第21話 ヨミ、戦場に立つ

 お菓子と漫画を抱えて黄泉は洞窟を抜ける。外に出て目に映ったのは火の手が上がるベアルピス村であった。


 所々で火が上がっている。多分村の中にナックルベアが入り込んだんだ。爆発音がしているのはナードベアの魔法によるものだろう。火の上がり具合や音の大きさは村の入り口が1番大きい。


 村と村入り口の騒ぎを比較し、侵入してきたナックルベアは少数で、まだ入り口付近でナックルベアの進行を食い止めているのだと思い、黄泉は急いで村の入り口まで向かうのだった。


 洞窟から村の入り口まで真っ直ぐに向かう。

 しかし周りを気にせず真っ直ぐに走っていた黄泉は背後から襲い掛かるナックルベアに気づいていなかった。


「ヒューマンが何してるー!」


「しまっ」


 俺は背後からの声を聞き、振り向くと腕を振り上げたナックルベアがそこにはいた。

 俺の話など聞く気も無く、ナックルベアは腕を振り下ろす。しまった、やられると思ったその時、俺は1人のナードベアに救われたのだった。


「何故戻ってきたんですか?」


「サンタナさん!」


 俺とナックルベアの間に入り、守ってくれたのはサンタナであった。

 サンタナは黄泉と同じぐらい大きな大剣の側面でナックルベアの爪を防いでくれたのだ。

 戦場を始めて体験する黄泉は、怖さで腰を抜かしてしまう。それを見たサンタナはナックルベアの攻撃を弾き返し、黄泉を抱えてその場を離れる。


 サンタナを追いかけようとしてくるナックルベアだったが、他のナードベアが介入してくれたおかげで、黄泉とサンタナは逃走に成功する。


 ナックルベアから遠く離れた場所に連れてこられた黄泉はサンタナからもう一度戻ってきた理由を聞かれ、その理由を話す。


「……何か対策ができたのですか?」


「はい!これを使います」


 俺は手に持ったお菓子をサンタナに見せつける。サンタナはこれで何をするのかと聞いて来るが、短時間での説明が難しいため、今は自分を信じて欲しいとだけ言い、俺はサンタナに担がれて村の入り口へ向かった。




「サンタナ!村の中は?」


 村の入り口を防衛していたナードベアの1人はサンタナに村の中の状況を聞く。

 今村の中に入り込んでるナックルベアはさっき会った奴が1体だけで、他に入り込んで来たナックルベアはもう倒し終わっていていると言う。その残る一体も今は他の者が対処しているとサンタナは伝える。


 俺はサンタナに担がれ、高台に登る。爆音の激しい戦火の中、耳を塞いで状況を確認する。


 村の外にはナックルベアが約40体ほど。50体来ていたと言う話だったから他の10体は片付けてしまったのだろう。数で不利なナードベア達はよく奮闘してくれている。


 村の外にいるナックルベア達はファイヤーボールを防ぐのが精一杯のようで、村に近づけず、その場に釘付けになってる状態だった。


「この状態なら多分行ける、よし!」


 俺は急いでコーラを出す魔法を連呼。目の前に出てくるペットボトルの山にサンタナや他のナードベア達はかなり驚いていた。


「これは……魔法ですか?」


「まぁ、魔法みたいなものです」


「それはどのように使うのですか?」


「今から話します。皆さんの協力してもらいたいことがあるんです」


 黄泉はサンタナと周りのナードベア達に今からこの拮抗状態を打破すると伝え、作戦を話終え次第、ナックルベア達に向けて宣言するのであった。




「俺の名はヨミ!。漫画士のヨミだ!!」






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