第22話 戦場に立つ理由
黄泉はナードベア達に作戦を開始するよう指示する。魔法による攻撃をやめさせ、ナックルベアとの対話を始める。ナックルベアの頭上に立ち、名乗りを上げる。
「誰だ貴様。漫画士とはなんだ!」
ナックルベアの1人が俺を見て叫ぶ。俺はそれに答えたかったが、すぐには返答出来なかった。
なんだと言われても俺にも分からん。咄嗟に出たんだよ、漫画士って言葉。すまんが説明しろと言われても無理なんだ。
「なんだとはなんだ?」
俺は会話の繋ぎでナックルベアの質問に質問で返す。
「何者だ貴様は!?。その姿、ヒューマンだろ!我々の邪魔をするでないわ!!」
ナックルベアは何をするでも無く、ただただ黄泉を見つめて叫ぶだけだった。
武装もしていない。それどこか肌も半分露出した、戦場に出てくるとは思えない黄泉の異様な姿は、ナックルベア達にしてみれば不気味で仕方なかった。
これには何か理由があると勘違いしたナックルベア達は警戒を高めて黄泉と話をしてみるのだった。
「何者と言われても。通りすがりの漫画士だ」
「漫画士とはなんだ?」
「………漫画士は漫画士だ」
自分の立てた作戦を実行に移すためには少しだけ時間が必要だった。そのため黄泉は表に立ってナックルベアの進行を止め、裏でナードベア達に準備をしてもらうようにしたのだ。
咄嗟に出た漫画士と言う単語には恥ずかしさを覚えていたが、ナックルベアが警戒して足を止めてくれたのは助かった。
「答えになってないではないか!」
「何故貴様は戦場にいる?。ナードベアの仲間か?」
「貴様はヒューマンだからナードベアの肩を持つと言うのか!」
ナックルベア達は俺の
「……サンタナ、まだ〜?」
俺は後ろで準備を見守るサンタナに急ぐよう頼む。
ナードベア達も急がねばと思ってくれてるのだろうが、ペットボトルの蓋を開けるのも苦労しており、そして『あの』お菓子は端っこの開封口の銀紙が中々うまく開けれないらしく、かなりの苦戦をしていたのだった。
お菓子は綺麗に開けなくてもいいので側面から破いて中だけ出すように黄泉は再度指示し、あと少しだけ時間を稼ぐことにする。
黄泉はナックルベア達の方を向き、自分の意見を述べるのであった。
「確かにお前らが言うように俺はヒューマンだ。でもヒューマンだからナードベアに加担してるわけじゃない。お前らがミーナを拐おうとしたり、村を襲うというから俺はナードベアを守りたいだけだ」
ナックルベアが怒りの目を向けてくるのは多分俺がヒューマンだからだろう。魔族がヒューマンから敵対心を抱かれている話はミーナからも聞いている。だが俺は加護の無い魔族だから敵対してるんじゃない。
「ミーナみたいな可愛い子を泣かすんじゃねーよ、この馬鹿野郎共が!!」
黄泉は可愛い方に付くに決まってるだろーと心に秘めていたことまで言ってしまう。
泣いてるミーナが見たくなかっただけ、笑ってるミーナをもっと見たい。
今戦場に立っているのはナックルベアが良くないことをしてるとか、サンタナ達を助けたいとかよりも、早く戦闘を終わらせて、ただ可愛いミーナをもっとゆっくり見たいだけだと時間稼ぎのためとはいえ、
「………………」
黄泉の言葉で戦場は静まり返る。その静かな状況で最初に口を開いたのはサンタナであった。
「……へ?、そんな理由だったんですか?」
流石の戦士サンタナも黄泉の思いには驚いて気が抜けてしまっていた。
勘違いして欲しくないが、ナードベアを助けたいとは思っている。でもナックルベアを根絶やしにしたいほど恨んでる訳でも無いんだよ。だから俺は戦場に立ち、戦いを終結させる作戦を立てて、今ここにいるんだ!
黄泉の言葉は両陣営を混乱させる。可愛いもの見たさだけで戦地に立つなど聞いたことが無かったからだ。
「あのー、一応準備は整ったんですけど」
黄泉の宣言のせいで緊張感の無くなってしまったところで1人のナードベアが準備が終わったことを報告してくれる。
「わかった。こっちの準備は今整った!。今大人しく帰ってくれるなら俺は何もしない。だがまだ向かってくるようなら痛い目にあってもらうぞ!」
黄泉は最終勧告をナックルベア達に言い渡す。しかし緊張感を再び戻したナックルベア達の返答は
「断る。ヒューマンに尻尾を振るナードベアなど根絶やしにしなくては気が済まないのだ!」
なんとも物騒な言葉が返ってきた。
そこまで言うなら仕方が無い。ナックルベアの皆様には痛い目にあってもらいましょう。……言うの恥ずかしいな。
爪を構えて、再度村に突撃をかけてくるナックルベア。止める気がないのであればと黄泉は作戦を実行するため、大声で指示を出す。
「メンティス!!!」
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