組むということは新しい長を立てるのが道理。その長になるのはあなたが1番だと思って傘下に入りたいと言ったんですよ」
「んーーー、分かってるんだけどさ〜」
サンタナやマルタが俺に期待してくれてるのは十分分かっているんだ。でも俺はついさっきまで親のスネかじってダラダラ漫画読んでたぐーたら予備校生なんだよ?
自分で言うのも恥ずかしいけど、なんも取り柄ないよ、俺!。
人より誇れるのって漫画めちゃくちゃ読んだってことぐらいしかない。
体は鍛えてたけどそこそこだし。勉強だって出来ないって訳ではないけど、飛び抜けてる訳でもないから浪人してるんだし。
あーもー、何て説明したらいいんだよ〜。
黄泉は口には出さないが自分が先頭に立ったところでどうにもならない事を頭の中で叫んでいたのだった。
そしてついに頭がパンクしてしまった黄泉は、また自分でも訳の分からない事を言ってしまうのだった。
「俺は長じゃない、漫画士!」
「はい、漫画士というのは何度も聞いてます」
「だから長とか無理。俺職業漫画士!」
「漫画士が長になればいいじゃないか」
「嫌だ。俺は漫画士!、後ろでバックアップする担当!!。お前らが長やらないならミーナに長してもらうー!!!」
黄泉はバグったように駄々をこね始める。
自分でも何言ってるか分からないが、とりあえず長になるというのは嫌なのだ。
自分の将来も考えて来なかった奴に村の未来とか託してくんなよ!
俺主人公でも何でもないからさ〜。
ねぇ、頼むからそんな期待を俺に向けて来ないでくれよ〜。
戦場に立っていた勇ましい黄泉はどこへ行ったのやら。今サンタナ達の目の前に居たのはぐーたら漫画オタクの伊集院黄泉であったのだ。
ここまで嫌がる黄泉を見た3人は、仕方なく黄泉を長にする事を諦めてしまった。
「……わかりました。長は別の者がやるとして。協力はしてくれるのですかな?」
「え、長やらなくていいの?。うん、協力するする。みんなでミーナを幸せにするぞー。オー!」
「いや、村の幸せを考えて下さいよ」
長をやらなくて良くなった黄泉はテンションが上がる。それに対してサンタナは頭を抱えていたのだった。
「なぁヨミよ」
「なんだよ、マルタ?」
「同盟の名前はお前が考えないか?。長の話はいいとしても、この同盟はお前が居ないと成り立たなかったんだ。せめて同盟の名前だけでもお前が決めないか?」
「なるほど、名前決めね」
長をやりたくないと意見を押し通した俺は名前ぐらいなら決めてもいいかと思い、3人の意見も聞きながら同盟の名前を決めることにする。
「漫画士から取って『漫画村』というのはどうじゃ?」
ラルドごめん、それ漫画違法サイトの名前。
「漫画はコミックとも言うのだろ?。戦う漫画士、『コミックバスターズ』と言うのはどうだ!」
マルタ、それはネットカフェの名前なんだよ。
「ならいっそヨミの国という名前はどうですかな?」
自分の名前の国って憧れるけど、それもダメなんだサンタナ。黄泉の国は死後の世界。流石に縁起悪過ぎ。
意外と名前を決めるというのは難しい作業なのだな。でも本当に何がいいのか。
漫画……メンティス……コーラ。
思いつくのその辺しか無いな。
考えがまとまらない4人。そんな中に1人の少女が会話に割り込んでくる。
「みんなで仲良くなれる村にしよーよ!」
ひょっこり現れたのはケモ耳の可愛らしい少女ミーナだった。
そのミーナの一言は黄泉に名案を与えてくれることになる。
仲良く、種族……そうだ。
「フレトラ……うん、フレトラにしよう!」
仲良くという意味のフレンドリー、そして種族という意味のトライブ。
全部の種族が仲良くしてほしいという願いを込めて俺は同盟の名を『フレトラ』と名づけることとしたのだった。
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