第14話 咄嗟の嘘は身を滅ぼす

 俺はベットで横になり、これからのことについて考えてみる。


 多分だが俺はナードベアとナックルベアの小競り合いに巻き込まれることになるだろう。


 だが今の自分に出来ることは何だろうか?


 今まで漫画しか読んでこなかった俺。運動能力も主人公のように無双できる強さじゃない。ヴァルドランからもらった能力もわから…


「……あれ?そういえば能力はこっちに来たら分かるようにしておくって言ってなかったか?」


 ヴァルドランはドランアースに着いたら能力が分るようにしておくと言っていたのを思い出した。


 でも現状何もわかっておりません。どうやったら分かるのかは教えてもらって無いからです。


「んんー、家の中かな〜?」


 転生して真っ先に目にするものは自分の部屋の中。そう考えると能力がわかる何かを家に置いてくれてるかもと思う。

 しかし家は真っ暗で何も見えない。さて、どうしたものか。


 能力がわかれば少しは役に立つかもと思っていると家の外からコンコンとノック音がする。


「ヨミさん、お休みのところすいません。村長があなたと話をしたいと。少し時間をもらえませんか?」


「わかりました、今出ます」


 外からノックするサンタナの声を聞き、俺は急いで準備をして部屋を出るのであった。






 俺は村長の家に案内される。村長は顔を合わせるや


「ほほう、旅の方よ。随分と珍しい格好をされておるのだな。いや失敬、ようこそ来てくださいました。私はこの村の村長をしております、ラルドと申します」


 と俺の姿に驚きながらも挨拶をしてくる。


 無理もない。

 俺はTシャツに短パンで表紙がカラフルな本を持った、旅人などとは程遠い格好をしているからだ。


 服装はしょうがないにしても、クセで漫画まで持って来たのはおかしかったか。

 でもしょうがないじゃないか!俺は普段どこ行くにしても歩き読みスタイルなんだから!!


「ご丁寧にどうも。俺はヨミと言います。この格好を見て驚かれるのは無理ないかもしれませんが俺の国ではこのような格好が当たり前なのです」


「ははぁ、そうですかそうですか。ヨミさんはどこの国の人なのですか?」


「……フクオカ」


「すいません、今何と?」


「フ、フクオカ国のハカタから来た!」


「フクオカ国とな。聞いたことない国ですな」


 そりゃ、聞いたことないはずです。俺も聞いたこと無い単語を口にしているからです。


 フクオカ国って何?ダサ!


 黄泉は自分が咄嗟とっさについた嘘に恥ずかしさを覚えていた。


「その魔導書も変わった色をしておりますな?それに絵もぎっしりと書かれておるみたいですが」


 ラルドは俺の持ってる漫画に興味津々。

 漫画をじーっと見ながら説明を求めてくる。


「これは魔導書ではなく漫画というものです。簡単に言うと戦術書と言えばいいのでましょうか。先人たちの戦いが書きしるされているもので、俺はこれを使ってナックルベアとの戦闘を行ったのです」


「なんと!そのような物をお持ちなのですか!!」


 ……すいません、嘘なんです。

 漫画を戦術書とか言ってるの多分俺ぐらいです。

 元の世界でこんなこと言ったら「うわ、キモ」って反応するのが普通です。

 漫画のキャラを先人ってカッコつけて言ったけど、これも頭の中でできた人たちなんで真似するとか無理なんです。

 すいません、嘘ついて、本当すいません。


 黄泉は自分のついた嘘が恥ずかしくなりラルドに心の中で永遠謝罪することとなった。


 そしてこの咄嗟についた嘘が伊集院黄泉を『戦略級漫画士、立ち読みのヨミ』へと導くことになるのは、まだ黄泉は知らない。

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