第15話 え、早くね?
村長の家でサンタナとラルゴに助けを求められた俺は、村の中央の高台でナードベア総勢20名の前に立たされていた。
「ヨミさん、戦える奴らを集めてきました」
「そ、そうですか……えーと、どうしたら?」
「ナックルベアがいつ来ても戦えるようにヨミさんの知恵で村の守りを考えて頂きたいのです」
「んー、そうですね……じゃあまず皆さんがどれくらい戦えるのかを教えてくれませんかね?」
俺はサンタナの言う通り、村の守りを強化するため戦える者たちの武器や装備、そして使える魔法などについて教えてもらうことにした。
「……剣を使えるのが5人、魔法を使えるのが15人ですか」
困ったことに前線で戦える人数が圧倒的に少ない。聞くところによると、ナックルベアは爪を武器として戦う種族。そして戦える数は約50人。
防壁の上から遠距離で戦える魔法使いがこっちに居てくれるのは助かるが、数で攻め込まれたら歯が立たない。前線を抑える兵士が5人しか居ないというのはかなり問題だ。
「どうでしょうヨミさん。村を守るにはどうすれば良いでしょうか?」
ラルゴは心配そうに俺を見てくる。
心配なのは俺もだが、こうなったらなんとかするしかないだろう。
「………」
「ヨミさん?」
「……………」
「ヨミさんは何をされているのですか?」
ラルゴは黄泉に声をかけ続けるがその声は全く届いていない。
黄泉は仁王立ちで集中していた。
「もしかしてそれが!」
ラルゴは黄泉の行動が何かを察知する。
黄泉が集中すること、それは
パラパラパラパラパラパラパラパラ
ひたすら漫画を読むことだった!
「今ヨミさんは漫画を使って作戦を練っておられるのか!」
黄泉の異様な行動に驚きおののくラルゴ。
そんなことも気にせずただただ黄泉は漫画に目を通す作業を村人の前で行っていた。
「………よし、これで行こう!」
数分の間漫画に目を通していた黄泉は本を閉じ、村人に作戦を伝える。
「剣が使える者は門の前を固める。魔法使いを三部隊に分け、二部隊は壁の高台で向かってくるナックルベアを迎撃する準備をしてくれ。正面の入口を挟む形で一部隊ずつ配置。残る一部隊は俺についてきてくれ」
俺は週間少年サタデーで連載の『天草くんが天下一』を参考にナードベアたちを部隊編成する。そして大まかな作戦を伝える。
村に向かってくるナックルベアを剣部隊が足止め、入口をただ塞ぐだけでいい。
魔法部隊は壁の高台から魔法で攻撃。ただ高い壁に囲まれているとはいえ登って来ないとは限らないので側面の警備もすること。
そして1番重要なのが
「罠の製作と背後からの襲撃ですか」
作戦を聞いたサンタナはびっくりして俺の言葉を復唱する。
俺が率いる部隊はいわば工作部隊。
罠を張って敵の数を減らし、村についたところを背後から狙い打つ。
俺の勝手な想像だがナックルベアは多分力押しで来るタイプだと思う。
部隊を分けてくるのではなく、ベアルピス村の入り口の正面に続くしっかりとした道を使って固まってくるであろう。
だからそこに罠を張り……
「ナックルベアの奴らこっちに向かってきてるぞ!20…30……いや、50!戦えるやつ全員で来てやがるぞー!!」
作戦を説明してる中、壁の上から1人の男が大声で叫ぶ。俺はナックルベアを引き連れて入口に向かい、壁の高台に登る。
「嘘だろ……来るの早いって」
村の外を見ると、ナックルベアの大群が正面切って押し寄せて来くるのであった。
「作戦〜変更!罠とか無しで!。みんなやるぞー!!!」
「「「えーーーーーーー!?」」」
黄泉は考えた作戦を速攻で破棄。向こうがやる気なら徹底的に高台から迎撃する方向に切り替えるのであった。
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